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「コロナ後遺症で闘っている人も忘れないで」青春を奪われた19歳 『終わらないコロナ』後編 コロナ5類移行2年の今、思うこと【長野】

2025年5月9日 19:24
「コロナ後遺症で闘っている人も忘れないで」青春を奪われた19歳 『終わらないコロナ』後編 コロナ5類移行2年の今、思うこと【長野】
『終わらないコロナ』後編
新型コロナが2類から5類に移行して、2年を迎えた8日からシリーズでお伝えしている「終わらないコロナ」。
今回は、新型コロナ後遺症患者の血液検査から見えてきたある、真相に迫ります。

岡谷市に住む、山田幸奈さん19歳。
全身に力が入りません。
味もにおいも感じません。

体に異変が起きたのは2年半前に新型コロナに感染してから。
医師からは、新型コロナによる後遺症と診断されています。

新型コロナ後遺症には200種類以上の症状があると言われています。
けん怠感や思考力の低下、体の痛み、抜け毛や不眠など多岐にわたります。
国の最新の調査ではコロナに感染した人のうち、1割から2割が後遺症を発症するという結果も発表されていますが、治療法やメカニズムはわかっていません。

【母:笑子さん】
「検査をして異常がなければうちの病院に来ても診るものはありませんって言われちゃった。なので受け入れてくれるところがなくて」
【山田幸奈さん】
「(世間では)コロナは過去のものになっているし、コロナはただの風邪だと言う人もいる中で、コロナ後遺症で闘っている人も忘れないでほしい」

京都大学大学院医学研究科。

京都大学大学院の上野英樹教授です。
25年以上、免疫の働きとがんやアレルギーなど、病気との関係を研究してきました。

【京都大学大学院 上野英樹教授】
「コロナ後遺症というのが、多くのケースは免疫が関わっている」
「どういうふうなことが起こっていると、幸奈さんみたいなことが起こるのか、科学者として知りたいというのがもちろんあったし、逆に見つけることで、幸奈さんも救われるところがあるのではないかなというところが一番大きかった」

山田幸奈さんの両親の希望を受けて、私たちは上野教授の研究チームに血液検査を依頼しました。
去年9月、京都大学の医師が幸奈さんの自宅を訪れて血液を採取。京都大学へ持ち帰りました。

それから1か月後、血液検査の解析が終わったという連絡を受け、京都へ向かいました。

「ここが培養室ですね」

上野教授は、血液を分離して、免疫の働きを調べています。
上野教授が専門とする“免疫”は、ウイルスや細菌などから体を守る仕組みで、新型コロナ後遺症は、その免疫に乱れ=異常が生じているのではないかと考えています。
上野教授はコロナ後遺症を発症した100人以上の血液を解析した結果、免疫をつかさどっている、ある細胞の乱れが後遺症を引き起こしている可能性が高ことを突き止めました。

【京都大学大学院 上野英樹教授】
「この上にプカプカと浮いている白い層、免疫細胞が一番入っている白血球の部分ですが」

この白血球の中にあるのが、免疫をつかさどる細胞、「T細胞」です。
T細胞は、免疫のいわば司令塔。
体内に侵入してきたウイルスや細菌を攻撃する一方、排除しすぎないよう抑える働きもあります。

車のアクセルとブレーキのように、攻撃と守りのバランスが重要です。

コロナ後遺症は、免疫をつかさどるT細胞に異常=乱れが生じて引き起こされると上野教授は考えています。
幸奈さんの血液を調べた結果、コロナウイルスに対するT細胞が他の人より少なく、十分に機能していないことが判明。
「免疫に乱れ」があることが分かったのです。
さらに、免疫の状況から、次のパターンに当てはまる可能性が高いと導きました。

それが…。

コロナウイルスが体内に侵入。
高熱やのどの痛みを引き起こしますが、そのウイルスは次第に消えて、回復。
ところが幸奈さんの場合、コロナウイルスが侵入してきた時、もともと体内に存在していた悪性の潜伏ウイルスを刺激し活発化。

今の症状を引き起こしていると推測します。

【京都大学大学院 上野英樹教授】
「潜伏感染しているウイルスが、体の中で増えて、免疫細胞が一生懸命それに対して取り除こうと頑張っている現象なのかなという印象を受けます」
「もう少し検査は続けようと思っている」
「このウイルスがなんだろうかというところに特化した研究ができるので、光が見えてくる感じですね。ウイルスがあれば(分かれば)、光が見てくると思う」

【山田幸奈さん】
新型コロナ後遺症と闘う、山田幸奈さん。

体が動かなくって2年半になりますが、自分が回復する姿を思い描き、前を見続けています。

【山田幸奈さん】
「同じようにコロナ後遺症でつらく苦しんでいる方と、一緒に乗り越えようと伝えたいし、(回復して)光になりたい」

幸奈さんは、来年20歳になります。

【母:笑子さん】
「小学校の2分の1の成人式の時も感動したけれど、また本当の成人式の姿というのはその時から楽しみにしていたので、その姿は親としては見たい」

幸奈さんはこの日、母と双子の弟と一緒に久しぶりのお出かけ。
ある場所に向かいました。

下諏訪町にある写真スタジオです。

母の笑子さんが車いすの状態でも着付けを行ってくれる店を探し、二十歳の晴れ着を選びます。

たくさんの着物が並ぶ店内。

迷ってしまいますが…

【母:笑子さん】
「この中だったらピンク?」
【幸奈さん】
「この中だったらピンク」
「真ん中の」「かわいいでいうと、ピンクに決めた」

幸奈さんはこの日、かっこいい感じの黒とかわいいピンクの晴れ着を候補に選びました。

ただ…。

【母:笑子さん】
「幸奈。目開く?」
「楽しみにしていて、ワクワクしていたと思うから」
「また七五三とも違うし、どう化けてくれるのか期待したい」

幸奈さんは今、あごの操作で入力できる特殊な機器を使ってパソコンの資格を取りたいと日々、励んでいます。
来年のハタチの集いにはどのようなかたちで参加できるかまだわかりませんが、動けるようになったらやりたいことがたくさんあります。

【山田幸奈さん】
「温泉に入りたいのと、友達や家族と旅行にも行きたいのと、推しのライブとかに行きたい」

本来ならば、青春まっただかの19歳。早く動けるようになって、この時間を取り戻したいと幸奈さんは、願っています。
最終更新日:2025年5月9日 19:25