鎌田實氏、映画で見直す“人と人の関係”
新年度がスタートして、新しい環境や人との出会いに心をゆらしている人も多いだろう。この春、注目されている映画にも「人と人の関係」を描いた作品がある。諏訪中央病院・鎌田實名誉院長が紹介する。
<紹介する映画のあらすじ>
■カフェ・ソサエティ
1930年代の華やかなハリウッドが舞台。映画プロデューサーとして、成功した叔父を頼ってハリウッドにやってきた平凡な青年、ボビー。ボビーは、叔父の秘書ヴェロニカに心を奪われる。しかし、彼女には交際中の男性が。やがて、ボビーは同じヴェロニカという名の女性と親密な関係に…。2人のヴェロニカの間で揺れ動く1人の青年の恋を描いた甘く切ない物語だ。
■ムーンライト
アカデミー賞で「作品賞」を受賞した「ムーンライト」。学校ではいじめられ、家に帰れば、待っているのは麻薬におぼれた母親。いつもひとりぼっちだったシャロン。心の支えは、麻薬ディーラーのフアンとたった1人の友人、ケヴィンだけだった。やがてシャロンは、ケヴィンに友情以上の思いを抱くように…。しかし、それは、受け入れられてもらえない思いだった。この事をキッカケに変わっていくシャロン。時がたち、過去を忘れようとしていたシャロンのもとにかかってきた電話は、唯一の友人、ケヴィンからだった。少年の成長と心の葛藤を描いた物語。
■怪物はささやく
児童文学の傑作が原作となっている作品。余命わずかな母親と暮らす13歳のコナ-。母親が元気だった頃の楽しい思い出にふける日々。そんな中「3つの物語を話してやる」「4つ目は“お前の物語”を語れ」―大きな木の姿をした怪物が夜ごと現れ、語る3つの物語。怪物が語らせようとしている、少年が“隠している真実”とは?
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この3本を通じて、伝わってくるのは「人は1人では生きていけない」ということだ。3本の映画は、どれも「人間は、わがままで、寂しがり屋で、人にかまってほしくて仕方なくて、それでいて相手の気持ちを考えることのできる、優しい生き物」だということが伝わってくる。
そんな、私たちは、人とぶつかって傷つけあったり、恋をして愛しあったりしながら、成長していく。人工知能AIやロボットの技術がどんどん進む中、私たちにしか作り出すことのできない人間と人間の関係、身の回りの温かな関係を改めて見直してみてはどうだろうか。