軽度認知障害 チェックすべき10のサイン
超高齢化が進む日本。認知症患者は推計で約462万人。また、認知症予備軍と言われる人も400万人いるといわれている。おさえておきたい認知症予防のポイントとは?
■“軽度認知障害”とは
健康な人がある日突然、認知症になるということはない。必ず、認知症予備軍とも言われる、このMCI(=軽度認知障害)という過程を通ることになる。MCIとは、もの忘れの自覚はあるものの、認知症とも正常とも言い切れない状態のことだ。
まずは、軽度認知障害の可能性があるかどうかをチェックできる簡単な方法があるので紹介する。
■MCIの可能性は?“10のサイン”
認知症予防の第一人者といわれる東京医科歯科大学・朝田特任教授にお聞きした。
1.何度も同じ話をする
2.会話に「あれ、これ」を使うことが増えた
3.気づかずに同じ商品を買ってしまう
4.外出が減った
5.趣味が楽しめなくなった
6.日付が言えない
7.小銭を使わなくなった
8.服装など無頓着になる
9.家電操作にまごつく
10.水を出しっぱなしにする
10のサインのうち3つ以上あてはまる人、それが悪化しているという人は、MCIの可能性があると考えられる。「もの忘れ外来」や「認知症」専門医のいる病院で一度、受診した方がいいだろう。
■仕事でダブルブッキング
実際、軽度認知障害となった場合、どんな“もの忘れ”をしてしまうのだろうか。3年前、軽度認知障害と診断された山本さんに話を聞いた。
「62歳になる直前に仕事でダブルブッキングをしてしまった。同じ日の同じ時刻にインタビューをする取材(の約束)を2人同時にしてしまって、『山本さん今日の約束はどうなっているんですか?』という電話が入って驚いてしまったんです」
山本さんは記者として仕事に支障が出てはいけないと病院へ行ったところ、MCIという診断を受けたそうだ。
■MCI放置 4年以内で約半数が認知症
人によっては「何かおかしい」と思いながらも、年齢のせいにして放っておいてしまいそうだが、こういったサインを放っておいてはいけない。
朝田特任教授によると、MCIをそのまま放っておくと、4年以内で約半数の人が認知症を発症するということだ。しかし、MCIの段階で気がついて対策すれば、認知機能の低下を遅らせたり改善したりすることもできるといわれている。
■認知症対策「2つの課題を同時にこなす」
実際、認知症に対してどんな対策ができるのか。
山本さんは週に1度、認知機能を向上させるためのデイケアに通っていて、そこで教わった筋力トレーニングを毎日行っている。運動すると筋肉の痛みや刺激などの情報が脳に行く。普段使わない筋肉を意識して動かすことで、脳の活性化につながる。
さらに山本さんは、デイケアで覚えたプサルテリーという楽器を週に1度は演奏している。楽器演奏は、譜面を見て音階を理解して、手や指先を動かして音を出す。こうした2つの課題を同時にこなすことが、脳の情報処理能力を高め、認知機能の向上につながると期待されている。
実際に、山本さんはこうした認知機能向上を目指したトレーニングを行っている事で、もの忘れの回数が減ってきたと話している。もちろん、トレーニングを行いさえすれば、すべての認知症予備軍の人の認知機能が改善するとは言い切れないが、なるべく早い段階で認知症の兆しに気づいて、治療や運動などを行っていく事が大切だ。
■楽しんで生きる
3年前、軽度認知障害と診断された山本さんは、それまで興味のなかった音楽や絵に興味を持ち、それを趣味として充実した生活を送っている。新たなことに挑戦することは脳への刺激になって、認知機能の向上にもつながってくると思う。
生活の中に脳が活性化するような楽しみをもって、いきいきとした生活を送ることを心がけることが大切だ。