品質表示を厳格化「日本ワイン」の世界戦略
今、日本のワインが、国際的にも人気が高まっている。こうした中、30日から、国内で醸造されるワインについて、外国産のぶどうを使っているかどうかなどの明示が義務づけられる。その背景にある日本ワインの世界戦略を探った。
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「日本ワイン」とは、どんなワインなのか?
街の人に聞くと…
「いや、あんまり知らないです」
「日本ワインの定義?知らない」
「日本酒のようなワイン?」
「日本ワイン」とは、日本の畑で育ったぶどうを使い、国内で醸造されたもの。
30日、ワインの品質表示に関する法律が施行された。これまでは、国内産のぶどうを使っても、外国産のぶどうを使っても、国内で醸造されたワインであれば、同じ「国産ワイン」と表示されるケースがあった。
しかし、30日から製造されるワインについては、国産ワインというあいまいな名称は使えなくなる。100%国産のぶどうを使ったものだけを「日本ワイン」。外国産のぶどうを使って製造したものは「国内製造ワイン」と、新しい名称ではっきり分けて表示する事が義務づけられる。
こうした表示の変化について消費者は…
「なんか安心して飲める、買えるような気がします」
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では、「日本ワイン」とは、どのようなワインなのだろうか?
都内のワインバーを訪ねた。
アガリス神楽坂・菅沼正樹社長「こちらが全て日本ワインのセラーになっています」
記者「ズラーッと並んでいますね」
アガリス神楽坂・菅沼正樹社長「ここには大体、400本ぐらいだと思うんですけれど」
すすめられたのは、甲州産の「白ワイン」。
記者「さわやかな、かんきつ系のような酸味があって、舌にちょっと苦みが残ります」
日本のワインは、だしを使った繊細なうま味を邪魔しないので、日本料理に合うのだという。店の料理も「昆布だし」などでアレンジしている。
アガリス神楽坂・菅沼正樹社長「海外の料理を食べる時は、海外の(ワイン)が合いますし、日本のもの(料理)を食べる時は、やはり日本ワインが合う」
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日本ワイン生産量日本一の山梨県。
収穫したぶどうは、すぐに搾って果汁をタンクの中へ。ワインはぶどうだけを原料に使うシンプルなお酒。ぶどうの出来が、そのまま、味に反映されるため、未熟な実や茎を取り除く、選別作業が大切だ。
サントネージュワイン・横森洋一醸造部長「近年、(日本ワインは)ヨーロッパに持って行って、コンクールを受賞する例もありますので、非常に高い評価を得られているんじゃないかと」
今、日本ワインは国際的な評価が高まっている。今回の表示ルールの変更は、さらなる「追い風」になると期待されている。
山梨県甲州市にあるワイナリーでは、週末、多くの人がワインを楽しみに訪れていた。
見学ツアー参加者「“日本ワイン”って書いてあるのが、おいしくて、しっかりしたワイナリーさんの思いが入っているワインなんだなって思い飲めるので、それを選ぼうかなという気にはなりますね」
「日本ワイン」のほうが、よりこだわりを感じると話す。
シャトー・メルシャン 神藤亜矢チーフブランドマネージャー「『日本ワイン』というのは、日本産のぶどうを使ってなくてはいけない、というのがすごくクリアになったというので、国際的な基準に一歩近づいたと思いますので、海外のお客さまにとっても、日本のワインがとても近くなってきたと感じられる」
今回、このワイナリーで造られた日本ワインは、おもてのラベルに産地を大きく書き込み、日本産をアピール。表記や説明文に英文を追加して、海外展開も意識している。
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一方、今回の法律で、ワインの名前に地域や山岳名を付けるためのルールも厳格化され、商品名を変えたワイナリーも。
山形県の「蔵王スター」は、一部、ぶどうの産地が「蔵王」の山に接していなかったため、「蔵王」と名乗れなくなった。それでも、この機会を前向きに捉えている。
タケダワイナリー・岸平典子社長「原料が日本なら、日本ワインとはっきりと名乗れますし、それ以外のものは、日本ワインと名乗れないので、消費者がわかりやすくなると。ポジティブに飲んでもらえる機会が増えるはず」
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さらなる発展を目指す日本ワイン。「日本ワインのブランド化」と「地域のブランド化」は、順調に進んでいくのだろうか?