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原発キーワード「アレバ」

2011年4月23日 1:25
原発キーワード「アレバ」

 原子力発電所に関する報道、水や食物などへの影響に関する報道の中で、わかりにくい言葉や気になる情報を毎回1つピックアップし、日本テレビ報道局の担当記者が解説する「原発キーワード」。22日は、フランスの原子力大手「アレバ」について、原発事故取材班の福井由紀子記者が解説する。

 アレバは、今回の福島第一原発事故で日本政府が協力を要請した「原子力のデパート」のような会社だ。原子力発電を扱う会社としては世界最大で、「原子力発電所の建設」「燃料の製造」「燃料の再処理」「送電設備の供給」などを行っている。日本でいう原子炉メーカーであり、燃料会社でも電力会社でもあり、原料の調達から廃炉まで請け負う企業だ。

 トップはアンヌ・ロベルジョンCEO(51)。彼女は2児の母で、アメリカの経済誌「フォーブス」が選ぶ「世界で最も影響力のある女性100人」のトップ10の常連で、あだ名は「アトミック・アンヌ」。アトミックは「原子力の」という意味で、その名の通り原子力業界では有名人で、世界の指導者にもファンが多い。

 日本政府は今回、高濃度の放射性物質を含む汚染水の処理をアレバに依頼した。フランスにあるアレバの工場には、300ヘクタールの敷地に1000以上の原子力関連施設があり、使用済み燃料プールの水を処理するなどしている。

 アレバは高濃度汚染水の処理については高度の専門知識を持つが、具体的なことは企業秘密のため明かされていない。一般的な方法としては、1-水中にある泥やごみなどをフィルターで濾過(ろか)することで、泥やゴミに付着している放射性物質を取り除く。2-放射性物質を吸着しやすい物質を使い、放射性物質を除去する。例えばセシウムはフェロシアン化ニッケルという物質に吸着しやすい。3-特殊な機械の中で水分を蒸発させ、放射性物質のかすだけになったものを廃棄する-が挙げられる。

 アレバ側も日本への支援には積極的だ。企業として全世界に技術をPRするというセールスの側面も否定はできないが、それだけではない、フランスの“お国事情”がある。フランスの発電量のうち77%は原子力発電だ。原発が危ないということになると、フランスの国力にもかかわる。そういう意味では彼らも必死だ。

 世界には原子力を利用している国が数多くある。今回の事故では、フランスだけでなく、アメリカ、ロシアなどからも原子力技術の手が差しのべられている。もちろん、日本の企業も多く名乗りを上げている。しかし、個々の支援をうまく活用できていないのが現状だ。日本政府と「東京電力」が主導して、それぞれの国や企業の役割をきちんと指示することが必要とされる。