山形市に住む自閉症の男性「てっちん」が描く世界 絵がコミュニケーションの手段
山形市に住む自閉症の男性です。みんなから〝てっちん〟の愛称で呼ばれているこの男性の重要なコミュニケーションの手段となっているのが「絵」です。絵を描くことで自分の気持ちを表現する〝てっちん〟と家族のある1日を取材しました。
この日、馬と触れ合うことができる山形市内のカフェでイベントが開かれました。会場の所々に絵が展示されています。
来場者「こういう鮮やかな絵描けと言われても無理だもんな すごいな」
見る人を感心させる絵の作者は?
「いらっしゃい絵を描いてますよ」
山形市の長浜哲哉さん(19)。みんなから「てっちん」と呼ばれています。幼い頃、重度の自閉症と診断を受けました。文字や絵は書けますが、会話が苦手です。
そんなてっちんの絵は…
下書きはせず、水性ペンで迷いなく描かれます。
10歳の時に絵を描き始めたてっちん。遊び心あふれるユニークな絵は、数々の公募展で入賞し、4月2日には、「世界自閉症啓発デー」に合わせ、県が発行したパンフレットで挿絵を担当するなど注目されているんです。
イベント当日、会場の一角には、「てっちんのおみせやさん」がオープン。母の奈穂子さんと姉の志穂さんがてっちんの絵をデザインした雑貨などを販売しました。
その横でてっちんは…絵を描くことに夢中です。
「完成です(何の絵か教えて)徳川家康です」
描く手は止まることなくすぐに次の作品へ。
母・奈穂子さん「大河ドラマの撮影お馬さんを見て連想して描いてる」
実は大河ドラマが大好きなてっちん。馬がすぐ側にいる状況から連想して、この絵を描いたというんです。ちなみに絵の端っこにいるこの人は、お母さん曰く撮影スタッフなんだそうです。
来場者「色彩がきれいつい夢中になって見てしまう」
色んな人に見られてもマイペースに絵を描き続けるてっちん。でも、もともとは人混みが苦手で、大勢の人がいるとパニックを起こすことがありましたが…。
姉・志保さん「みんなからすごいね、かわいいねと作品を褒めてもらうと自分の作品が役に立っていると話したりはしないけど感じている。自分の絵を自分でも誇りに思えているんじゃないか」
絵を通して少しずつコミュニケーションを取るようになったてっちん。人混みや交流の場にも出掛けられるようになりました。
そろそろお昼の時間。てっちんの絵を見てみると…唐揚げ!?
「お腹が空いたから『唐揚げが食べたいよかあちゃん』というリクエストなのかなと思って」
気持ちをうまく言葉に出来ないてっちん。伝えたいことややってみたいことは、絵や文字で表現しています。
母・奈穂子さん「その場面でただ唐揚げの絵を描きたかっただけなのか、お腹が空いているのかは本人に確認しながらですけど本人も周りも伝わるという術があるとお互い気持ちよく暮らせる絵というツールを見つけたのが大きいこと」
お腹を満たしたてっちんがまず最初に描いたのは、唐揚げを作る自分の姿でした。
周囲の人との重要なコミュニケーションの手段となっている絵。これからもその絵で自分の世界を表現し続けます。