×

どうなる9条 みんなで考える“改憲議論”

2017年5月8日 17:48
どうなる9条 みんなで考える“改憲議論”

■どうなる憲法9条

 70年間、1文字たりとも改正されることがなかった日本国憲法。しかし、安倍首相は「2020年に新しい憲法の施行を目指す」と宣言した。


――安倍首相は憲法改正に向けて強い意欲を示したが、ポイントはどこにあったのか。

 1つ目のポイントは「9条1項2項を残し、自衛隊を明文で書き込む」。

 今回のメッセージで安倍首相は、憲法に「自衛隊を明記する」と改憲議論の本丸とも言える9条に切り込んだ。


■憲法9条をおさらい

【日本国憲法第9条】

 1項(省略)「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」

 2項「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」

 つまり、「日本は戦争は永久にしない。だから、そのための戦力も持ちません」というわけだ。

 安倍首相は、この2点はそのままにした上で、自衛隊の存在を明記した条文を9条に加えたいというメッセージを出した。

 これまで自衛隊は違憲だという議論があったので、憲法上、自衛隊をきちんと位置付けたいという考えだ。

 ただ、自民党は2012年、9条を改正して「首相を最高指揮官とする国防軍を保持する」などとする憲法改正草案を発表していた。

 つまり、自民党の改正草案は「自衛隊」を「国防軍」と変え、軍隊だと明確に位置付ける保守色の強いものだった。


――安倍首相はなぜ、「国防軍」を横に置いて自衛隊を憲法上位置付けるということにしたのか。

 それは今の国会の勢力図を見ると見えてくる。憲法改正の発議には、衆参両院それぞれの3分の2以上の賛同が必要だ。現在の議席を見ると、衆参それぞれ自民党単独では3分の2に及ばない。憲法改正に前向きな日本維新の会を加えても足りず、与党である公明党の動向がカギとなっている。

 ただ、公明党は自衛隊の存在は認めているが、「国防軍」とすることには否定的だ。そのため、公明党の合意を得るために安倍首相としては9条改正の内容を公明党も受け入れやすいものにしたとみられている。安倍首相としては「公明党をいかに取り込むか」が焦点となる。

 とはいえ、各党の中でも憲法改正に対して意見は割れている。自民党内でも意見の幅が広く、安倍首相よりさらに改憲に前向きな議員もいる。そして、民進党内の主張には大きな幅がある。

 安倍首相が今回、自民党の憲法改正草案とは異なる、保守色を薄めたと言える案を自ら提示したことには、自民党内にも困惑が広がっている。それだけに、国会でしっかりと議論していくことが重要になる。


■国民投票、来年にも?

 安倍首相のメッセージのもう一つのポイントは「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と時期を明言したことだ。

 今後の手続きの流れを見ていくと、まず憲法改正には衆参両院の3分の2以上の賛成による発議が必要だ。その後、60日から180日以内に国民投票が行われ、賛成が過半数となると憲法は改正されることになる。

 安倍首相が掲げた2020年に新しい憲法を施行しようとすると、国民投票は早ければ来年に行われる可能性もある。


■みんなで考える

 憲法と法律は大きく異なる。法律は国が国民に対して「これをしてはダメ」とルールを定めたものだが、憲法は法律とは逆に、国民が政府など権力者に対して歯止めをかけるものと言われている。

 その憲法をどうしていくのかをしっかりと議論し、国民一人一人が考えていくことが大切だ。