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はちみつで乳児死亡、事故防ぐためには?

2017年4月26日 18:56
はちみつで乳児死亡、事故防ぐためには?

 私たちの食卓におなじみの「はちみつ」。しかし、生後5か月の男の子がはちみつを口にして、食中毒で死亡していたことが今月、分かった。見落としがちな「子育ての常識」。同じような事故を防ぐにはどうしたらいいのだろうか。


■注意は30年前から出ていた

 はちみつを食べて死に至ることもあると聞くと驚く人もいるかもしれない。大人がはちみつを食べて食中毒になることはまずないが、1歳未満の赤ちゃんは腸内環境が整っていないため、腸でボツリヌス菌が増殖して、乳児ボツリヌス症を引き起こし、まれに亡くなることもあるという。厚生労働省は、30年前の1987年に注意を呼びかける通知を出していて、各自治体は、母子手帳や健診、離乳食教室などの場で情報を提供している。

 ところが、インターネット上には、はちみつを使った離乳食のレシピが多く投稿されている。今回、赤ちゃんが亡くなったことを受け、レシピ投稿サイトを運営する「クックパッド」では、はちみつを使った離乳食のレシピに「1歳未満には与えないように」という注意書きをつけ、「楽天レシピ」では、はちみつを使った離乳食のレシピは、差し戻して承認しない、などの改善策をとったという。


■野菜や果物はよく洗って

 はちみつの他にも、気をつけた方がいい食材はあるんだろうか。乳児ボツリヌス症を引き起こす可能性があると特定されている食材は「はちみつ」だけだが、過去には「井戸水」や「自家製の野菜スープ」にボツリヌス菌の混入が疑われたケースなどがあった。

 東京農業大学の丹羽光一教授は「ボツリヌス菌は、土などに存在するため、野菜や果物に付着することもある。調理する前によく洗い流すことが大切」だと話している。また、もし体内に入っても発症するのは極めてまれだ、とも話す。


■「祖父母手帳」にみる情報共有の重要性

 また、見落としがちなのが、一緒に子育てをする家族と新しい情報を共有しているかどうかだ。今回亡くなった赤ちゃんの家族は、「はちみつは体に良いと思っていた」と話し、赤ちゃんにはダメだという情報が家族で共有されていなかったという。時代が進むにつれて新たに分かってくることも多い。

 そうしたこともあって、さいたま市は、「祖父母手帳」を発行している。中には、孫育てをするにあたり、昔と変わった点が分かりやすく記載されている。

 例えば「抱っこ」は、昔は「抱き癖がつくから泣いてもすぐには抱かない方がいい」などといわれていたが、今は「心の成長に大切だから気にしなくてもいい」といわれている。また、「うつぶせ寝」は、昔は「頭の形や寝付きが良くなる」と思われていたが、今は「乳幼児突然死症候群を引き起こす危険性がある」として、避けるよう言われている。

 その他にも、「おむつ」は早めに外すのではなく、子どもの発達を見ながらのんびりと、「離乳食」は虫歯がうつるので、箸(はし)やスプーンは大人と共有しない、などが紹介されている。

 この祖父母手帳を発行しているさいたま市によると、祖父母世代からは「今の子育ての常識が分かって良かった」、親世代からは「親に直接言いづらいことが手帳で伝えられた」などの声が寄せられたそうだ。


■「最新の情報」を正しく共有

 このほかにも、都内の産婦人科病院などで祖父母向けにも子育て教室が開かれるなど、最新の情報を知ってもらうための取り組みが広がっている。最近は孫育てに積極的なおじいちゃんおばあちゃんも多い。こうした機会で、自信をもって関わってもらえたらいい。

 今回のポイントは「最新の情報を」。今はインターネットなどで様々な情報が得られるようになったが、それだけに、何が正しく、必要な情報か、迷うことも多くなったように思われる。大切な命を成長にあわせて守るために、正しく読み解き、家族ともきちんと共有しておきたい。