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【特集】もらい手がない「負動産」 タダでも譲りたい負の“不動産”とは 県内では「空き家率」が過去最多に 《新潟》  

2024年5月19日 19:00
【特集】もらい手がない「負動産」 タダでも譲りたい負の“不動産”とは 県内では「空き家率」が過去最多に 《新潟》  

親から相続した家や土地を売ろうにも値段がつかない。
それでも毎年かかる維持費。
いま負の不動産「負動産」に頭を悩ませる人が増えています。
そうしたなか、タダでもいいから不動産を譲りたい人と欲しい人を結びつけるサービスも広がっています。

■売主にとってマイナスでも

柏崎市の街中から車で20分ほど。
空き家となっている一軒家を購入しようと内見に訪れている人がいました。

この家は柏崎市に住む女性が父親の死後、相続したものだといいます。
しかし、住むこともないため売りに出しました。
その値段は……

<群馬県から内見に来た人>
「30万円で。DIYが好きで、自分で手直ししてみたいと前々から思ってまして、半分は趣味で」

30万円のうち取り引きに関する手数料を除けば売主が受け取る金額は土地と建物あわせて10万円。
さらに名義変更などを専門家に依頼するため売主にとってはマイナスだといいます。
それでも売りたい理由は……。

■負の不動産……「負動産」

「この所有者の方が地元の不動産屋さんに相談しても断られたらしいんですね」

そう話すのは柏崎市で不動産業を営む中村美也子さん。
扱うのはこうした不動産会社から売買を断れた物件です。

〈SHOPナカムラ 中村美也子さん〉
「解体費用を考えたら1日も早く建物付きで売りに出していただいてあと0円で譲渡しちゃおうとか」

立地や建物の状態などで買い手が見つからないため不動産会社から断られる。
それでも固定資産税などの維持費はかかる。
そんな不動産はいま、負の不動産、「負動産」と呼ばれています。

■県内の「空き家率」は過去最多

国の調査によると去年10月1日時点で全国にある空き家は900万戸に上ります

このうち県内の空き家は15万5700戸。
1998年の調査結果では7万6000戸……およそ2倍に増えています。

県内の住宅で空き家が占める割合「空き家率」は過去最多の15.3%。7軒に1軒が空き家という計算になります。


まちで「空き家」について聞いてみると……。

Q近所に空き家はありますか?
〈まちの人〉
「ありますね、何軒か。ネズミとか出たり虫も増えたりしたら近寄るのはやめようかなという感じになります」

〈まちの人〉
「私いま一人住まいでしょ、私が病気になったりすれば空き家になります。息子にくれるって言ったらいらないと言っていました」

■自身の経験から「困っているの力に」

柏崎市にある「SHOPナカムラ」
空き家の家財道具の処分やインターネットオークションの出品代行なども行っています。
中村さんが不動産業を始めたきっかけは自分の経験からでした。

〈SHOPナカムラ 中村美也子さん〉
「売れない、いらない不動産を持っていたんですよ。インターネットで不動産屋さんを知らべて全部電話して聞いたんですよ。ここの土地を手放したいんですけどって言って全部断られたんですよ。そんな断られることがあるんだって初めて知りまして」

不動産を手放す過程で宅地建物取引士の資格を取得。
同じように不動産を手放せずに困っている人の力になろうとこの仕事を始めました。

手間がかかる不動産の売買……。

■区画が複数にまたがる土地も

例えばこちらの住宅……登記を調べると区画は1つではなく複数にまたがっていることが分かります。

〈SHOPナカムラ 中村美也子さん〉
「10番は元は道があったんですけど、今は道ではない。8番も三角形。9番は変形地アンド農地」

このままでは売り渡せないため区画をひとつにまとめる費用や手間が発生します。

〈SHOPナカムラ 中村美也子さん〉
「地方の土地ってこんなに面倒くさいんだなって分かって、それだったら私の経験もあるし資格も取れたのでそれで不動産業を始めて一緒に課題解決とか誰かに渡すためのことをやっていきましょうと」

■マッチングするサイトも

何年間も不動産を手放せず、困っていた時に中村さんが辿り着いたサイトがあります。
それが「みんなの0円物件」

空き家や土地をタダでも譲りたい人と欲しい人をマッチングするサイトです。
これまでに1100件が掲載され、8割にあたる880件の譲渡に成功したということです。

■「壊すか譲るかしかない」

柏崎市に住む大塚高英さんも「みんなの0円物件」に掲載しているひとりです。

〈大塚高英さん〉
「4年前まで住んでたんだけど」
以前住んでいた住宅兼事業所を「みんなの0円物件」に掲載しました。

〈大塚高英さん〉
「去年いっぱいで定年になったから終活みたいなものなんだよね。子どもも継がないしここに住むつもりがないみたいだから。そういうことになれば壊すか譲るかしかないわけだから」

およそ80坪に5LDKの建物。
子どもは独立し家を引き継ぐ意思もなかったため解体も考えましたが、費用は200万円以上。
それならばタダでももらってほしいと「みんなの0円物件」に掲載したところ何人か興味を示した人がいたといいます。

〈大塚高英さん〉
「あんまり手のかからない面倒くさくない方法で譲受人が出てくれば一番いいかな」

■いざとなってからでは手遅れ

柏崎市で不動産業を営む中村さんです。

いまは「みんなの0円物件」のサポーターとして県内から相談が寄せられた物件の調査なども行っています。

全国で増え続ける「負動産」。
中村さんは親が健在なうちに専門家のサポートのもと持っている不動産について話し合うことが大切だと話します。

〈SHOPナカムラ 中村美也子さん〉
「相続した私たちが不動産のことを何も知らないで預からなきゃいけないんですよ。いざとなってからだと手遅れなことが生まれる可能性があるんですよね。少しでも課題が見えるようにするには専門家のサポートは必要だと思います」


大切な資産を負動産にしないために。
いまからできることを準備しておくことが大切です。