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【特集】ことしで終わらない?“令和のコメ騒動” 新米の出荷で一見解消するも「来年分を先食いしている」と専門家 ≪新潟≫

2024年9月20日 19:00

■コメの作り手は減少の一途

再びコメ不足に陥るかもしれない……しかし、産地は様々な事情を抱えています。

8月の魚沼市。
田んぼで作業していたのは井口勝士さん、82歳です。

〈井口勝士さん〉
Q.真夏に背負うのは本当に骨が折れますね
「肥料だけで20キロ入るから。(機械との合計が)50キロになる」

毎朝10キロ以上のウォーキングをするほど体力には自信があります。
それでも、一人で草刈りや肥料撒きを行うには限界があり、ことし一部の田んぼを手放しました。

いま、こうした農家が増えています。

〈井口勝士さん〉
Q.農業の機械化(スマート化)をどう思う?
「いや先のことは考えません。そういう機械は高くて買えないもん。いま(肥料撒きの機械)1つでも14~15万する。コメが安いし、肥料は高いし、農薬は高いし」

個人のコメ農家の平均年齢は全国、県内ともに68.9歳。
(出典:農林水産省「2020年農林業センサス」)

高齢化などを背景に5年に1万軒ほどのペースで減り続けているのです。

■海外輸出の増加が、コメ不足の解消に貢献!?

そうした中、国が進めているのが農業の大規模化です。

ただ、海外に目を向ける生産者も。
およそ50ヘクタールの田んぼでコメを作る上越市の「内山農産」。
肥料まきはことしから別の生産者に委託してドローンを導入しました。

〈内山農産 内山義夫さん〉
Q.あっという間ですね
「速いですね。非常にこの暑い炎天下でしょ。こういうまき方でないと、なかなか従業員も大変なんでね。だから来年もお願いしますと頼んでるんですわ」

この夏、内山さんのもとに、あるバイヤーがやって来ました。

台湾系のアメリカ人、デヴィッド・リンさんです。
日本米を中心に様々な食材を取り扱い貿易を行っています。

15年以上の付き合いで、リンさんと契約し台湾にコシヒカリを輸出しています。

リンさんが台湾で扱っている日本米は去年産だと65銘柄にものぼります。
毎年、「新米フェア」を開き日本の自治体の職員や生産者が代わる代わるPRに訪れているといいます。
世界で注目される日本のコメ……。

農水省が9月3日に発表した今年の1月から7月のコメの輸出量は前の年の同じ時期と比べて23%増加し、2万4469トンと過去最高となりました。

国内で品薄状態となる中、日本のコメが海外の店に並んでいるのです。

〈キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹 山下一仁さん〉
「日本のコメは特に新潟はベンツどころじゃないんです。ベンツやレクサスじゃないんです。ロールスロイス。世界に冠たる品質のコメなんです。夢のある政策をやるべきなんです。そのリーダーとして新潟県は頑張るべきなんです」

山下さんはコメを可能な限り生産して海外に輸出するべきだと指摘。
コメの価格が下がったとしてもその分、輸出で所得が上がると話します。

〈キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹 山下一仁さん〉
「250万トン輸出していれば、かりに不足が40万トン起こったとしても、輸出量の20万トンを40万トン減らして210万トン輸出すれば国内の供給は何も問題ないわけです。アメリカやEUもそういうことをやってきているわけです。増産して輸出することは世界の食糧安全保障ないし日本の食糧安全保障にも寄与することなんです」

店頭から次々にコメがなくなった“令和のコメ騒動”

改めて日本の主食、コメの在り方を考えるきっかけにもなりそうです。

最終更新日:2025年2月3日 11:16