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【特集】2人の若者がつなぐ浜田の海と地域の未来 廃業危機の民宿再生と食の力で生まれる新しい暮らし 島根県

2025年5月24日 7:12
【特集】2人の若者がつなぐ浜田の海と地域の未来 廃業危機の民宿再生と食の力で生まれる新しい暮らし 島根県

海水浴客に人気の海の町、島根県浜田市。高齢化により民宿が少なくなる中、海を愛する2人の男性が立ち上がりました。

島根県浜田市国府町。日本海の青が広がり、海水浴シーズンになると、他県から多くの観光客が訪れる海の町です。

一日の終わりには、日本海に沈む真っ赤な夕日が幻想的な風景を見せます。その浜田市で今、ひとつの民宿が新しい形で生まれ変わりました。国の天然記念物・石見畳ケ浦近くに位置する民宿「しまや」。地元で長年愛されてきたこの民宿を継いだのは、年齢も出身地も異なるふたりの若者です。

浜田市出身の漁師・田畑さんと、長野県出身で学生時代を過ごした浜田市にIターンをしてきた由井さん。

由井さん
「5年ほど東京に出たんですけど、やっぱりこの浜田の土地と浜田の人々が忘れられなくてこっちに移住してきました」

浜田の海の美しさと、地域の人の温かさに触れた由井さんは2年前に浜田市に移住。一方、田畑さんは生まれも育ちも浜田市。漁師と民宿業を両立しながら3人子供を持つお父さんでもあります。

田畑さん
「地元でもないここに、永住・移住しようって思ってくれる子、こんな田舎に来てくれる子ってなかなかいないと思うのですごく心強いですね」

海での事故を事前に防ぐ活動を行う『ライフセービングクラブ』を通し十年来の交流があった二人。

前オーナーが高齢で、民宿が閉業危機にあると聞き、引き継ぐことを決めました。築50年以上の民宿を改装し、大きく開けた窓から海が一望できる共有ラウンジを作りました。更に昼間はカフェ営業も開始。観光客と地元の人、両方の憩いの場に。

前オーナーの稲元さんも、ふたりの挑戦を温かく見守っています。

稲元さん
「私ももう年も年になってきたし、誰もいなかったらつぶして駐車場にでもするかなという考えもあったんですが。そんな中でやる気がある人が現れてくれて私もうれしいし、お客さんもやっぱりうれしいし」

今年3月にリニューアルオープンしてから初めて迎えたゴールデンウィーク。観光目的の客が、県内外から16組訪れました。

宿泊したお客さん
「ロケーションが最高で。今日はすごくベタ波で最高のロケーションで。気候的にも一番いい時期に来た。すごく良かったです」

宿泊客をもてなすのは、景色だけではありません。民宿で提供される食事は、地元の鮮魚店から届く新鮮な刺身を中心に、浜田の海の幸がふんだんに使われます。

中でも、漁師である田畑さんが採ってくる海藻「かじめ」を使った味噌汁は、ここでしか味わえない地元の味。

連泊したお客さん
「このお宿に来てから初めて食べた。すごく美味しいお味噌汁だと思います」

「美味しいです。なかなか独特な赤味噌でコクがあって、とろみのあるような海藻がすごく美味しいですね」

実は、この味噌汁に使われる味噌を仕込んでいるのは由井さん。現在、地域おこし協力隊でもある由井さんは浜田の老舗味噌店の引継ぎ候補として修行中の身。後継者がいない事業者と、地域おこし協力隊をつなぐ「後継者マッチング支援事業」の一環です。

由井さん
「一つ一つ手作りっていうところがここの店の良さだと思っています」

味噌屋・水津さん
「やっぱり日本の文化ですから大切に彼がつないでいってくれるのを期待しております」

後継者不足が深刻化している浜田市。市の2017年の調査では、市内事業者の約4割が「自分の代で廃業予定」と回答。主な理由は「後継者が決まっていない」ことでした。

そんな浜田市で、二人が描く未来とは・・・。

由井さん
「若者が挑戦しやすい街にしたいっていう風に自分の中で思っていて、率先してチャレンジしてその姿を見て若者たちが同じようにチャレンジできる街にしていきたいなと思っています」

田畑さん
「自分がこの浜田で生き生きと暮らしているところが伝われば、おのずと由井みたいな存在の人たちも集まってくるかなと思っていますので、自分自身が楽しく生きて行けるようにこれからもやっていきたい」

浜田の海と、人々のぬくもりに支えられたふたりの挑戦が、これから小さな町に新たな風を呼び込むかもしれません。

最終更新日:2025年5月24日 7:12