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【博多ストーカー殺人】審理が終了 男が法廷で語ったこと 被告人質問の内容を詳しく① 質問が続くと声が小さく そのたび休廷に 

2024年6月24日 20:48
【博多ストーカー殺人】審理が終了 男が法廷で語ったこと 被告人質問の内容を詳しく① 質問が続くと声が小さく そのたび休廷に 
寺内被告

JR博多駅近くで元交際相手の女性をストーカー行為の末、包丁で何度も刺し殺害した罪に問われた男の裁判員裁判は24日、結審しました。28日に判決が言い渡されます。これまでに行われた被告人質問で男が語ったことを、詳しくお伝えします。

殺人とストーカー規制法違反などの罪に問われているのは、住居不定、無職の寺内進被告(32)です。

起訴状などによりますと、寺内被告は2023年1月16日午後6時すぎ、博多駅近くで、勤務先から帰宅中の福岡県那珂川市の当時38歳の会社員の女性を待ち伏せし、胸や背中、頭や首を刃渡りおよそ24センチの包丁で10数か所刺して殺害した罪に問われています。

6月17日午前10時、寺内被告の裁判員裁判は福岡地方裁判所の最も広い法廷で始まりました。

寺内被告は坊主に近い黒い短髪で紺色のジャージーに灰色のデニム姿で、白いマスクをつけていました。伏し目がちで、写真や送検当時とは異なる印象を記者は受けました。

(※4日目の公判で、裁判長に事件当時と今との体調の変化を問われた寺内被告は、逮捕当時と比べて体重が4・5キロ落ちて筋肉がなくなったと話しました。)

冨田敦史裁判長が名前を確認すると「寺内進です、32歳です」住所を尋ねると「百道拘置所」と答えました。

検察が起訴状を読み上げた後、裁判長が起訴の内容について確認すると、寺内被告は「刺したことは間違いないが、待ち伏せしたことは違います」と殺害について認め、恋愛感情や怨恨の感情を充足する目的ではなかったとして“ストーカー”であることは否認しました。

検察と弁護側による冒頭陳述と証拠調べ、検察側の証人尋問のあと、午後3時すぎから1回目の被告人質問が行われました。弁護士の2人が寺内被告に質問しました。

弁護士「出身はどこですか。」

寺内被告「大阪の福島区です。」

弁護士「家族構成は。」

寺内被告「お母さんが1人です。」

弁護側「父親は。」

寺内被告「がんで亡くなりました。」

弁護側「それはいつ頃ですか。」

寺内被告「8年ほど前に。」

弁護側「最終学歴はどうですか。」

寺内被告「中退です。」

弁護側「高校を中退ということでいいですか。」

寺内被告「そうです。」


その後は、建築関係やバーの店員など接客の仕事に就き、大阪や、東京の六本木や歌舞伎町で働いていたと説明しました。


弁護側「九州に来る前はどこで働いていましたか。」

寺内被告「来る前は東京です。」

弁護側「来た理由は?」

寺内被告「コロナで眠らない町が眠るようになったからです。」

弁護側「所属していたところも休業を?」

寺内被告「はい。」


コロナ禍で、鹿児島、宮崎を経て2021年12月から福岡で働き始めたといいます。


弁護側「(福岡では)最初はどこで働いていましたか。」

寺内被告「ダンスバーで接客業とか。」

弁護側「その次はどこで働いていましたか。」

寺内被告「系列のショットバーです。」

弁護側「そこではいつから働いていましたか。」

寺内被告「(2022年)4月からです。」

弁護側「どういう仕事ですか。」

寺内被告「接客業と酒を飲む仕事です。」

弁護側「被害者と会ったのはいつ頃ですか。」

寺内被告「知り合ったのは4月。」

弁護側「知り合ったきっかけは何ですか。」

寺内被告「YouTubeとインスタグラムで見たと言われて、ススだと。ススと呼ばれていたので。」

傷害事件の報復を恐れたと主張

すぐに付き合うことになったといいます。2人でいるときは、テレビを見たり野球観戦をしたり酒を飲んだりしていたと話しました。

弁護側は、女性と交際している時に起きた2022年8月の傷害事件についても質問しました。寺内被告は女性に声をかけた男性を殴り、顔の骨折など全治7か月の重傷を負わせたとして、2024年3月に有罪の判決を受けています。その後、報復を恐れるようになったと主張しました。

弁護側「自宅近辺でどういうことがありましたか。」

寺内被告「家が荒らされていて。バールで割って入ったと聞いたので。」

弁護側「家の中の様子はどんな感じでしたか。」

寺内被告「めちゃくちゃでしたね。」

弁護側「具体的にはどんな感じでしたか。」

寺内被告「ベランダから玄関までガラスの破片が飛び散っていました。」

(※2022年8月20日の出来事だといい、弁護側は裁判初日に防犯カメラの映像や部屋の様子の写真を提示しました。)

