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東日本大震災から14年 復興目指し整備された建物やインフラの維持管理費が自治体の重い負担に 復興のあり方は

2025年3月31日 18:54
東日本大震災から14年 復興目指し整備された建物やインフラの維持管理費が自治体の重い負担に 復興のあり方は

 特集です。東日本大震災からの復興を目指し、被災地では多くの建物やインフラが建設されましたが、いま、その維持管理費が地元自治体の重い負担となっています。人口減などから税収も減り、数十億円単位で足りないという自治体も出てきています。宮古市や岩手県の施設を例に、復興のあり方を考えます。

 宮古市内の18か所に563戸ある、災害公営住宅です。

 住民
「弟と義妹が一緒の部屋で、私が大きな部屋にいる」「今の市営住宅いいなと思っている」

 東日本大震災で自宅が全壊したこちらの女性は、2015年の完成以降、ここで暮らしているといいます。しかし、この災害公営住宅も市の財政に大きな負担を与えています。

 魚市場は880万円。診療所は1567万円。宮古市で1年間にかかる、施設の維持管理費です。これに対し、災害公営住宅は年間3305万円かかっています。

 7年前に建てた市役所は、津波で全壊した保健センターや市民交流センターを併せた総合庁舎になりました。総事業費は、およそ109億円。年間の維持管理費は1億5598万円にのぼります。

 市の試算では、市が管理するインフラにかかる維持管理費は2024年度からの40年間で、合計4046億円。1年あたり101億円かかり、歳入規模を維持しても、毎年44億3000万円不足します。施設を長く使う「長寿命化」の工事をしても、年間23億円以上足りません。

 なぜ施設の建設が相次ぎ、維持管理費がふくれあがったのか。宮古市のある幹部は・・・

「国から迅速な復旧を求められ、被災者のためにも早くまちを再生させないといけなかった」

 維持管理費の増加は、被災地の広範囲に及びます。岩手・宮城・福島の3県と沿岸37市町村でかかるインフラの維持管理費は、少なくても年間565億円に上ることが読売新聞の調べでわかりました。これは、震災前のおよそ1.7倍にのぼります。

 建設しても、活用できていない施設もあります。県が13億5000万円かけてつくって管理する「宮古港フェリーターミナル」は、利用を見越したはずの定期フェリー便の就航がわずか1年9か月で休止に。今はクルーズ船が年に数回利用するほか、施設の貸し会議室が使われる程度となっています。

 宮古市都市整備部 藤島裕久部長
「作る時点では、実際に起きた大災害に対してどういうものを整備しようかという観点なので、作って何年後にいくらかかるかということではない」

 宮古市の藤島裕久都市整備部長は「今のインフラを市が独自に管理するのは限界」と訴えます。

 藤島部長
「人口は減っていく、予算規模は減っていく、でも維持管理するべきインフラはある」「これから(維持管理を)全部市町村でやってね、は無理なので」「国と県の支援をお願いしたい」

 田中和七さん
「この防潮堤は逃げる時間を稼ぐものだと教えられ方をしていたので・・・」

 維持管理費は大きいが、「まちには必要な施設」と痛感する人がいます。田中和七さん70歳。田老地区で消防団の分団長をしています。

 田老の防潮堤は、106億円かけて新たに作られました。高さは14・7メートル。

 田中さん
「どういうものがあったらこのまちを守れたかと言われた時に」「15㍍の防潮堤があれば救えたかもしれませんね」

 津波でまちは破壊され、多くの犠牲者が出ました。苦しい財政ですが、やはり市民の安心には変えられない。次の災害が起きても、誰も犠牲にしない。田中さんの願いです。

 田中さん
「ある程度大きな津波も時間的には抑えてくれるとは思っている」「この防潮堤はそれなりの役割を果たしてくれると期待しています」

 巨額の維持管理費がかかり続けることになった「復興インフラ」。未来のまちを守るための模索が続きます。

最終更新日:2025年3月31日 18:54
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