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【斎藤知事パワハラ疑惑】2人の死亡者出る中…新たな火種も「公益通報と認識せず」告発直後に調査指示&パレード補助金に副知事が「増額」指示も…混沌とする兵庫県政

2024年8月12日 9:00
【斎藤知事パワハラ疑惑】2人の死亡者出る中…新たな火種も「公益通報と認識せず」告発直後に調査指示&パレード補助金に副知事が「増額」指示も…混沌とする兵庫県政

 元幹部職員によるパワハラや物品受領などの疑惑の告発から約5か月。告発者だけでなく、疑惑の1つとなっている「阪神・オリックス優勝パレード」をめぐり、担当していた元課長についても亡くなっていたことが明らかになりました。自身の責任を問われても、あくまで「県政を前に進めることが責務」と繰り返す斎藤元彦・兵庫県知事。一方で、疑惑に関する新事実が次々と明らかになり、新たな火種がくずぶっています。

■死亡の“優勝パレード”元課長の友人語る「絶対に不正に手を染めるような人間ではない」

「絶対に不正に手を染めるような人間ではない。この先、もし疑惑の濡れ衣を着せられる事態になったら、絶対に許せない」

 死亡した元課長の友人は、読売テレビの取材に憤りを隠さず、語気を強めました。

 この元課長が担当していたのは、2023年11月に行われた「阪神・オリックスの優勝パレード」です。元幹部職員が告発した7項目の疑惑の中には、パレードをめぐって、県内の金融機関に補助金を増額する見返りに、パレードの開催資金を寄付するよう働きかける“資金の還流疑惑”が指摘されていました。

 告発した文書では、元課長について、業務で疲弊し「病気休暇中」と記載されていましたが、4月に死亡していたことが、約3か月経過した7月25日になって公表されました。元課長は自殺とみられていて、斎藤知事は公表に時間がかかった理由について「ご家族の意向」と説明しました。

■パレード疑惑に新事実『副知事が増額“指示”し補助金3億円上乗せ』

 神戸市内を両チームがバスに乗って行われた優勝パレードにかかった運営費は5億円余り。県は当初、全額を「寄付」で賄うとしていましたが、パレードの2週間前まで総額の1割程度しか集まらず、資金集めに苦労していました。ところが、その後の約2週間で4億円余りの寄付が集まったことが判明しています。

 元幹部職員が告発で指摘したのが、先述の“資金の還流疑惑”です。具体的には、県はコロナ禍の支援のために、中小企業に対して無利子・無担保で貸しけを行うように地元の金融機関に働きかけ、貸付先の企業の数に応じて金融機関に対して補助金を支給。その補助金を増額する代わりに、パレードの開催資金を金融機関に寄付をさせたのではないか、というものでした。

 読売テレビの情報公開請求により県が開示した資料によれば、2023年12月に組まれた補正予算では当初、各金融機関が抱える融資先のうち「これまで支援されてこなかった企業の数」のみを計算し、総額1億円の予算が提案され、知事が一旦、承諾したとされています。

 しかしその後、斎藤知事の片腕だった片山安孝副知事(当時)が「すでに支援した企業」についてもカウントの対象に入れるなどの変更を指示。企業数は1000社から4000社へと約4倍に増え、金融機関への補助金の総額は4億円に跳ね上がりました。

 補助金との因果関係は明らかになってはいませんが、片山副知事が補助金の増額に関する指示を出した翌日以降、県内にある11の信用金庫が続々とパレードの開催資金を寄付しています。

 一方、斎藤知事は8月7日の会見で、疑惑について「前年までの補助額から大幅に減額するのは好ましくなく、事業をソフトランディングさせるための判断で、適切に処理した」と反論していますが、一連の流れを把握している可能性がある元課長は命を落とし、真相解明に暗い影を落としています。

■死亡した元幹部 斎藤知事は「公益通報保護の対象外」と認識

 告発した元幹部職員が死亡するという最悪の結果を招いたことについて、会見で報道各社からは斎藤知事に対し、元局長を「公益通報保護の対象」とすべきではなかったかとの指摘が飛び交いました。

 これに対し、斎藤知事は7日の会見で時系列をまとめたフリップを使って改めて経緯を説明しました。

 その中で知事は、「ウソ八百」「公務員として失格」などと発言した3月27日の2日前、人事課が行った事情聴取で、元幹部職員自身が「告発文の内容はウソ話をまとめた」と供述したことを強調。告発文の内容についても、公益通報者保護法が定める「単なる憶測や伝聞等ではなく、通報内容が真実であることを裏付ける証拠や関係者による真実性の高い供述など、相当の根拠が必要」という保護要件に照らして、元局長を保護する必要はないと判断したと説明しました。

 一方、元幹部職員が3月27日の知事の発言を受け、4月1日に発表した反論文書では、「私と人事当局とのやり取りは、(中略)26日に電話で『告発文は自分で作成した。他に関係者はいない』と話したのみ」と記しています。

 果たして、斎藤知事の発言や判断の根拠とした“3月25日の事情聴取”は本当に実施されていたのかどうか―。斎藤知事は「人事課から説明を受けた」としていますが、元局長が亡くなり、本人に直接確認ができなくなったことで、『新たな火種』になる可能性があります。

■疑惑追及の百条委員会 30日には知事が出頭・証人尋問

 一連の疑惑をめぐって、繰り返し自身の進退を問われるたび、「多くの県民の負託を受けている」「県職員との信頼関係を再構築し、県政を立て直すことが責務」などと、ほぼ同じ回答を繰り返す斎藤知事。

 疑惑を調査する『百条委員会』は、 地方自治法100条に基づいて設置される特別委員会で、正当の理由がないのに、出頭しなかったり証言を拒んだりした場合は禁錮や罰金、虚偽の証言をした場合も拘禁刑や罰金が科されるなど、調査に対して非常に強い権限が付されています。

 百条委員会は、パワハラ疑惑などに関して約9700人の県庁職員を対象としたアンケートを7月31日から実施。開始からわずか2日で3500人以上から回答があったということです。

 さらに8月23日からは職員への証人尋問が始まり、30日に斎藤知事本人への尋問が予定されています。

「百条委員会を通じて、しっかり対応していく」と語る斎藤知事。知事の口から何が語られるのか、本当に疑惑の真相解明につながるのかを県民は注視しています。

※8月11日(日)に、前編「相次ぐ“辞職勧告”維新までも…“四面楚歌”に留まらず“八面楚歌”の様相」を配信しています。