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【詳報】ここまで来た“夢の技術” 新幹線の自動運転、実用化までの「課題」

2024年9月22日 8:00
【詳報】ここまで来た“夢の技術” 新幹線の自動運転、実用化までの「課題」

 9月18日、JR西日本は、2030年代に山陽新幹線で「自動運転」導入を目指すと発表しました。運転士が先頭車両に乗車した状態で、ボタンを押すと出発・途中駅の通過や速度調整・駅での停車も自動で行われるというものです。

 自動運転の導入が進めば、安全性も向上・運転効率化も望めるだけでなく、走行中に乗務員が運転以外の業務にも従事できるようになります。大きな期待がかかるなか、はたして新幹線の自動運転は、どの程度進んでいるのでしょうか?

■自動化レベルは5段階 山陽新幹線導入は「東海道新幹線との技術協力」がカギに?

 国土交通省によりますと、鉄道における自動運転のレベルは、主に5つの段階に分類されています。

 ①「GoA0」:目視運転路面電車などで、運転士が目視にて確認しながら運転
 ②「GoA1」:非自動運転踏切等のある一般的な路線で運転士が運転
 ③「GoA2」:半自動運転(東京地下鉄等で導入)運転士が列車起動、ドア扱い、緊急停止操作、避難誘導などを行う
 ④「GoA3」:添乗員付き自動運転(舞浜リゾートライン等で既に導入)避難誘導、ドア開閉のみ乗務員が行う、運転はシステムで自動
 ⑤「GoA4」:自動運転(神戸新交通等で導入)乗務員の乗務はなし、完全無人で運行
 ※「GoA3」と「GoA4」については、いくつかの要件あり

 今回、JR西日本が発表したのは、山陽新幹線で「GoA2」の導入を目指すというものですが、実は新幹線における自動運転は既に実証実験などが進められています。

 東海道新幹線を運行するJR東海は、2023年5月に、自動運転システムの走行試験を静岡県内(浜松ー静岡間)で実施、その様子を報道陣に初めて公開しました。この「自動運転」は、今回JR西日本が発表したものと同じ「GoA2」レベルで、運転士が先頭車両に乗車した状態で、自動で速度制御や停車を行う実証実験でした。この日は、浜松駅を出発後、運転士が手を触れることなく自動で走行。静岡駅に到着したのは定刻の2秒前で、停車位置はわずか9mmしかずれないという“成果”でした。

 実は今回、JR西日本は「JR東海との技術協力」が叶ったことから、山陽新幹線でも自動運転の導入を目指せることになった側面があります。直通運転を行い、車両やシステムなど、両社が共有する部分も多いなか、一歩前を歩いていたJR東海からの技術協力を得られたことは、JR西日本にとって大きな追い風となりました。

■JR東日本が発表 「無人運転」の実現可能性は? 「ベテラン運転士」の経験は活かされない?

 さらに9月10日にはJR東日本が、新幹線としては世界初となる「GoA4」=「ドライバレス運転(運転士などが乗車しない無人での運転)」の導入を上越新幹線で目指すと発表しました。2029年度に新潟駅~新潟新幹線車両センター間(5.1km)の回送列車から実施を目指すとしています。

 「ドライバレス運転」が実現すると、運転士の乗車すら要らない状況に。その一方で、線路上や架線で異物が発見された場合や、通常とは異なる“違和感”を運転士が事前に察知し、事故を防ぐということはできなくなってしまいます。AIやコンピューターシステムの発達で、データ分析やシステム制御などには、人間の力が必要とされない時代が来ると同時に、「運転士の培った経験」が活かされる場面は減っていくことになります。

 そうしたなか新たな課題も浮かび上がっています。運転士がいない「完全自動化」が実現した場合、何かトラブルが起きたら、責任の所在はどこにあるのか? システム異常により運転ができなくなった際に、その車両を安全な場所まで運転するのは誰なのか?など、「運転自動化」に向けてクリアすべき問題は、まだまだ残されています。

■19日には東北新幹線で“連結外れ” 「前代未聞のトラブル」にどう対応?

 実際、9月19日には東北新幹線で「思わぬ事態」が発生。古川-仙台間を走っていた列車の連結部分が走行中に外れる事態となりました。時速310キロ以上で走っていた列車が突然分離し、緊急停止したのです。本来、車両が停止しているときにしか連結部分は外れない仕組みとなっているということで、20日現在、原因はわかっておらず、運転士も直前に異常な音や振動を感じることはなかったとしています。

 安全に運行するのが当たり前とされている「新幹線」。運転士が乗っていた中でも、前代未聞のトラブルが発生してしまった状況で、自動運転に向けたハードルをどうクリアしていくのか。実用化に向けた整備はまだまだ必要となりそうです。

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