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【詳細解説】年金は何歳から受給がお得?平均寿命からは見えない意外と長い…老後 6月から年金増額も実質は今後20年“目減り”の人も! ケース別・年金受給開始の理想年齢を専門家がわかりやすく解説

2024年6月15日 11:00
【詳細解説】年金は何歳から受給がお得?平均寿命からは見えない意外と長い…老後 6月から年金増額も実質は今後20年“目減り”の人も! ケース別・年金受給開始の理想年齢を専門家がわかりやすく解説
年金額アップも実質は目減り?

 6月支給分から増額となる年金。しかし、昨今の物価高に加え年金の受給額は、今後20年も“目減り”が続くといわれています。私たちは、何歳まで働けばいいのか?何歳から年金を受給すれば、お得なのか?実は、“誤解”が多いこの年金問題を年金のプロ、社会保険労務士の井戸美枝氏が解説します。

2024年6月から年金受給額アップ その額は?「マクロ経済スライド」で実質的には目減りのワケ

 6月支給分から年金受給額が2.7%アップとなります。その内訳ですが、年金を40年納付した場合、国民年金が1750円アップ、会社員や公務員などの場合、国民年金に加え厚生年金が2501円のアップとなります。これは、1992年以来最大の引き上げ率となっています。平均的な収入で、40年間働いた場合のモデルケースでは、夫が会社員・妻が専業主婦の場合、夫婦で6001円のアップとなります。夫婦とも自営業の場合は、夫婦で3500円のアップ。夫婦ともに会社員の場合、夫婦で8502円のアップとなります。

 しかし、年金受給額の実質“目減り”が、今後20年間も続くといいます。そこでポイントとなる言葉が「マクロ経済スライド」です。年金制度維持のために、賃金や物価上昇に対して、将来の現役世代の負担が重くならないよう年金支給額を抑制する仕組みです。例えば今年度の場合、本来は物価などの上昇に合わせて+3.1%となりますが、年金制度の維持のために+2.7%に抑えられています。

(社会保険労務士の井戸美枝氏)
「私たちが払っている年金保険料は、固定されていて『これ以上は上げませんよ』という約束なんです。なので、受け取る方は『物価や賃金の上昇より少し下げた年金額に調整しますよ』ということになっています。しかし、“目減り”が20年続くというのは国民年金の場合で、厚生年金は2025年に解消される予定です」

Q.+3.1%にすると若い人の年金負担率が高くなったり、年金制度が破綻するということなのですか?
(井戸氏)
「現役世代の保険料の上昇を止めているので、受け取る方の年金の同じだけの上昇では、バランスが悪くなります」

Q.国民年金だけの人は2046年ごろまで“目減り”が続くというのは大変ですよね?
(井戸氏)
「第一号といわれる人の目減りが多く、できるだけ厚生年金の方に入ってもらって、調整を早く終わらせようという厚生年金の『適用拡大』が始まっています」

年金はいつから受給がお得?意外と老後は長い…参考はこのデータ!

 今、年金の受給は、原則65歳からとなっていますが、それより早く受け取る「繰り上げ」や遅く受け取る「繰り下げ」もすることができます。「繰り上げ」をしますと、早く受け取れる分月々の年金受給額が少なくなり、繰り下げると受け取る金額は増えます。しかし、97.9%の人は65歳からの受給になっています。

Q.なんとなく「65歳からなんだ」と思っている人が多いのでしょうか?
(井戸氏)
「65歳の誕生日の3か月前に『年金を請求してください』という封筒が届くので、そのまま請求しているのだと思います」

Q.繰り下げする人は申請が必要なんですか?
(井戸氏)
「請求しないと年金はもらえないので、届いたものを出さないで、後で年金事務所で手続きをすると繰り下げができます」

 60歳で受給をスタートした場合は80歳10か月までは65歳で受給を始めた場合より総額で多く年金をもらえます。一方、70歳で受給をスタートした場合、81歳11か月を超えると65歳で受給を始めた場合より総額で多く年金をもらえます。井戸氏によると「受給年齢についての相談をよく受けるが、多くの場合繰り下げ受給した方がお得」だということです。

(井戸氏)
「年金というのは、『年金保険』なので、長生きのリスクに対しての保障だということです。今後医療や介護の負担が重くなったときに、年金がたくさんあった方が安心ですから、繰り下げをするという人が多くいます」

 年金受給年齢を考えるときに多くの人が参考にするのが、「平均寿命」ですが、これには若くして亡くなった人も含まれるので、実際に参考になるデータがあります。その一つは「65歳の人が何歳まで生きるのか」です。この場合、男性が84.44歳、女性が89.30歳となっています。また「2022年に死亡した人の中で最も多い人の年齢」というデータもあって、男性は88歳、女性は93歳となります。

Q.意外と老後は長いと思った方がいいのですか?
(井戸氏)
「この数字のように、90歳くらいまでお金が尽きないように生活設計を立てておくというのが大事だと思います」

Q.高齢でも働いている方は、年金をもらえるのですか?
(井戸氏)
「厚生年金は70歳まで加入でき、それ以降は受け取れます。しかし、在職老齢年金と言って、賃金が高い場合は、年金は調整され、止まることもあります」

 井戸氏の監修で、同い年くらいの夫婦での年金受給開始の理想年齢を出してみました。まず、夫は会社員・妻は専業主婦で65歳まで働いた場合、夫は65歳で受給スタート、妻は70歳で受給スタートが理想だということです。

(井戸氏)
「生活費が必要なので夫は65歳から年金を受け取ります。女性の方が長生きなので、妻の年金は少しでも増やしておこうということです」

 次に、夫婦とも会社員で65歳まで働いた場合は、2人とも2歳繰り下げで、67歳からの受給が理想だといいます。

(井戸氏)
「所得代替率(=給付開始時の年金額の、現役世代の手取り収入に対する割合のこと)が、2年くらい受給を繰り下げると今の所得代替率と同じくらいになるので、その水準をキープするという意味です」

 そして、夫婦とも自営業で70歳まで働いた場合は、夫時は70歳、妻は75歳が理想となっています。

(井戸氏)
「自営業の夫は、亡くなったとしても妻に遺族年金がないので、妻自身の年金をなるべく増やしておきたいということで、最高の75歳という設定をしました」

 井戸氏によると、受給年齢を決めるのは「他に、病歴・長寿家系であるかどうか・貯蓄額・60歳で仕事をやめるかどうか、などが判断のポイント」だということです。

(「情報ライブミヤネ屋」2024年6月10日放送)