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初代「門司駅」の遺構どうなる 移築の方針にイコモスが「待った」すべて現地で保存すべきとの見解示す 北九州市

2024年2月21日 18:42
初代「門司駅」の遺構どうなる 移築の方針にイコモスが「待った」すべて現地で保存すべきとの見解示す 北九州市
イコモスが北九州市の方針に「待った」

北九州市の公共施設の建設予定地で発掘された、初代「門司駅」の遺構をめぐる動きです。市は一部を移築して保存する考えを示していますが、21日、ユネスコの諮問機関であるイコモスが「この場所で保存すべき」との見解を示しました。

■元木寛人フィールドキャスター
「私の後ろに広がっているのが、今回発掘された初代『門司駅』の鉄道遺構です。これらが一体どんな価値があるのか、今、専門家による視察が行われています。」

21日午後、北九州市門司区で発掘された初代「門司駅」の鉄道遺構を視察したのは、文化遺産の保全活動を行う国際組織イコモスの国内委員会の委員長など5人です。

この遺構は、北九州市がJR門司港駅近くに複合公共施設を建設をするために、去年9月から実施した埋蔵物調査で見つかりました。

建設予定地から発掘されたのは、明治時代に開業した初代門司駅の遺構で、赤レンガが連なる部分は機関車庫の基礎部分と見られています。

公共施設の建設予定地から鉄道遺構が出土したことを受け、1月、北九州市の武内市長は「移築保存」の意向を明らかにしました。

■北九州市・武内市長
「出土した鉄道遺構のうち、土木の歴史を顕著に表す部分を切り出して移築保存をします。できるだけ早い時期に着工し、令和9年度(2027年度)中の供用開始を目指していきたいと考えています。」

武内市長は一部を別の場所に移した上で保存し、計画通りに複合公共施設を建設する考えを示しました。着工を急ぐ背景にあるのが「老朽化」の問題です。

21日、門司区役所を訪ねました。

■元木キャスター
「中に入ると、すぐに階段があります。高齢者にとっては大変かもしれません。そして、見渡すと待合スペースがありますが、それほど広くありません。」

門司区役所はJR門司港駅から徒歩15分の場所にあります。1930年に当時の門司市役所として建築され、国の登録有形文化財となりましたが、すでに90年以上が経過して施設の老朽化が進み、バリアフリーも十分ではありません。

■利用者
「ちょっとやっぱり不便ですね。私がここに来て49年くらいになるけれど、そのまま変わってないもんね。」

老朽化の問題は、ほかの施設にもあります。1958年に建築された門司市民会館は、耐震基準を満たしていません。建築から60年の門司図書館は駐車スペースが狭いなど課題が山積しています。

そこで北九州市は、老朽化が進む8つの公共施設を集約した複合公共施設を、門司港駅そばに建設する計画を進めてきました。

■北九州市 建築都市局・一瀬修志 課長
「それぞれの建物を一つ一つ建て替えるとなると、それだけ初期投資がかかります。集約することで共用部分、廊下やエレベーターなどの数も減るので、コストダウンできる。」

北九州市の方針に待ったをかけたのが、ユネスコの諮問機関であるイコモスの国内委員会です。

■日本イコモス 国内委員会・岡田保良 委員長
「九州の鉄道の原点がここだということで、日本の鉄道の歴史はまさに近代国家形成の足跡でもある。そういったものを感じ取れる場所は全国でもそんなに多くはないと思う。それだけにぜひ残してもらいたいという気がします。」

遺跡の中でも、重要な国の史跡に値すると評価しました。

イコモスは22日、北九州市に対し、一部を移築するのではなく現地ですべて保存することを要望する予定です。

地元の人の反応です。

■門司区民
「歴史とか割と好きだから、鉄道遺構が出たらやっぱり興味があります。(残してほしい人の気持ちも?)わかりますね。不便なこともわかるし、難しいですね。」

■門司区民
「二度と出てこないものだから、それは大事だけれど。『けれど』がつきます。」

北九州市は計画通りに建設を進めるのか、それとも一度立ち止まるのか、鉄道遺構の行方はまだ決まっていません。