“認知症と関係あり”虫歯と歯磨きの新常識
今週は「歯と口の健康週間」。虫歯を防ぐと認知症予防につながるとする最新の研究結果もある。全国一、虫歯が少ない県で行われている対策とは何か?虫歯を防ぐ秘けつを探る。
■目標は「80歳で20本」、現実は―
虫歯を予防する意識は、日本はまだまだ低い。大人の歯は、“親知らず”を含めると32本あるが、何でも食べられるようにするには80歳で20本残すことが目標とされている。
ところが、先週、厚生労働省から出されたデータによると、80歳から84歳で残っている歯は、平均で15本。昔に比べると増えてきたものの、目標までは程遠いのが現状だ。
■日本は“虫歯になって受診する”
この背景のひとつにあるのが、歯科医院を受診する目的だ。日本では検診など予防のために受診する人は24.8%、虫歯になった後の治療目的の人は64.4%いるという。一方、世界に目を向けると、アメリカでも、スウェーデンでも、7割ほどの人が予防の目的で歯科医院を受診している。この違いは何だろうか。
日本歯科大学附属病院・倉治ななえ臨床教授は、「基本的に、日本では予防が自費だが、欧米では予防に保険がきく国もあるなど保険制度の違いや社会的要因で国民に意識の差があるのでは」と、保険制度の違いをあげている。
■「12歳の虫歯本数」一番少ないのは新潟県
一方で、日本でも積極的に予防に取り組んでいる県がある。まず、昨年度の都道府県別12歳の平均虫歯本数を見てみると、全国平均は0.84本。一番少ないのは新潟県で平均の半分以下の0.4本だ。しかも17年連続全国最少だという。
その理由を新潟県に聞くと3つあるという。
(1)フッ素うがい
新潟県の小学校で配られていたのは、歯を丈夫にするとされるフッ素を水で薄めた液体。先生の合図に合わせて口に含み、クラス全員でうがいをする。これが「フッ素うがい」だ。このフッ素うがいは、新潟県の全小学校の8割以上で行っているそうだ。
(2)給食後は必ず歯磨き
「給食後の歯磨き」は県内の小学校の9割以上で行われている。
(3)虫歯になる前段階で通知
学校と歯科医が連携し「虫歯になる前の段階で通知」するとしている。
■なぜ虫歯予防が「認知症」予防につながるのか
虫歯を防げれば全身の健康にもつながる。例えば、虫歯を防ぐことで、脳卒中や認知症の予防につながるという研究もある。
京都府立医大の研究チームの行った研究では、認知症につながる認知機能の低下は、脳の中の小さな出血が一因であるとされている。渡辺助教は「虫歯菌の一種があると、血小板の止血作用を低下させるため小さな脳出血を起こしてしまう。歯磨きなどの口腔(こうくう)ケアが 認知症予防につながる」と話している。
■正しい歯磨きを―
今回の結論は「すべては歯磨き!」。何はなくとも歯磨きが大切ということで正しい歯の磨き方を確認してみたい。ポイントは2つある。
ひとつ目は、歯ブラシの持ち方。いわゆる手を“グー”の形にして歯ブラシを握ると、歯に対して圧力がかかりすぎるため、ペンを握るような「ペングリップ」がおすすめだという。ふたつ目は、フッ素入り歯磨き粉で磨いた後、ゆすぎすぎると効果が薄れるので、10ミリリットルほどの少量の水で1回ゆすぐのが効果的だという。