「命を守るフライト」 CA出身・日本航空“初の女性社長”の覚悟
日本航空で女性として初、さらに客室乗務員出身者として初の社長が誕生しました。就任したのは鳥取三津子氏。どのように会社のかじ取りを担うのか、その思いに迫りました。
4月1日。入社式の朝、日本テレビのカメラの前に姿を見せたのは…
日本航空 鳥取三津子社長
「おはようございます」
この日、日本航空の社長に就任した鳥取三津子氏です。
日本航空 鳥取三津子社長
「平常心でいきたいと思いますが、明るく、覚悟を決めてまいりました」
少し緊張した面持ちで、“覚悟”という言葉を口にしました。
鳥取氏は日本航空で女性初、さらに客室乗務員出身者として初の社長となりました。
日本航空 鳥取三津子社長
「『安全とお客さま』。この2つの視点、これが全ての起点として、私たちは考えて行動していきたい」
鳥取社長は、会社のかじ取りをどのように担うのか、私たちは彼女の覚悟に迫りました。
まず見てもらったのは、客室乗務員を目指す学生たちからの質問です。
CA志望の学生
「客室乗務員の頃に大切にしていたこと、心がけていたことはありますか?」
日本航空 鳥取三津子社長
「本当にいろいろなお客さまがいらっしゃいます。ただ、自分の身内・家族・友達・大好きな友達、そういった方と接客しているつもりで、いつも接するようにしていました」
また、別の学生からはこんな質問も…
CA志望の学生
「多様性の時代の中、これからの時代に求める客室乗務員像とは、どのように変化していくと考えているか」
日本航空 鳥取三津子社長
「男性でも女性でも外国人でも、色んな方が乗務員になってほしい。過去にとらわれない感性とか、逆に教えてもらって、私たちの接客にいかしたい。ぜひお待ちしています」
にこやかに質問に答える鳥取社長。一方、今年1月に起きた日本航空機と海上保安庁の航空機の衝突事故に話が及ぶと真剣な表情になりました。
この事故による日本航空側の乗客乗員の犠牲者はゼロ。この背景には、利用客の安全のための会社としての「ある姿勢」が大きく影響したと話しました。
日本航空 鳥取三津子社長
「準備するのはすごく重要。何も準備がないと必ずうまくいかない。イメージトレーニングとかシミュレーションは日頃からすることが重要ということを伝えていきたいと思う」
「命を守るフライト」のため、日頃から準備を欠かさないという鳥取社長。その原点は入社1年目の1985年にありました。
この年、日本航空の旅客機が群馬県上野村の御巣鷹の尾根に墜落した事故。520人の命が失われました。
日本航空 鳥取三津子社長
「これは絶対に風化してはいけない。JALグループの社員全員、何の仕事をしていても、必ず安全の仕事につながっていることを忘れないでいてほしい。会社の中でも『現地・現物・現人』を大切にしていますので、そこは私も本当に大切だと思っています」
事故現場に実際に行く「現地」、機体や遺品などを実際に見て事故に関わった人の話を聞く「現物」や「現人」。社員全員にこの3つを大切にし、事故から学びを得て安全への意識を徹底してほしいと語りました。
変えてはいけない安全への思い。一方で、鳥取社長が変えていきたいと話すのが、日本航空のある“風土”です。
日本航空 鳥取三津子社長
「破綻でかなり臆病になった。失敗を恐れるという文化」
2010年の経営破綻が会社の“トラウマ(心的外傷)”として残り、事業提案など、新しいことにチャレンジする社員が大きく減ったと感じていました。
日本航空 鳥取三津子社長
「本当は『こんなことやりたいのに』と思っていることがあるならば、まずは口にだしてもらって、それを本当にやる価値があると思うなら、しっかり後押ししたいと思う」
“チャレンジする風土”を作るため、海外研修や社外出向などを通じて多様な文化や価値観に触れる機会を増やしてくほか、年齢やキャリアにとらわれず、人材を登用できる人事制度の導入も検討しています。
環境問題や人口減少社会など、業界や日本全体の課題の解決にも意欲を見せた鳥取社長。「安全の徹底」と「チャレンジ精神」、2つの目標を両立させて日本航空を変えることができるのか、手腕が問われます。