×

【特集】通過点から目的地へ 国道9号の道の駅の魅力に迫る 周辺地域にさらなるにぎわいを呼び込む道の駅の取り組みに注目 鳥取県・島根県

2025年5月29日 6:12
【特集】通過点から目的地へ 国道9号の道の駅の魅力に迫る 周辺地域にさらなるにぎわいを呼び込む道の駅の取り組みに注目 鳥取県・島根県

年々、山陰道の整備が進む中、並行して走る国道9号では、交通量の減少と共に衰退が懸念されていました。こうした中、通過点から目的地へ進化する道の駅の魅力に迫ります。

整備が進む山陰自動車道。去年3月には島根県大田市の大田中央・三瓶~仁摩・石見銀山IC間が、今年3月には出雲市の出雲~多伎IC間が開通し、島根県内では84%、鳥取県内では84.7%の区間が完成しました。

移動時間の短縮による観光や経済への波及効果が期待される一方、並行して走る国道などいわゆる“下道”の沿線では、交通量の減少と共ににぎわいも失われてしまうことが懸念されています。

現状はどうなのか。各地の「道の駅」を訪ねました。

まずは大田市。去年3月に大田中央・三瓶~仁摩・石見銀山ICの12.9キロが開通しました。この区間にあるのが道の駅「ごいせ仁摩」です。聞こえてくるのは、和楽器の軽快なリズム。実は石見神楽の公演が行われていたのです。雨の中、150席が満席状態で、山陰道開通の影響を感じさせないほど多くの観光客が詰めかけていました。

この区間について開通から3か月後の調査では、全体の交通量の3割~6割が山陰道を利用していたにもかかわらず、昨年度の売り上げはその前年度より7パーセントほどアップしました。

道の駅ごいせ仁摩 足立一彦 駅長
「当初は山陰道が開通することによって素通りされる懸念があったんですよ。色々なところからお客さんに来ていただいているなと感じています」

大盛況の裏には、関係者らが仕掛けた様々な取り組みがありました。

その一つが石見神楽です。公演数を増やすため、契約する神楽団を市内4団体から県内10団体に広げ以前は月2回だった公演を現在では、ほぼ毎週行っています。

和歌山からの客
「たまたまここを通ったら神楽のお知らせを見たので。珍しいですね。劇場でやってると思ったらまさか道の駅でやってくれるとは思わなかった」

地元客
「何回来たかな。結構いっぱい、かなり来ています。神楽を観に来ることが多いですね」

また、山陰道の開通に伴い、利便性が格段に向上したことで新鮮な魚介類などの販売を強化。駅長自ら魚の解体ショーも行い、リピーターの獲得も狙っています。今後は世界遺産・石見銀山と連携した取り組みも仕掛けていくということです。

道の駅ごいせ仁摩 足立一彦 駅長
「あれだけの景観はないと思うんですよ。古い昔ながらの景色など、僕たちの道の駅で展開する商品のなかで何かお手伝いができるものはないか、どんどん商品化でコラボレーションしていきたい」

続いて今年3月に開通したばかりの出雲~多伎IC間にある道の駅が、国道9号沿いにある「キララ多伎」です。開通から2か月。店内は県外からやってきた多くの客でにぎわっていました。

京都からの客
「毎年来てるんですよ。フルーツはおいしいですよね」

地元客「しょっちゅう来てます、一番の我が家の観光地です」

この区間でも、開通直後の調査では全体の交通量の4割が山陰道へシフト。開通後の4月から5月は、土産物を中心に売り上げが前の年の同じ時期より5パーセント減少しました。そこで行ったのがー。

道の駅キララ多伎 柳楽順也 駅長
「今までは“通過点”だったものを“目的地”化することをテーマに掲げて取り組んでまいりました」

「通過点から目的地へ」新たなテーマを掲げ、様々な取り組みをスタートさせたのです。

土産物のポップなどに花を添えるこちらのキャラクター。開通にあわせて誕生した公式キャラクター「トントゥ」です。関連グッズも続々と登場。「トントゥ」とはフィンランドの妖精のことで、旧多伎町が姉妹都市提携を結んでいることにちなんで開発しました。


「かわいい。目がちっちゃい」

「かわいいですね。お客さんの目にとまるとおもいます」

トントゥがデザインされた、オリジナル駅弁の販売も開始しました。特産のいちじくを隠し味に使ったから揚げなど、12種類のメニューを味わえます。

さらにキララ多伎の代名詞ともいえるのが、日本海を一望できるキララビーチ。その高台に新たに設置されたのがこのイルカのモニュメントです。

道の駅キララ多伎 柳楽順也 駅長
「春から秋にかけてイルカの群れが通っていきます。観光の目玉として皆さんに知っていただくためにモニュメントを作成させていただきました」

日本の夕陽百選にも選ばれた絶景が見られるよう日没時間も表示。海辺の駅としての魅力を再認識してもらう狙いです。

中国地方の「道の駅」連絡会によりますと、近年は単なる休憩所ではなく、キララ多伎のように目的地や地域のにぎわい拠点を目指す道の駅が増えているといいます。

こうした中、今後山陰道の開通を控える石見福光~浅利IC間でも、新たな動きが。

区間に並行する国道9号にある道の駅「サンピコごうつ」の隣に3月にオープンした「なぎの木テラス」です。「神楽の里 舞乃市」をリニューアルしました。

こちらの道の駅の一押しは、江津市特産の「まる姫ポーク」を使った様々なグルメ。約200グラムの肉厚なとんかつ定食などが楽しめるレストランは休日、1日平均300人が訪れる人気ぶりです。そして道の駅のカフェでも、食べ応え抜群のまる姫ポークのカツサンドや、特産の桑茶を使った風味豊かなロールケーキなどが楽しめます。さらにカフェのなかには親子で過ごせるキッズスペースも併設されています。

広島からの客
「ちっちゃい子がいるんで、キッズスペースがあるので楽しめるかなと思って良いなと思います。また来たい」

今後は他のエリアにある国道沿いの道の駅との相乗効果で、地域全体の活気を維持していきたいとしています。

なぎの木テラス事業責任者 佐々木 真也 さん
「一つの道の駅だけで頑張っても知れていますので、東が私たちで西がほかの施設だったり連携しながらですね、点と点を線にしてさらに面にして、全体で発信していけば良いかなという風に思っています」

完成が近づく島根・鳥取の山陰道。周辺地域にさらなるにぎわいを呼び込むために、道の駅の新たな取り組みに注目です。

最終更新日:2025年5月29日 6:12