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特集「キャッチ」外国人労働者 “技能実習制度”から“育成就労制度”へ 湯葉と豆腐の「梅の花」は言葉の壁にAIを活用 作業をスマホで撮影→16言語のマニュアル動画に 変わる現場 福岡

2024年6月5日 19:34
特集「キャッチ」外国人労働者 “技能実習制度”から“育成就労制度”へ 湯葉と豆腐の「梅の花」は言葉の壁にAIを活用 作業をスマホで撮影→16言語のマニュアル動画に 変わる現場 福岡
外国人労働者 言葉の壁にAIを活用
特集キャッチです。外国人労働者の「育成就労制度」を新たに設けるための法律の改正案が今、国会で審議されています。

従来の「技能実習制度」に代わる雇用制度で、これまでは人材育成を通した“国際貢献”が目的でしたが、「育成就労制度」は“人材確保”と育成を目的にしています。

人手不足が深刻化する中、貴重な労働力となっている外国人労働者。その指導や育成を円滑に進めようと、AIを使った新たな取り組みが行われています。

福岡県久留米市にある飲食チェーンの工場では、およそ150人の従業員のうち、4人に1人が外国人労働者です。

この日行われていたのは、外国人スタッフに作業工程を指導する実証実験です。

■作業工程の指導
「かまを通常の位置にセットします。」

AIを活用したマニュアル動画が使われています。

これまで外国人向けの指導マニュアルはありませんでした。日本語で書いた材料とレシピを見せ、作業を繰り返すことで覚えてもらっていました。

感覚や手加減を伝えるのは難しく、研修に時間がかかり、長ければ一人立ちまでに4か月もかかっていたといいます。

この工場で働くベトナム人のヴォ・タイン・トンさん(24)も実験に参加していました。

作っているのは練り豆腐です。

4年前に入社したトンさんは、今では手際よく作業していますが、働き出した当初、蒸気の調整の仕方を覚えるのに2か月かかったといいます。

■梅の花 生産管理課・眞田芳明さん
「トンくん、もうちょっと蒸気を緩めてもらっていい?」
■ヴォ・タイン・トンさん
「はい。」

最大の要因は「言葉の壁」です。

■トンさん
「(蒸気を)強くしたり弱くしたりがあるから難しい。最初分からなかった。」

微妙なニュアンスをどうすれば理解してもらえるか、指導する側も頭を悩ませています。

■眞田さん
「蒸気をひねると最大出る。45度にすると弱めることができる。ここで作っている物の質感を見ながら加熱の圧力を変えていく。これは今でもマニュアル化が非常に難しい。」

今回の実験で使われたAI活用動画は、映像とともにベトナム語で解説を聞くことができます。

説明に苦労していた蒸気の調整も。

■作業工程の指導(日本語とベトナム語音声)
「蒸気レバーを45度に調整します。時間が経過したらタイマーをストップし、蒸気レバーを調整します。」

■トンさん
「ベトナム語や(動画の)やり方もあったから、やりやすい。」

子どもの頃から日本のアニメが好きだというトンさん。日本の文化や技術を学ぶために母国を離れ、福岡で働いています。

■トンさん
「父と母は大人になるまで育ててくれたから、日本に来て頑張って貯金できたら(両親に)半分くらいあげたい。」

トンさんのように日本で働く外国人労働者は、去年10月時点、これまでで最も多い204万人あまりとなり、初めて200万人を超えました。

国は長期間、産業を支える人材を確保しようと、これまでの「技能実習制度」に代わる「育成就労制度」の新設を柱にした法律の改正案を審議しています。

改正案では、外国人労働者を原則3年で専門の技能があると認められる「特定技能」の水準にまで育成するとしていて、政府は今の国会での成立を目指しています。

トンさんが働く工場での実験に使われたシステムは、東京のスタートアップ企業「スタディスト」が開発しました。

企業が外国人向けの指導マニュアルを効率よく作ることが目的です。

まず、日本語で説明した作業の様子をスマートフォンで撮影します。それをパソコンに読み込ませると生成AIが作業ごとに分割していきます。

「字幕から生成」というボタンを押すと、AIが動画の内容に合わせた説明文をつけ、15分ほどでマニュアルが完成します。

さらに別のシステムを組み合わせることで、英語やベトナム語など16の言語に翻訳でき、外国人スタッフは母国語の動画を見ながら作業を覚えることができます。

■スタディスト社長室・木本俊光さん
「日本に来られる方に実際に試してほしいし、その人たちをサポートする方たち(企業側)も人手不足なので、両方より楽に、より活躍しやすくなるようにという思いで、奮闘している方や取り組んでいる方の力になれたら。」

技術を早く覚え自信につながることで、将来の夢の幅も広がります。

生麩の製造を主に担当しているトンさんは、いずれ母国ベトナムで日本料理店を出すという目標ができました。

■トンさん
「例えば生麩、まんじゅう、ごまだんごは(ベトナムに)ないから、日本の料理作りたい。ベトナムで。」

人手不足が加速する中、労働力確保を目指して、今後も多くの受け入れが見込まれる外国人労働者。日本での仕事を望む外国人が社会で活躍できる環境の整備が急がれています。

※FBS福岡放送めんたいワイド2024年5月29日午後5時すぎ放送