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【特集】「霊峰 御嶽と生きる」①密着!登拝支える「強力(ごうりき)」「なくてはならない存在」師匠から若手へ受け継がれる思いとは… 噴火から10年…御嶽の夏 

2024年9月24日 13:58
【特集】「霊峰 御嶽と生きる」①密着!登拝支える「強力(ごうりき)」「なくてはならない存在」師匠から若手へ受け継がれる思いとは… 噴火から10年…御嶽の夏 

噴火からまもなく10年、23日からシリーズ「霊峰 御嶽と生きる」をお伝えします。信仰の山、御嶽山には古くから強力と呼ばれる仕事があります。いま、山に生きる強力(ごうりき)とは…。

「覚明霊神~…」(祈とうの声)

「六根清浄」(歩く時に唱える声)

この光景は、今も特別ではありません。

霊峰、御嶽(おんたけ)。信仰の柱は「お山」に登り、祈る…登拝(とうはい)です。

「強力(ごうりき)」

倉本豊さん(68)。昔ながらの背板(せいた)に信者の荷物や、祈祷の道具を預かります。手には忍棒(にんぼう)。

「よっこいしょ…いきます」

この日は、40年来の馴染み、徳島県の団体を支えます。

御嶽では、案内人として付き添い、荷物も預かるのを「強力」、山小屋などへ荷を運ぶのを持子(もちこ)と言い慣わします。

Q強力とは?
倉本さん
「荷物を持つんだ けどその信者さんの思い、願い を持つというか、大きさ形に関 係なく。それが一番大事なとこ ろかな。強力の心得として。俺はずっと思ってますし、今で も思ってます」

厳しい行を積んだ者だけが許されていた御嶽の登拝は、江戸時代、覚明(かくめい)、普寛(ふかん)の2人の行者が庶民に道を拓きます。江戸時代末期には全国に500以上の講社(信者の団体)があったと言われます。

※写真集王瀧より

強力は現金収入の得られる「夏の副業」として根付き、王滝村には1970年代まで女性強力も。

※倉本さん撮影写真(2004年8月山頂付近行列※

20年ほど前まで、ひとつの団体でこの行列でした。しかし強力を頼む信者の登拝は減り一般登山者との割合も逆転。

噴火と、コロナが落ち込みに拍車をかけました。

噴火前15人ほどいた強力も今、依頼を受けるのは4,5人。

倉本さん
「前は60㌔が当たり前だ ったから、私物 入れても30キ ロしかないから。ま(荷物)少 なくなった、(信者さん)人数 も減った」

「ご苦労さんでございます」
「お気をつけて」

遠くから来る多くの信者が登拝できるのは年に1度。

古くからの形を守り、夏に必ず登拝をする立場からは…

御嶽神道 徳島連合会 川添海道 会長
「(強力は)なくてはならな い存在。教会が登拝に臨む場合 ね、1人でも多くの 方が行け るような状況こしらえるのはね、 荷物を持ってもらわなんだら」

富士山でも盛んだった強力はすでに姿を消し、今では御嶽だけと言われます。

倉本さん
「強力は季節だけの仕事。これが1年中通してだともう 少しやる人も増えるだろうけど7月8月いいとこ9月でしょ」

「じゃ行きますよ」

別の日。山下勝彦さん(49)が広島県の一行の強力を務めていました。御嶽山麓で生まれ育ち、高校時代から山に関わってきたベテランです。

この日はもうひとり、若手、塚原慎二さん(31)と2人態勢です。

岐阜県出身、転職で信州へ来た塚原さんは、仕事を辞めた時期に山下さん誘われ強力に。トレイルランニングの経験もありました。

強力2年目 塚原さん
「がむしゃらに 山(ト レランで)登ってきた経験が人のためになるっていうのは嬉し い」

山下さん「サポートしてあげてね 」
塚原さん「はい」

覚明堂の石碑「天明6年」の文字

山下さん
「(覚明行者が入定した)天明6年って書いてあるから一番古い石碑ね。この中 で一番古い碑ですよって案内す ると違うから」

塚原さん
「(先輩の仕事)見て学 ぶ機会少ないのでなかなか。中々見る機会ないので試行 錯誤でいろいろやっているって 感じですね。三ノ池 が。左が雪渓だね。見えた。良かった。みんなの心願が叶いましたよ」

Q強力さんは?
一行の最高齢(80)
「素敵でしたもうなんもかも(荷物)お任せ して。おかげさまで無事下りて こられました」

山小屋で働く塚原さんが強力として仕事をしたのはこの夏、7回でした。

山小屋で接客する塚原さん
「ありがとうございます」

倉本さんは大工、山下さんはデザイナーの顔も持っています。

塚原さん
「(先輩)山下さんと一緒に話しているのは山麓とか中山道とかのガイドはどうか」

「リンヒョウトウシャ…」(九字を切る声)

この日、塚原さんは1人で、地元木曽町の講社の強力に。

およそ40㌔を背にしました。

祈祷 神仏習合(しんぶつしゅうごう)を色濃く残す御嶽信仰。

途中、途中、熱心な祈りが続きます。

塚原さん
「到着・・・お疲れ様でした、無事に(到着)。荷物 をばらさないと」

塚原さん
「(頂上着いて)一安心 ですね。やっと半分終わったぐ らいの気持ちです。こっからま だ下りあるので」

木曽御嶽本教 百間滝木曽教会 橋戸彰教会長
「若い強力さん 非常にタフでびっくりしており ます。荷物も神様にあげる供物とか沢山ありますので、我々だけでは大変ですので、これからも 頑張って我々を助けていただき たいと思います」

ベテラン強力 山下勝彦さん
「若い強力,一 生懸命やってますよ。まだまだ ね、経験して、自分たちも若いころは出来ないのが当たり前、 山登っていくうちに分かってく るもの」

ベテラン強力 倉本豊さん
「俺が経験してきたよう なことの延長で強力まず出来な いし、叶わないことなんで。大 変かもしれないけど新しい新し い強力さんっていうかね。そういうものになっていってもらいたいのはある」

新人強力 塚原慎二さん
「人のために体 酷使して自分も色々な方々に学ばせていただいて(強力で)人 生がほんとに豊かに なったと 思って。御嶽だからですかね。やっぱり先人がいてこそのこの仕事 と常々思ってます」