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【カスタマーハラスメント】客からの過剰要求や理不尽なクレーム<現状>と<背景> 従業員守るため対策とる企業・団体増える(宮城)

2024年6月19日 10:46
【カスタマーハラスメント】客からの過剰要求や理不尽なクレーム<現状>と<背景> 従業員守るため対策とる企業・団体増える(宮城)

客からの過剰な要求や理不尽なクレームなどとった「カスハラ=カスタマーハラスメント」について従業員を守るための対策をとる企業や団体が増えている。

宮城県内の企業・団体の対策の現状と、カスハラが起きる背景を取材した。

街の人
「こちらでミスしたことがあって、それに対して烈火のごとく怒られた。土下座を強要された。上司を読んで対応してもらった。罵倒されると恐怖を覚える」
「茹でタコのようになって沸騰している方がいて、とても問題を抱えていてそれを自分にあててきた」
「大手の牛丼チェーンに行ったときに、深夜だったんですけれど、料理の提供が遅れて怒鳴っている方がいて、雰囲気悪くなってほかのお客さんも何も言えず黙り込んだ」

『UAゼンセン』が制作した提供動画
「いったいどうなってんだこの店は!」

客による理不尽なクレームや過剰な要求などを示す「カスハラ=カスタマーハラスメント」。

この動画は、飲食・ホテルなどサービス業が加盟する労働組合『UAゼンセン』がカスハラの啓発として制作したもの。

『UAゼンセン』が行った直近2年間のカスハラ被害について、アンケートでは46.8%およそ半数近くの人が被害にあったと答えた。

東北工業大学で社会情報学が専門の亀井あかね准教授は、カスタマーハラスメントを行う人の心理について次のように説明する。

東北工業大学・亀井あかね准教授(社会情報学)
「カスハラの加害者の傾向としては、社会に対して不満を抱えていたり、ゆがんだ自己主張をしたり、承認欲求が強い、なんらかのことに固執する傾向が強いカスタマーハラスメントの加害者の種類としては、大きく分けて①筋論型②、②ストレス発散型、③ストーカー型がある」

カスタマーハラスメントの加害者のタイプとしては・悪い部分を指摘して直してあげようという「筋論型」と、弱い立場の人に怒りをぶつける「ストレス発散型」が多くを占める。
中には、接客のサービスの中で好意を持たれたと勘違いする「ストーカー型」のカスハラ被害も報告されているという。

今、企業や自治体でもカスハラ被害への対策が進められている。

富谷市(宮城県)では、6月から迷惑行為を防ぐため職員の名札を名字だけに変更した。

名取市(宮城県)でも、4月から同様の対応をとっている。

JRグループのホテルでも、これまでにカスタマーハラスメント被害は少なからず起きていたという。

ホテルメトロポリタン仙台・宿泊統括支配人 門倉健彦さん
「こちらが案内をミスしてお客様に迷惑をかけてお詫びはするものの、お客さんが納得されず本人を呼べとか本人に謝罪させろとか…」

JR東日本では、カスタマーハラスメントが行われた場合は「お客様への対応をしない」ことをグループ全体の方針として、5月発表した。

ホテルメトロポリタン仙台・宿泊統括支配人 門倉健彦さん
「1人で対応しない、必ず2人で対応する。過剰な要求があったり大きな声を出すことがあれば、すぐに駅前の交番と連携をとって警察を呼んで対応する」

毅然とした対応をとる企業も増えているものの、カスハラ被害には日本の企業に根付くある文化がある。

東北工業大学・亀井あかね准教授(社会情報学)
「顧客第一主義の姿勢というのは、あくまでも消費者目線での商品サービスを提供することであって、お客様は神様ですということではない。企業は、消費者とともにサービスを提供するものと利用者の間には等価交換の対等な関係があるという意識を再認識する必要がある」

一方、カスタマーハラスメントの線引きが難しい業界もある。

子ども「いただきます!」

石巻市(宮城)のさくらこども園では、数年前子どもへの対応を巡って保護者と大きなトラブルがあった。

さくらこども園・木村いづみ園長
「子どもがどうしても着替えなくて、先生たちもあとで着替えたいというから手伝うねと洋服を引っ張ったことが引っ張りまわしたとなり、虐待じゃないかという話になり、お父さんが園の中で大声をあげて暴れる形になり、保育士たちが(ショックを受けて)車も運転できなくなり帰ることもできなくてご飯も1週間食べられなくて、(園の)お部屋に入れない」

こども園では、防犯カメラの映像などから虐待の事実はなかったことが確認されたものの、保育士が大きな精神的ダメージを負った。

その後弁護士と相談し、こども園としてカスタマーハラスメントがあった場合は、他の施設に移ってもらうこともありうるという方針をホームページに掲載している。

子どもを思う保護者の気持ちと、人材不足の中で保育士を守らなければいけないという板挟みの状況だ。

さくらこども園・木村いづみ園長
「保護者支援を考えると、カスハラとしていいのかという線引きが難しい」

企業・団体が顧客へのサービスを競い合い、高めあうことが必要とされる一方、カスタマーハラスメントを生まないための業界内の取り組みも検討する時期となっている。

東北工業大学・亀井あかね准教授(社会情報学)
「企業間で情報共有をして標準化していくことがよいのでは。あそこの企業ではこういう対応したのにここではなんでこうなんだとなる。法整備には時間がかかると思うので、その間どう乗り切っていくか。業界内でサービスレベルの標準化をしていくのも一つの考え方」