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【南海トラフ地震に備える】新たな被害想定 専門家はどう見るのか【高知】

2025年4月2日 18:50
【南海トラフ地震に備える】新たな被害想定 専門家はどう見るのか【高知】
特集は「南海トラフ地震に備える」です。

3月31日、国が公表した新たな被害想定について専門家はどう見ているのか、話を聞きました。

●名古屋大学 福和伸夫名誉教授
「自らの命は自ら守るという意識のもと、国民の皆様方には住宅の耐震化や家庭での備蓄、迅速な避難行動に可能な限り取り組んでもらうこと。さらには企業の皆様には実効性のあるBCPの作成ならびに実践・訓練に取り組むことを期待している」

31日、国の中央防災会議はこれまでの防災対策や地形データの更新などを反映し南海トラフ地震の新たな被害想定を公表しました。
最悪の場合、全国の死者は約29万8000人。県内は4万6000人と、2012年の前回から3000人ほどしか減りませんでした。

今回の被害想定を専門家はどう見ているのか。高知大学防災推進センターの岡村眞客員教授に話を聞きました。

●高知大学防災推進センター岡村眞客員教授
「いろんな防災対策がされていて、あきらかに津波から逃げるという避難施設とか避難ルートが全国トップクラスで高知は進んできた。その点に関してはあまり評価がきちんと出ていないという思いはある」

今回はじめて盛り込まれたのが災害関連死の想定です。南海トラフ地震では過去の震災をもとに全国で2万6000人から5万2000人にのぼるとしています。

「今回はじめて想定されたのが災害関連死の死者数だがこの死者数についてはどう思う?」
●高知大学防災推進センター岡村眞客員教授
「最近大きな地震で経験したことは、例えば熊本地震。揺れの本体による死者よりもはるかにそのあとの地震をきっかけにした死者のほうが増えてきた。まさにこれは高知県にもそのまま当てはまる。むしろ熊本・能登よりももっと顕著にあらわれてくる。危険な状況ではないかと思う。それはやっぱり高齢化ということ。例えばきょうあすの夜に地震があったと。そして(避難場所に)逃げた。でもそこは冷たい床で体育館の床であったり野外であったり、もうそこで避難した先でお年寄りが命を落としていくということは十分に考えられる とりあえず地震から津波からも逃げられたのにそのあと様々な理由によって命をなくしていくということは非常に最近の日本の高齢化社会のなかでは増えてきている。それをはじめて内閣府が認めて考えようとしたというのはひとつ評価できる」

高齢化の進む県内では特に危険性が高いという災害関連死。これを防ぐためには地域での共助と行政による公助が鍵になるといいます。

「災害関連死を防ぐためにはどんな備えが必要か」
●岡村眞客員教授
「ひとつは避難先がきちんと冷房とか暖房とか少なくとも体温維持ができるような避難所にしていく必要がある」


「災害関連死を防ぐためには自助というよりも共助・公助の部分が大切?」
●岡村眞客員教授
「自助は自分の判断で強く長く揺れたら逃げる。高いところへ逃げるというのは自助。ここは自分で判断しないといけない。そのあとは共助と公助 サポートを受ける。それは突然できるわけではなくて、準備しておかなければいけないということが大切。まだ生命の維持という部分が高知県内ではほとんどできていないということが言える」

また今回の国の被害想定を受けて県内でも津波避難タワーの整備計画などに影響がでてくる可能性がありますが、岡村教授は避難タワーを活用するための空き家対策も重要だと話します。

●岡村眞客員教授
「大事なことはどんなにハードの避難タワー(の整備)をやっても能登で経験したが、道路が倒壊家屋で塞がれてしまっている。本当に愕然とした。どんなに避難タワーを作っても道路が倒壊家屋で通れない。それは日頃から倒壊するような空き家を減らしておく。避難ルートを確保するために倒壊するであろう建物を整備していくということをやっていないとハードがうまく使えない。避難タワーが使えないということはもうあきらか。特に高知市内は家が建て込んでいるわけで家が何軒か道路に倒壊する電柱も倒れている。そういうところでは2・3ブロック向こうの1丁目向こうの避難ビルにさえいけない。道路にどれほど避難する機能をもたせられるかという視点でもう一度チェックしなおすことが必要」

そして注目されやすい津波対策の一方で強い揺れから命を守る対策をおろそかにしてはいけないと警鐘を鳴らします。

●岡村眞客員教授
「あんまり津波といってしまうとおろそかになるのは古い住宅の耐震補強。とにかく地震で家が壊れれば逃げられないということがわかっている、熊本でも能登でも。だから(耐震化率を)いかに100%にしていくかが直近の地震対策では重要になる」

高知県内の住宅の耐震化は最新のデータで91%と全国平均より少し上ではあるが、ここ近年は伸び悩んでいるそう住宅耐震化を相談したい場合はお住まいの市町村へ問い合わせを。

また災害関連死を防ぐためには冷暖房の完備はもちろんですが避難所に段ボールベッドや温かい食事を提供できる用意も有効だということ。共助・公助で命をつなぐ備えも一度見直してほしいと感じます。
最終更新日:2025年4月2日 18:50