「名乗り出て」財務省のセクハラ疑惑対応
財務省の福田事務次官による女性記者へのセクハラ発言をめぐる問題、福田事務次官がセクハラ疑惑を否定する中、財務省は、被害者に名乗り出るよう求め、波紋が広がっている。財務省の対応は、本当に疑惑の解明につながるのだろうか。
財務省がセクハラ疑惑に揺れている。
16日にセクハラ疑惑を否定した財務省の福田事務次官だが、17日朝は沈黙を貫いた。
記者「ご自身の説明が曖昧なまま、女性に(協力を)求めるのはアンフェアでは?」
財務省・福田事務次官「…」
記者「自分の声は分からないのでしょうか?」
財務省・福田事務次官「…」
一方、財務省が16日に被害者は名乗り出るよう求めたことをめぐり、波紋が広がっている。
財務省の対応を疑問視する声は閣内からもあがっている。
野田総務相「違和感があります」
この疑惑が報じられてもうすぐ1週間になろうとしているが、混迷の度合いが深まっているようにも感じる。
セクハラ疑惑のきっかけとなった週刊誌報道の音声データを改めて聞いてみる。
福田次官とみられる男性「今日ね…今日ね…“抱きしめていい?”手を縛ってあげる。胸触っていい?おっぱい触ってもよい?」
こうした音声が公開されて、福田次官が記者にセクハラをしたのではないかと言われているわけだが、焦点は大きく2つ。
一つ目は、「録音されたものが福田次官の声なのかどうなのか」ということ。
福田次官は財務省の調査に対し、「自分の声かは分からない」としていて、17日朝も記者からの質問に一切こたえていない。
この点について麻生財務相は17日朝、音声は福田次官の声だとの認識を示した。
麻生財務相「俺は聞いて、福田かなという感じがしました、俺はね」
この点については、財務省幹部の中からも、「周りは、どう聞いても次官の声だから認めたほうがいいと説得したんだけど、応じない」という声が聞かれる。
もう一つの焦点は「会話の相手は記者なのか」ということ。
福田次官は、音声は「にぎやかな店のようであるが、そのような店で女性記者と会食した覚えもない」と完全否定。
一方で、「お店の女性と言葉遊びを楽しむようなことはある」と、音声の相手は記者じゃなくて飲食店の女性従業員だとにおわせているともとれる発言をしている。
飲食店での会話の相手が記者なのかどうかということだが、記者は男女問わず、取材先と飲食店で取材することもある。
財務省は16日、記者クラブに対して「当該女性に名乗り出て」「弁護士に委託、調査を要請」と記したペーパーを出した。
この調査方法について、麻生財務相は17日朝、こう話した。
麻生財務相「私どもとしては少なくとも、第三者の弁護士を入れて、その弁護士も女性を入れて、言われやすい状況にしてあって、本人が言ってこない、本人が申し出て来なければ、どうしようもないですね」
つまり、麻生財務相は、「記者本人のヒアリングが必要」で、さらに「調査は『第三者』が行う」としているが、ハラスメント問題に詳しい高橋和典弁護士は、「被害者本人から話を聞くのは自然のこと」としたうえで、捜査手法には2つの疑問を呈している。
一つ目は、本人が名乗り出なければ、「これ以上調査できない」と財務省は言い逃れができること。
そして、2つ目は、この第三者は財務省が委託している弁護士事務所の「お抱え弁護士」で客観性にかけること。
また、高橋弁護士は「やり方としては巧妙であり、ハラスメントをうけた人には苦痛だろう」と指摘している。
セクハラをうけたと感じている人にとっては、その被害を話すことも負担で、財務省の調査のやり方については、野田総務相も異議を唱えている。
野田総務相「違和感があります。(被害者が)加害者側の関係者に話をしにいくというのは、普通ではやっぱり、できないのではないかと。被害者の立場に立てば、高いハードルであるということをぜひ財務省の方にもご理解いただきたい」
女性記者はどうしたらよいのか、高橋弁護士は「女性記者も弁護士をつけて、不利益にならないよう環境を整えたうえで、財務省側の代理人と話をする形をつくる方がいい」と話していた。
今後どういう流れで事実解明が進むかは分からないが、財務省のある幹部からは、「『もしあれが“女性記者へのセクハラだ”という証拠が出てきてしまったら、財務省ごと倒れる』とみんな心配している」との声も聞かれる。
日本のエリート省庁である財務省が、国民の感覚とズレていないのか、どっちを向いて、今後どんな対応をするのか。国民みんながみている。