弁護側「犯人は誰だと思いましたか。」

寺内被告「傷害事件の本人か友人かのどっちかだろうなとは思いましたね。」

(※警察によりますと、傷害事件の被害者と友人は、この「襲撃」とは無関係であることが分かっています。)

弁護側「自分がリンチされるとは思いませんでしたか。」

寺内被告「はい。」

弁護側「どうなると思った。」

寺内被告「心配になりました。」

寺内被告は襲撃に備え、包丁を2本、黒いトートバッグに常に入れて持ち歩くようになったと説明しました。自宅に戻れず、1か月ほどホテルに寝泊まりしていたといいます。


弁護側「そのころの2人の関係はどうでしたか。」

寺内被告「よかったと思います。」

弁護側「ホテルではどういうことをしていましたか。」

寺内被告「主に酒を飲んだり野球観戦をしたりドラマ見たり、インドアを楽しんでいましたね。」

弁護側「泊まった費用は全部でどれくらいですか。」

寺内被告「28万円ぐらいです。」

弁護側「当時のあなたの手取りはどれくらいですか。」

寺内被告「16万円ぐらいです。」

弁護側「そのことで、生活はどうなりましたか。」

寺内被告「どんどん苦しくなりましたね。お金を借りたりもしました。」


その後、転居しましたが、光熱費が払えず新しい家では電気とガスが止まっていました。このころから、寺内被告と女性は徐々に連絡をとらなくなっていったといいます。

2022年10月21日、女性は初めて、警察に寺内被告のことを相談しました。警察によりますと「携帯電話を取られた。別れたい」という内容でした。

被告人質問ではその日のことに質問が及びました。寺内被告はGPSのアプリで川野さんの居場所を特定し、博多駅で会ったといいます。


弁護側「その日、被害者に会ってどういうことをしたんですか。」

寺内被告「携帯見せてって言いました。」

弁護側「それはなぜですか。」

寺内被告「浮気をしてんやろうがと。」

弁護側「それで、被害者はどうしたんですか。」

寺内被告「携帯を返してって言われて、なんで急に大きな声でと。」

弁護側「その後、携帯はどうしましたか。」

寺内被告「携帯は(自分が)持っていきました。」

「罰金」について相談したかったと主張

女性は平日は会社員として働き、週末だけ飲食店で勤務していました。その店は寺内被告が働くバーの系列店で、従業員同士の恋愛が発覚すると、1人あたり罰金100万円を支払う決まりがあったといいます。


弁護側「交際をやめたいとかは言われていませんか。」

寺内被告「はい。(言われたの意)」

弁護側「被害者との関係はどうなると思いましたか。」

寺内被告「もう終わったなって。」

弁護側「終わったなと思った。」

寺内被告「はい。」

弁護側「同じグループの中で、男女の交際がばれるとどうなるんですか。」

寺内被告「100万円の罰金が科されます。」

弁護側「必ずそうなるんですか。」

寺内被告「はい。」

弁護側「罰金は結局どうなったんですか。」

寺内被告「罰金は払うことになりまして、マスターとママと自分と被害者の4人が100万円と書類を出すことになりました。」

弁護側「対応について、被害者と話したいと思わなかったですか。」

寺内被告「思いましたね。」

弁護側「それは警告が出てからの話?」

寺内被告「はい。」

警察によりますと、寺内被告は事件の2か月ほど前、女性が働く会社や店に押しかけたり職場に電話をかけたりして、2022年11月26日にストーカー規制法に基づき、つきまといを禁じる「禁止命令」を受けました。

寺内被告は、女性の職場に押しかけたのは罰金について相談したかったからだと主張しました。


弁護側「最終的に11月26日に禁止命令を受けた?」

寺内被告「はい。」

弁護側「次に連絡したらどうなると思いましたか。」

寺内被告「捕まると思いました。」

弁護側「連絡は取ろうと思いましたか。」

寺内被告「思いませんでしたよ。」

弁護側「近寄ろうとかは。」

寺内被告「ないっすね。」

弁護側「別れた後も愛情はあったんですか。」

寺内被告「ある部分もあったと思います。」

弁護側「禁止命令の後も、まだその気持ちはありましたか。」

寺内被告「どうなんでしょうね。」

弁護側「例えば、ストーカーだと言われたことに対してはどんな気持ちでしたか。」

寺内被告「ショックでしたね。」

弁護側「憎たらしい気持ちはありましたか。」

寺内被告「あったと思います。」

この日の被告人質問は1時間近く行われ、寺内被告が疲れているという理由で途中で15分間、休廷しました。

翌日以降も寺内被告は質問が続くと声が小さくなったり「分からない」「覚えていない」というあいまいな答えを繰り返したりしました。

そのたびに裁判長は休廷を挟みました。(次回に続きます)