「オールジェンダートイレ」設置のナゼ
先週末、東京・渋谷に新しい店舗「MEGAドン・キホーテ渋谷本店」をオープンしたドン・キホーテ。そのトイレには、男性と女性のマークに挟まれた特徴的なマークと共に「オールジェンダー」という案内。実は、性同一性障害の人に配慮されたトイレだ。なぜ今、このようなトイレを設置したのか。
「オールジェンダー」(全ての性別)トイレは、性別を問わず利用できる。心と体の性が一致しない性同一性障害の人も利用しやすいようにという配慮があるという。
設置されている3つの個室トイレは、それぞれ洗面台がある作りになっているので、トイレの手洗い場などで周囲の視線を気にすることなく利用できる。
このトイレは、性同一性障害の人専用というわけではなくて、子ども連れの人や体の不自由な人など誰でも利用できるという。
■トイレ利用に悩む性同一性障害の人たち
LIXILの調査によると、性同一性障害などの人のうち約65%が職場や学校のトイレ利用で困ったり、ストレスを感じたりしていると答えている。このうち、7割以上の人が「周囲の視線が気になる」という理由を挙げていた。
性同一性障害で、その後、性転換をした人に取材したが、「トイレに行くことがストレスだった。水分をとらないようにしたため、脱水症状になったり、ぼうこう炎になったりしたこともある」という声もあった。
■役所や教育現場でも
ドン・キホーテの他にも、こんな動きがある。大阪市では、市内24区のうち半分以上の13区で区役所の多目的トイレの入り口に“虹”をあしらった案内板を取り付けている。“虹”は性の多様性を象徴している。
学校での取り組みも行われている。佐賀県鳥栖市では今年度から来年度にかけ、市内の小中学校10校について、男子トイレを女子トイレと同じように全て洋式の個室にするという。
男子の間で「トイレの個室に入るとからかわれる」といった声があるのに加え、性同一性障害の児童や生徒への配慮も理由の1つだという。
アメリカでは「ジェンダーニュートラル」(性別を問わない)と表示されたものや、日本のドン・キホーテと同じマークも使われている。
ドン・キホーテが今回、新しいトイレを設置した東京・渋谷区は2015年、同性のパートナーを「結婚に相当する関係」と認める公的な書類を交付するなど、性的少数者にも優しい環境を作っている。
だからこそ、ドン・キホーテも渋谷区で取り組みをスタートさせたということで、動きがさらに加速していくことが期待される。
■理解を深める
たとえ、「オールジェンダー」のトイレを整備しても、周囲からの視線が気になって性同一性障害の人たちが利用しづらいものになったら本末転倒だ。
環境の整備と共に、社会もしっかりと理解を深めることで、みんなが利用しやすいものにしていきたい。