×

見えない障害・高次脳機能障害の実態「友人は離れ孤立していった」「両親には大丈夫と嘘をついた」宮崎で約7000人が苦しむ現実と周囲の認知不足で課題解決への動きは進んでいない

2025年4月17日 13:55

洋平さんは、簡単に組める棚の組み方さえもわからなくなり、道に迷ったり、お金の管理ができなくなったり、急に泣いたり笑ったり、約束を忘れてしまうなど、事態を理解できずに戸惑った。

友人は離れ、孤立していった。

筑波大学の宿舎に1年ちょっと閉じこもり、両親から電話があった時には「大丈夫」と嘘をついていたが、実際には大丈夫ではなかったと述べた。さらに、自殺願望が出てリストカットもしていた事実も明らかにした。

この経験が父親の洋さんを突き動かしている。洋さんは高次脳機能障害家族会の会長となり、行政、特に県に対して何度も社会適応訓練の更なる充実や専門性の高い職員の配置を求めてきた。

家族会 飛田洋会長:
高次脳機能障害の社会的な行動のトラブルは命に関わる。行政にはものすごい危機感を持って取り組んでほしいと考えているが、本当に申し訳ないが、厳しい言い方をすると、全く伝わってこない。

同じ思いを抱く人がつながり始める

こうした中で、3月のフォーラムでは同じ思いを抱く人のつながりが見えてきた。家族会の活動を知った高次脳機能障害のドキュメンタリー映画製作委員会のメンバーが大阪から来県し、上映会が開かれた。描かれていたのは60年近く前に起きた三池炭鉱での事故や2005年のJR福知山線列車事故などで高次脳機能障害となった当事者と家族、そして脳神経外科医の姿である。上映会は、的確な診断と支援の必要性を確認する機会となった。

家族会 飛田洋会長:
きちんと確定診断をして、どういう処方をして、どういう所とつなげて病院がバックでつなぎながら、一体となって相談ができる支援ができる体制が必要だと思う。

事故や病気で命が助かっても後遺症として悩まされる高次脳機能障害。宮崎県の調査によると、県内には約7000人いると見られる。誰が当事者になっても不思議ではないのに、この障害を取り巻く課題解決に向けた動きは進んでいない。

(テレビ宮崎)

最終更新日:2025年4月17日 13:56
テレビ宮崎