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特集「キャッチ」福岡市動物園に7年ぶりのゾウ たび重なる延期を経て4頭を担当する飼育員 待ち望んでいた少年も

2024年7月31日 18:16
特集「キャッチ」福岡市動物園に7年ぶりのゾウ たび重なる延期を経て4頭を担当する飼育員 待ち望んでいた少年も
7年ぶりのゾウを待ち望んだ飼育員と少年
特集「キャッチ」はアジアゾウについてです。福岡市動物園にやってきたのは、母と娘の親子を含めた4頭です。ゾウがいなかったおよそ7年間、飼育員、そしてゾウの飼育員を目指す少年も、この日を待ち望んでいました。

福岡市動物園で30日、ミャンマーから来たゾウ使いとゾウを小屋に入れる作業をする男性。ゾウへの熱意が強く、飼育担当のリーダーになった白濱祥平さん(32)です。

2017年に「はな子」が死んで以来、およそ7年ぶりにゾウが福岡市動物園にやってきました。この日を迎えるまでに半年以上かけて、白濱さんたちは準備を進めてきました。

幼い白濱さんの後ろに写っているのは、福岡市動物園の人気者のゾウ「はな子」と「おふく」です。

小さい頃から動物の飼育員になりたかったという白濱さんは、大学生の頃に再び、動物園で長生きしている「はな子」を見て、人の心に残る動物だと感じたといいます。

その後、佐賀大学の大学院で生態学を学び、赴任した愛媛県の「とべ動物園」で初めて担当したのが、アフリカゾウでした。

コロナ禍などを経て福岡市動物園で働くことになり、今回初めてゾウを受け入れから担当します。

■福岡市動物園 ゾウ班リーダー・白濱祥平さん(32)
「大型の動物で、4頭来るので、準備はかなり大変。最初からゾウ担当という一生できない経験ができると思うと、すごくうれしい。」

■福岡市動物園 最年長・福原晋弥さん(50)
「いつもゾウの標本を見て最初に思うのは、鼻には骨がないなと。ここにガランと空いた、この形ですよね。」

そしてもう1人、ゾウを担当するのは、福原晋弥さん(50)です。

「はな子」が死ぬまでの15年間、担当していたベテラン飼育員で、この日は福岡市博物館で子どもたちにアジアゾウについて説明していました。

■福岡市動物園 最年長・福原晋弥さん(50)
「この頭骨の写真は、福岡市動物園に7年前までいた『はな子』でした。奥歯が特徴的で、『はな子』の飼育員なら誰でも『はな子』の歯と分かる状態。」

福原さんにとって「はな子」や「おふく」は、担当した動物の中でも特別な存在だったといいます。

■福原さん
「10年以上同じ担当したのはゾウが初めてで、苦労しながらちょっとずつ距離を詰めていったので、思い入れは強い。」

ゾウと信頼関係を築くためには時間がかかるので、若い人たちに経験してほしいと一度、担当を断りました。

■福原さん
「私みたいな年齢の人間が担当するより、若い人間がこれから長く付き合った方が、ゾウの面倒をみられる気がして。」

ことし5月、休園日の福岡市動物園。

■白濱さん
「じゃあ配置に。収容します。」

この日、行われていたのは、ゾウを寝室から運動場に出し入れする時のシミュレーションです。

白濱さんや福原さんをはじめ獣医師などを含めた6人は、ゾウを受け入れるために編成された「ゾウ班」で、清掃、餌やり、健康観察、繁殖の研究などの業務があります。

ゾウを飼育する上で一番大事なのは「安全性」です。今回受け入れるゾウは、最大4トンほどで力が強く、ゾウの飼育はときに飼育員が事故に巻き込まれる危険性があります。

■白濱さん
「ここでの出入れが、一番危険はないんですよね。」
■福原さん
「前のゾウで言うと、こっちは確かに危ない。ゾウの生態によっては待ち伏せしていることも考えられる。」

ゾウの飼育歴が最長の福原さんは、当時の経験を伝えながら白濱さんを支えています。

■白濱さん
「福原さんは直接飼育をやっていて、いろいろアドバイスをもらっている。安心というか、経験者がいるのは違うなと。いつでも来ていいように準備を進めていきたい。」

福岡市は、姉妹都市のミャンマー・ヤンゴンからゾウ4頭を受け入れる計画を進めてきましたが、新型コロナの感染拡大やクーデターの影響で延期に。

その後、「2024年春にゾウがやってくる」と発表されましたが、輸出手続きなどに時間がかかっていました。

このゾウたちの到着を誰よりも待ち望んでいる少年がいます。

■吉冨元気さん(中3)
「おばあちゃんやいとこと一緒に、福岡市動物園に行く予定だった。早く来てほしい。」

ゾウのTシャツで現れた、福岡市内に住む中学3年生の吉冨元気さんです。当初、予定されていた2024年春にゾウが来ることを楽しみにしていました。

■元気さん
「ゾウの鼻の動きとかかわいいと思って昔から好きでした。ゾウがいないと寂しい。」

幼い頃は週に1~2回程度、動物園に通っていたという元気さん。ゾウが好きな元気さんには夢があります。

■元気さん
「やっぱりゾウが好きだから、ゾウの飼育員になりたいと思いました。ゾウを常にお世話していて、 危険な動物なのに一緒にいて、よく大丈夫だなと思います。だから憧れて。」

そして30日、およそ7年間ゾウがいなかった福岡市動物園に、ようやくゾウがやってきました。

そのゾウの到着を知った元気さんは。

■元気さん
「驚いている。4頭は初めて見る光景だから。大きくてかっこいい。人間と動物が仲いいなと。」

これから白濱さんたちは、およそ3か月かけてゾウ使いと一緒に、4頭のゾウと信頼関係を築いていきます。

■白濱さん
「やっと入って来られて安心した。長かったが、おそらく市民の皆さんも同じ気持ちでずっと待っていたと思うので。3か月間ゾウと仲良くなって、マフー(ゾウ使い)から教えてもらって、帰ったあと我々だけで飼育できるのが目標。」

時代は移り変わっても、人々の記憶の中に生き続けるゾウ。アジアゾウ4頭の新しい生活が、福岡市動物園で始まりました。