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『シリーズ人口減少』⑯ 若者の県外流出を防ぐ学生が発案した新しい試み【高知】

2025年4月24日 18:54
『シリーズ人口減少』⑯ 若者の県外流出を防ぐ学生が発案した新しい試み【高知】
人が減りゆく社会の中で高知の未来のあり方を考える人口減少シリーズです。今年度の初回は若者の県外流出を防ぐ学生が発案した新しい試みを特集します。

4月、高知市にConexture(コネクチャー)という名前の一般社団法人が誕生しました。この団体は県内の学生たちが学生と企業を新しいかたちでつなげようと作ったもので、代表理事は高知市の企業・アッシェの社長で高知大大学院の修士2年・須江勇介さんが務めています。
団体が発足した背景には学生と企業、双方の課題がありました。

運営代表を務める高知大・大学院修士2年の柳原伊吹さん。高知県香美市出身で地域協働専攻の柳原さんは就職活動となると、学生が高知を選ばない現状を目の当たりにしてきました。

■柳原さん
「高知の自然だったり食だったりとかって、東京、特に関東に住んでいる人からするとすごく魅力的だったりするが就職の話になると、とたんに『論外高知』ってなる」

高知労働局が公表している就職内定状況では就職が内定している県内の大学生1303人のうち、就職先が県内は353人、県外は950人。高知高専では内定者96人中、就職先県外が80人でした。県の推計値でも転出が転入を上回る「社会減」は4月1日時点で2594人と2013年度以降で最も多くなっています。

人口減少につながる若者の流出。県内の学生たちはなぜ就職先として高知を論外とするのか。柳原さんはその理由に着目しました。

■柳原さん
「特に若いうちは挑戦してとかスキル・キャリア積まないとみたいな話ってやっぱり出てくるんですけど、それって事実でもありながら本当にそうなのかという所も考えてほしい。そもそも、どういう働き口があるかそのものが大学生と社会人が接点ないので全く見えないのがリアルだ」

そこで、学生と企業の接点を作るという新しい取り組みを始めるためConextureを設立したのです。
4月17日、柳原さんはほかの運営メンバーとオンラインで打ち合わせをしていました。運営メンバーは高知大と高知工科大の学生6人が務めています。
Conextureでは4月、初の交流イベントを企画。一般的な就職説明会とは異なり、県内企業8社と学生が自然な形で出会うものです。

このイベントに参加を決めた企業の一つが旭食品です。高知県南国市に本社を置き、全国5つの支社、12の支店を持ちグループ全体で2942人が働いています。

今年度は大卒者など36人を採用しましたが、人材確保の面では課題もあるようです。人口が減少し、若者が激減する中、どの企業にとっても人材の確保は大きな課題です。

4月18日。高知市でConextureによる初の交流会が開かれました。
県内の大学生など33人と県内企業などから13人が参加し、クイズや自己紹介を通して学生と企業が楽しく交流しました。参加した企業は社名や肩書ではなく、個人として学生一人一人と会話を楽しんでいました。

会場には高知大学の石塚悟史副学長もConexture理事の立場で参加していました。

■石塚副学長
「今回の特徴というのは、やはり学生が主体で県外流出をどう止めていくかっていうのをチャレンジしているところが素晴らしい」

Conextureを運営する学生は交流会の中でこれから始めるプロジェクトについてプレゼンをしました。それは県内の企業で学生が有償の長期インターンをして企業の課題解決を図るというものです。柳原さんたちはこの新しい試みを通して学生たちに『論外高知』の視点を変えてもらおうとしています。

学生の発案で始まったプロジェクトの第1弾となる長期インターンは県内2社を舞台に5月から始まります。

高知放送では、就職活動について県民の皆さんに4月16日から4月20日の期間アンケートを実施し、522人から回答をいただきました。
自分自身や、子ども、孫に高知で就職させたいかという問いには64%が「はい」と答えました。一方、いいえと答えた人に理由を選んでもらった所、最も多かったのが給与が低い、次いで、就職先が少ない、高知の将来性、の順に多くなりました。

また、どうすれば若者が高知で就職を考えるか、自由に意見を述べてもらったところ「働きやすい職場づくり」や「正社員の雇用を増やす」、「入社後の研修の充実」や「企業を誘致して働く場を増やす」などの意見が寄せられました。アンケートにご協力いただきありがとうございました。

これらの声が企業の努力や国の施策につながるよう今後も番組では取材を続けていきます。
最終更新日:2025年4月24日 18:54