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【詳しく】裁判長「女性の証言は信用できない」「捜査機関が無理やり女性の記憶と異なる調書を作成したとは考えられない」男性の証言も「信用できず」 「飯塚事件」再審=裁判のやり直しを認めない決定 福岡地裁

2024年6月5日 10:30
【詳しく】裁判長「女性の証言は信用できない」「捜査機関が無理やり女性の記憶と異なる調書を作成したとは考えられない」男性の証言も「信用できず」 「飯塚事件」再審=裁判のやり直しを認めない決定 福岡地裁
決定「女性の証言は信用できない」
32年前、福岡県飯塚市の女の子2人が殺害された「飯塚事件」をめぐり、すでに刑が執行された元死刑囚の2度目の再審請求審で、福岡地裁は5日、再審=裁判のやり直しを認めない決定を出しました。

新たな証拠として弁護団が示した女性と男性の証言について、裁判長は「信用できない」としました。

飯塚事件は1992年2月、飯塚市の小学1年の女の子2人が誘拐・殺害され、朝倉市の山中に遺棄されたものです。

殺人の罪などに問われた久間三千年(くま・みちとし)元死刑囚は一貫して無実を訴えましたが、刑が確定し、2008年に執行されました。

久間氏の妻は2021年、福岡地裁に2度目の再審請求=裁判のやり直しを申し立て、ことし2月まで審理が続けられてきました。これまでに死刑執行後に再審が認められた例はありません。

第2次再審請求で争点となったのは、福岡県飯塚市の住宅街の三差路で事件当日、女の子2人を最後に目撃したとされた女性の証言です。

女性は「事件があった日に女の子2人を見たのではないのに、その日に見たという供述調書にさせられてしまった」などと、当時の供述内容を否定しました。女性の証言通りなら、久間氏を有罪とした確定判決の根拠が揺らぐことになり、裁判所の判断が注目されていました。

決定で、福岡地裁の鈴嶋晋一裁判長は女性の新たな証言について「警察官調書が作成されたのは事件発生から約10日後で、捜査が流動的な状況にあったにもかかわらず、目撃日時、場所、内容にいたるまで、捜査機関が無理に記憶に反する調書を作成する動機、必要性は見出せない」と指摘しました。

そのうえで当時の調書について「具体性に富む一方で、ほかの証拠と整合しない点や作成時期に応じて記憶の減退が反映されたと見受けられる点も含まれており、捜査機関が供述内容をゆがめて作成したとは考えにくい内容」だとして「捜査機関が無理やり女性の記憶とは異なる調書を作成したとは考えられない」としました。

さらに女性は弁護側の供述録取書でも「合理的な理由なく供述を変遷させている」として「女性の証言は信用できない」としました。

また、事件当日、久間氏の「紺色ワゴン車」とは違う、女の子2人が乗った白い車を目撃したという男性の証言については「女の子2人と被害者が似ていたと判断した根拠を全く示すことができておらず、服装などの目につきやすい特徴については記憶がないと述べ、ランドセルの色の記憶違いをしている一方、面識のない女の子2人の顔をはっきり覚えているという供述自体、不自然な感が否めない」と指摘しました。

さらに「目撃時刻について変遷を重ねていて、年月の経過に伴い記憶があいまいになっていることを自認している」としたうえで「目撃内容自体、被害者の死亡時刻と抵触(矛盾)し、関係各所の位置関係に照らすと犯人の行動としても不自然」として「男性の証言は信用できない」としました。

この決定を受け、弁護団は「新旧の証拠を真摯に検討する姿勢を放棄していて、裁判所としての使命に反するもの」として、即時抗告する方針を示しました。

さらに「このような理不尽な決定がなされた背景事情として、すでに死刑が執行されており、再審開始することが死刑制度の根幹を揺るがしかねないとの思惑があるものと推測せざるを得ない」としました。

一方、福岡地検の細野隆司次席検事は「裁判所が確定審の証拠関係や再審請求審における主張を的確に検討し、適切な判断をされたものと考えている」とするコメントを発表しました。

また、福岡県警は「裁判所の判断についてはコメントを差し控えさせていただきます。改めて被害者のご冥福をお祈りいたします」としています。