【原因は】イージス艦衝突はナゼ起きた?
17日、静岡県の沖合で米海軍のイージス艦とコンテナ船が衝突した。その衝撃でイージス艦にはキール(竜骨)付近に大きな穴があき、大量の水が入り込んだという。7人もの死者を出した今回の事故の原因とは?
■“海の難所”で衝突
今回事故を起こしたのは、横須賀基地に配備されているアメリカ海軍のイージス艦、“フィッツジェラルド”と、日本郵船が運航するフィリピン船籍のコンテナ船だ。
事故があったのは、静岡県・伊豆半島石廊崎から南東約20キロの海上で、伊豆半島と大島に挟まれた海域。ここは、東京湾を出入りする貨物船などで非常に混雑する海域で1日400隻もの船が通る“海の難所”ともいわれている。
■“回避義務”はどちらに?
今回の事故では、その痕跡などから、イージス艦の右後方からコンテナ船がぶつかったものとみられている。2隻の船がぶつかりそうになった場合、回避義務がどちらにあるのかは、進路や位置関係などが関係してくる。
海上衝突予防法という法律では、例えば、“追い越し”の場合、追い越す側の船に回避義務があり、十分に遠ざかるまで相手の進路を妨害してはいけないことになっている。また、互いに進路が交差する“横切り”の場合では、相手を右に見る船に回避義務があり、進路を右に曲げて避ける必要がある。
関係者によると、今回の事故は、“横切り”の位置関係にあったとみられ、この場合、コンテナ船を右に見るイージス艦側に回避義務があったとみられている。イージス艦の実際の動きはまだ分かっていないが、一方のコンテナ船の方は直前に右に舵を切って衝突を回避しようとしたとみられている。
■レーダーの役割
イージス艦には高性能のレーダーがついている。事故が起きた“フィッツジェラルド”とほぼ同型の日本のイージス艦には、八角形のレーダーが周囲360度あらゆる方向を24時間監視できる、イージス艦のシンボルといえる高性能レーダーが搭載されている。
しかし対象は、あくまでミサイルなど上空からの攻撃で、周りの船を探知する性能は民間の船と同じ程度だ。このため、船中央の高いところにある艦橋で乗組員が通常のレーダーをチェックし、左右に見張り役が立って監視する。海上自衛隊の場合は、夜間の当直態勢になっても10人程度配置し、見張り役は左右のほか、船の後方部分にも置いているそうだ。
“フィッツジェラルド”が当時、どんな態勢で見張りをしていたのか明らかになっていないが、海上自衛隊の幹部は「何らかの理由で気づかなかった、もしくは回避行動が遅れた可能性が高い」と話している。
■大きく損傷…イージス艦の装甲の強さは
衝突の衝撃で一部が潰れてしまったイージス艦。元海上自衛隊海将の伊藤さんはこう話す。
「(今の軍艦は)スピード重視。フレームはしっかりしているが、その間の鉄板は実は薄い」
フィリピンのコンテナ船が一番硬い船首で、一番弱い脇腹の部分に衝突しているので、イージス艦とはいえこれだけ大きく損傷したといえる。なぜこれだけの事故が起きたのか徹底した調査が必要だ。