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福田事務次官“セクハラ”辞任 真相は…

2018年4月19日 20:10
福田事務次官“セクハラ”辞任 真相は…

18日に辞任すると発表した財務省の福田事務次官。その5時間後、テレビ朝日が緊急会見を開いた。

テレビ朝日・篠塚浩報道局長「当社社員に対するセクハラ行為があったことは事実であると考えております」

しかし、福田次官は-。

財務省・福田事務次官「テレ朝がどういう調査されたか知らんけど、全体としてみるとそういうこと(セクハラ発言)ではない」

テレビ朝日の会見を受けて、福田財務次官がセクハラ疑惑をあらためて否定した。麻生財務相の辞任を求める声もあがっているこの問題。真相はいったいなんなのか。このあとどうなるのか。

■女性社員が週刊誌に情報を提供した経緯

このセクハラ疑惑は18日から19日にかけて大きく動いた。テレビ朝日の会見では、女性社員が週刊誌に情報を提供した経緯が説明された。

・女性社員は福田次官から受けたセクハラ発言を身を守るために録音した。

・「セクハラの事実を報じるべきではないか」と上司に相談。

・上司は二次被害が心配されることなどを理由に「報道は難しい」と伝えた。

・そのため、女性社員は週刊新潮に連絡し録音した音声を提供した。

経緯を説明したうえでテレビ朝日は会見で謝罪した。

テレビ朝日・篠塚浩報道局長「セクハラの情報があったにもかかわらず、適切な対応ができなかったことに関しては深く反省しています」

■テレビ朝日の会見のポイントは

会見のポイントを整理すると、テレビ朝日はセクハラ行為があったのは事実で、福田次官による女性社員を傷つける数々の行為とその後の対応について財務省に抗議するといっている。

一方で、女性社員から“福田次官のセクハラ発言を報道すべきではないか”と相談があったにもかかわらず、対応は不適切だったとしている。さらに、会見では女性社員が取材活動で得た情報を第三者である週刊誌に渡したことは、報道機関として不適切な行為で遺憾であるともいっている。

■不適切な行為なのに、女性社員はなぜそこまでしたのか

テレビ朝日の説明によると、1年半ほど前から数回、取材目的で福田次官と会食し、そのたびにセクハラ発言があったという。今月4日にも福田次官から連絡を受けて、取材のために1対1で飲食をし、その時にもセクハラ発言が多かったので途中から録音した。社会的に責任が重い立場にある人物による不適切な行為が表に出なければ、セクハラ被害が黙認され続けてしまうという強い思いがあったという。

本来、取材において相手に無断で録音するというのは信義にもとる行為だが、テレビ朝日によると、セクハラ発言が多数あったことから女性社員は途中から録音したという。

■これまで何度もセクハラを受けていたにもかかわらず、次官に呼び出されたら応じるものなのか

そういうことはあると思う。記者の一般論として、記者にはそれぞれ自分の担当がある。例えば、財務省担当であれば、森友問題をはじめ、財務省が連日トップニュースになり取材合戦が過熱する中で、全ての情報が集まる事務次官から直接話を聞けるチャンスがあれば、男性、女性を問わず記者として駆けつけるのは決して珍しいことではない。

とはいえ、女性社員にも記者として落ち度はある。この第三者に情報を提供したこと、報道機関にいる人間としての大原則をやぶったことになる。このことについては女性社員本人も反省している。一方の福田次官はというと、辞任発表から一夜明けてこう話していた。

財務省・福田事務次官「一部しかとってないでしょ。つまり向こうがお話しになってるところをとってないので、全体を見てくれと前から申し上げているのっていうのはそういう意味です。全体を申し上げればそういうもの(セクハラ発言)に該当しないとわかるはず」

セクハラには該当しないと否定しているものの、女性社員とのやりとりがあったことを暗に認めた形になっている。そのうえで辞任を決めたのは「こういう状況で仕事にならないから」だと話していた。

■福田事務次官は18日に辞任を発表したが、まだ財務省に登庁しているのか

閣議での承認が必要なため、正式にはまだ辞任していない。事務次官は自分の意思で簡単に辞められるような役職ではない、それだけ重い立場だということ。福田次官が辞任を決断したことでケリをつけたようにもみえるが、野党からは政権への批判が相次いでいる。

希望の党・泉国対委員長「歴代最低の財務省の状態ではないか」

立憲民主党・辻元国対委員長「麻生大臣の辞任はもう不可避じゃないですか」

野党からは、調査手法に問題があるのではという声、さらに福田次官をかばい続けてきた麻生財務相の辞任を求める声、つまり次官の辞任で終わるだけでなく、財務省としての責任を追及する声が上がっている。

一方、財務省の内部からも、「財務省はセクハラの感覚がずれていることを認識しないといけない」「次官がセクハラで辞めるなんて前代未聞」「麻生さんが辞めるか辞めないかは安倍さんの判断でしょ」といった声が上がっている。

今回、問題となったやりとりがセクハラに当たるのかどうか、福田次官と女性側の認識は真っ向から対立したまま。女性に対して多少、性的な発言をしてもそれは“社会の潤滑油”などと許されてきた時代は過去のものとなっている。

次官の辞任で幕引きにするのではなく、こうした時代の変化を敏感に受け止めて、財務省はしっかりした調査を続け事実関係を明らかにしてほしいと思う。