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【密着】買い物難民の救世主!地域の仲間の生活をより豊かにしたい…地元で人気の移動スーパーに迫る【every.しずおか特集】

2023年11月14日 14:17

土屋さんの一日が始まるのは、午前3時半

土屋さんの仕事は、ただ商品を運んで売るだけではありません。

午前3時半、土屋さんの1日が始まります。辺りもまだ暗い中、車で30分かけ向かったのは、伊東市の漁港。漁から戻ってくる船のもとへ行き、とれたての魚を市場に出される前に売ってもらっているのです。

(土屋さん)
「こうやって浜売りだと好きな魚を好きなだけ、自分の好きなように仕上げて持って帰れる」

続いて向かったのは、青果市場。こちらでも、自分の目で見て野菜を仕入れていきます。商品を運んで売るだけでなく、仕入れるところから全て自分でやっているのです。
しかし、それだけではありません。市場から戻った土屋さんが、休む間もなく始めたのが…なんとあの人気のお惣菜も、全て一人で手作りしていたのです。大手ファミリーレストランなどで店長を務めた経験があり、調理師の免許も持つ土屋さん。その日に仕入れたものを使って、手際よく調理を進めていきます。

(土屋さん)
「買い物に行けないお客さんが何に困っているかと言ったら、買い物に行けないだけじゃなくて、立ってることが辛いとか、台所に立つのがしんどいっていう声を聞いて。だったら自分で作ろうって思いました」

全ての作業を、たった一人で行っているため、常に時間との戦い。いつも厨房はてんてこまいです。休む間もなく調理を続けること5時間。ポテトサラダやアジの南蛮漬け、桜エビの焼きそばなど、なんと10種類150人前も一人で作り上げました。早朝の港で仕入れたワラサは、光り輝く海鮮チラシ丼に。そして午前10時半、商品を車に積み込み、お客さんの元へ向かいます。

きっかけは、幼いころの自身の経験

土屋さんが「ゆたか号」を始めたきっかけ、それは小学校6年生の頃に母親を病気で亡くし、父親も仕事で単身赴任となり、弟と2人だけで過ごした経験があったからだと言います。

(土屋さん)
「おなかは当然いっぱいになるんですけど、心はね、満たされなかったっていうのは、自分自身の体験としてあって。今の高齢者も、お金と時間はあるけども、自分の好きなものを食べられないとか、少しずつ作るのは大変だとかはあって、皆さんの生活と心を両方とも豊かにできたらいいなという思いで、この『ゆたか号』を始めましたね」

生活も心も豊かに、そんな思いから名前も「ゆたか号」に。

開業から半年、いまでは「ゆたか号」と土屋さんを待つお客さんがたくさんいます。この日は白い杖をついた女性がやってきました。

(お客さん)
「目が悪いので、説明してもらいながら買わせてもらっている。ありがたいんですよ、本当に助かっています。歩けなくなってから、下までスーパーまでも歩けないですから」

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