全国で随意契約「備蓄米」流通進む中で追加「備蓄米」放出発表の一方「銘柄米」流通に変化も…静岡含め現状取材
10日朝の仙台駅。備蓄米が積み込まれたのは…なんと 東北新幹線。これは「アイリスオーヤマ」が引き受けた随意契約分の備蓄米で、JR東日本の「はこビュン」というサービスを利用し5キロ入り 200袋を都内へ運びました。
積み込んでから約2時間後。
(記者)
「今、備蓄米を乗せた新幹線が東京駅に到着しました」
到着後すぐに事前予約した人に1袋2160円で販売されました。一方、きのう北海道では。ドライブスルー形式で備蓄米が販売され車が大行列。
(備蓄米の購入者)
「いや~うれしい、ぐるって車並んでると思わなかった、(人が多くて)これ買えるかなぁ?って」
全国各地で備蓄米が行き渡り始める中、10日、新たな動きが。
(小泉農水相)
「あしたから、また追加の備蓄米放出します。全く手を緩める気はない。できることは何でもやる」
これまで61万トンの備蓄米を放出しましたが、11日から新たに「随意契約」で備蓄米を放出すると発表。その量は2021年産 10万トン、2020年産10万トン 計20万トンです。売り渡し先の対象は大手小売業者や中小のスーパーのほか、精米ができるまちのコメ販売店で、数量の上限は設けないということです。これで、政府備蓄米の在庫は10万トンほどとなりますが、小泉農水大臣は備蓄米が尽きた場合は外国産米の緊急輸入も検討しています。
一方、気になるコメの価格です。9日、農水省が発表したスーパーで販売されるコメの平均価格は、前の週より37円安い、5キロあたり4223円。2週連続の値下がりとなりました。この結果に小泉農水相は…。
(小泉農水相)
「今これから、まさに3000円台に向けて全く安心する暇はないので、スピード感を緩めずに、しっかりやっていきたい」
備蓄米の流通が進むことで銘柄米の流通にも変化が出ています。こだわりの銘柄米を扱っている神奈川県のコメ販売店。
(コメ販売店代表)
「今までずっと(コメが)なかったけど6種類くらい入ってきた。これからどんどん出回り始めると思います」
これまで仕入れができなかった卸売業者から、「6銘柄の米がある」と連絡があったそうです。
(コメ販売店代表)
「びっくりしました。今までずっと問屋さんから(コメが)入っていなかったから驚きました」
なぜ、銘柄米の連絡が。店主が卸売業者に聞くとこんな返答が。
(卸売業者の返答内容)
『前から持ってはいるんですけど、出てくるのが“ゆっくりめ”なんですよね。なるべく高く売りたいのが農家さんとか仲介の話ではあるので“相場感”見ながらとはなっていますね』
(コメ販売店代表)
「(元々コメを)持っていたかもしれないし、余裕があるから市場に出すということにしたのかもしれないし」
では、静岡県内でもコメの流通に変化が出ているのでしょうか。コメを取り扱う店舗を取材するとなんと値下がりの話も…。
静岡市内のスーパーマーケットです。
政府の備蓄米放出によって静岡県内でもコメの流通に変化が出ています。
この店では、週明けの9日がコメの入荷日。県内産コシヒカリが店頭に並べられていました。随意契約の備蓄米が放出されてから品切れになることが少なくなったといいます。
(ひばりや 営業本部 山岸 達也 部長)
「週末分は土曜日に入ってきて、週明けには、大体、今までは(棚が)空になってることが多かったのですけれども、先週今週ぐらいは、やはり備蓄米の話がお客様にあるのか、週末空けた段階でもおコメが残っている」
最近、特に売れるというのが2キロのコメ。この日も完売となっていました。「ヒバリヤ」では、今週末、5キロ2000円台で備蓄米600袋を県内5店舗で販売する予定です。店頭の銘柄米と比べると、価格だけみれば2000円以上の差があるため5、キロのコメを買い控える動きがあるのではと話します。
(ひばりや 営業本部 山岸 達也 部長)
「(売り場に)立っていた時も、お客様から『備蓄米、いくつ入ってくるの』と聞かれて、いついつぐらいだと、予定を話すと『じゃあ、もうちょっとソウメンで我慢しようかな』と言っていかれましたので、そういうお客様が少なからずいらっしゃるのかなと思います」
コメを選ぶ消費者も売り場の変化に敏感な様子でした。
(買い物客)
「大量に出てるのにびっくり。この前までなかったのに、え、
あるじゃんって。どこにあったの、っていう。今まで」
(買い物客)
「これまで5000円近いですよね。消費税入れて。うん、だからこれ安いんじゃないかなと思いますよ。こっちがね、安くなると、やはりこっち買っちゃいますよね、やはりおいしいおコメを食べたいですよね」
さらにコメの価格にも変化があるといいます。
一部の卸業者から銘柄米の値下げの話があったのです。ただ、期待の反面、不安も残ると話します。
(ひばりや 営業本部 山岸 達也 部長)
「違う銘柄で5キロ100円下がりますという案内が来て、先週変更し
た」
Q.理由は?
「モノがあるから。備蓄米がなくなった後は通常米の販売になりますので、それがどこまでお客様が手が取りやすいことになるのか、お客様が手に取りやすいような量がしっかり確保できるのかという方がちょっと心配で。ただ、一過性の備蓄米の対策だけでは、ちょっとうれしさ半分、ちょっと心配も半分あるような状況です」
一方、ここは焼津市にある明治39年創業のコメの販売店です。静岡県内をはじめ国各地のコメを玄米や精米で販売していますが、店頭には売り切れの表示も…。
(又平商店 又平 宗一郎さん)
「通常であれば3種類で売り切れになっているが倍以上のコメを並べていたが、ことしは在庫が確保できず。今までのコメ業界の概念が覆ったり変わった1年」
一方で備蓄米の登場でコメ市場に動きも。
(又平商店 又平 宗一郎さん)
「まだ動き始めた感覚はないが、ただ、今まで硬直化していた市場が備蓄米などで動き出す雰囲気はあって、新米の時期まで2か月ほどとなり、これから動き出す期待はある」
全国的に銘柄米の流通に動きが出てきた背景にあると考えられるのが、卸売業者同士で銘柄米を売買する「スポット取引」の価格の変化です。従来、コメが余っている業者が足りない業者に売るなど、効率よくコメを流通させるための仕組みです。しかし、今回のようにコメ不足が起きると業者間でコメの取り合いとなり、スポット価格が高騰。農水省もこれがコメ高騰の要因の一つだと指摘していましたが、関係者によると、そのスポット価格が、今、下落傾向にあるといいます。とはいえ、まだ流通が安定する様子はありません。そんな中でも、備蓄米の動きだけでなく、新米の季節まであと3か月ほどとなり、希望の光もみえてきたと話します。
(又平商店 又平 宗一郎さん)
「コメ屋として一番危惧していたのはコメ離れ。備蓄米が出回ることによって、、みなさんのコメ離れが食い止められるのであれば大変いいなと思っていいる。ことしはコメ離れが進む傾向ではあった。良くも悪くもコメが注目されることがなかったが、今まで以上
にやる気を出して頑張っている。新米が早ければ8月のお盆あたりには出てくるが、あと2か月なんとか切らさずにほんとに持つかなという状態で、それが一番心配なところではある」