×

【政治解説】世論調査“トップ”の小泉氏…党員調査では“3位”ナゼ? 支持離れ…背景に「選択的夫婦別姓」 か

2024年9月18日 5:51
【政治解説】世論調査“トップ”の小泉氏…党員調査では“3位”ナゼ? 支持離れ…背景に「選択的夫婦別姓」  か
9人が立候補した自民党総裁選(9月27日投開票)。NNNと読売新聞が行った最新の世論調査で、「次の自民党の総裁にだれがふさわしいか」を聞いたところ、“自民党支持層”の回答で首位は小泉元環境相でした。

ところが、日本テレビが独自に行った“自民党の党員・党友”を対象にした調査で、「総裁選挙で誰に投票するか」を尋ねたところ、小泉氏は3位、1位は石破元幹事長という結果に。なぜこの違いは生まれたのか──。日本テレビ政治部の竹内真デスクと菅原薫解説委員が徹底解説します。

「党員」の支持と「党員ではないけど自民党を支持する人たち」の支持

【竹内】
自民党の総裁選挙も始まる中で、今月の世論調査では「誰が総裁にふさわしいか」を尋ねたところ、回答者全体で1位は石破元幹事長で27%、2位は小泉元環境相で21%、3位は高市経済安保相で13%でした。これを自民党の支持層だけに限ってみると、1位は逆転して小泉氏(24%)、2位は石破氏(23%)となっていました。

【菅原】
日本テレビが独自に行った自民党員・党友を対象にした調査(※9月12日実施)では、1位は石破氏、2位は高市氏、3位は小泉氏でした。「党員」の支持と、「党員ではないけど自民党を支持する人たち」の支持が違うということなのでしょうか?

党員の“小泉氏離れ” 原因は「選択的夫婦別姓?」

【竹内】
そうなんです。これはなぜなのかと思い、自民党でキャリアの長い関係者に聞いてみたんです。その人が言うには、「自民党員は一般に比べて男性比率が高い。しかも年齢層が高い人が多い。なので、男性、かつ高齢層の支持が高い、石破さんが高くなるのではないか」

【菅原】
自民党員の高齢男性というと、強固な保守層もいると思います。高市氏が小泉氏を党員調査で上回ったのも、そのあたりに理由があるのでしょうか。

【竹内】
多分そうだと思います。前述の自民党関係者も、「やはり自民党員は保守的な人が多い。そうなるとハッキリ保守的な主張をしている高市さんに支持が集まりやすい背景がある」と話していました。

党員調査の反応について取材していると、結構な数の国会議員が「選択的夫婦別姓」について、指摘していました。ある議員は「選択的夫婦別姓は保守層は反対が多い」「保守層の多い党員にとっては小泉氏が選択的夫婦別姓に賛成という印象が強く出たので、支持が離れた」と解説していました。

【菅原】
高市氏は選択的夫婦別姓に慎重な立場だから、党員の支持を集めたということなのかもしれませんね。こうなってくると、どの調査をとってみても、石破氏・高市氏・小泉氏の名前が出ている。この3氏を軸に、決選投票がどういう組み合わせになるかという流れですかね。

【竹内】
決選投票は避けられないんじゃないかという感じになってきましたね。党員調査や国会議員への取材を見ても、候補者が9人もいるから当たり前ですが、どうしたって(支持が)分散しています。「1人の候補が、1回目の投票から過半数をとる」ということはないだろうから、決選投票はまず間違いないとみられます。

ポイントは2人の大物議員…麻生氏と菅氏

【菅原】
ただ、この3人のうち、1位と2位が誰になるかによって、組み合わせによっても戦略が変わってくると思います。どんなところがポイント?

【竹内】
色々ポイントは考えられます。派閥の解消が打ち出されて、旧岸田派や旧森山派などは解消して、それから初めての総裁選挙。ただ私は、大きいポイントの1つは“2人の大物議員”だと思います。麻生元首相と菅前首相です。

陣営ごとに見ていくと、上川外相は旧岸田派ですが、この陣営は、推薦人20人のうち9人が麻生派の議員でした。となると、麻生さん本人の影響力は受けていると思う。そうすると、麻生さんとの関係が良くないといわれる石破氏本人、菅さんが後見人とされている小泉氏。上川陣営の麻生派議員たちが決選投票で応援につくのは、難しいのでは…と考えてしまいますよね。

【菅原】
まさに人間関係ですよね。

【竹内】
旧岸田派の林官房長官も、陣営には旧岸田派の人が多い。そうすると、“岸田さんと菅さんは関係がよくない”なんて言われていますから、林氏の陣営についている人たちが、(決選投票で)小泉氏のところに全部行くかと言うと、ちょっと難しいとみられています。

「どちらが正しい」「どちらが良い」ではなく…

【菅原】
河野デジタル相は前回の総裁選で菅さんにも応援してもらっていたし、小泉氏とも“小石河”で連携していました。ただ、今回は麻生さんの“お墨付き”を得て出馬したことを考えると、決選投票で、小泉氏には付きにくくなってくるんでしょうか?

【竹内】
そういう見方があるんです。前回は河野氏を応援した菅さんが、今回は支持しなかったことについて、派閥を離脱しなかったなど、河野氏自身にも理由がありそうですが、中には「そもそも麻生さんの存在があるから、菅さんの河野氏支援は難しかった」という声もあるんですね。

【菅原】
これまでの人付き合いが関係してくるとは言いつつも…。東京地検特捜部の元部長だった河上和雄さんの「好き嫌いで決めろ」という本があります。永田町はまさにそんな感じですよね。

【竹内】
案外「どちらが正しい」「どちらが良いか」よりも、「あの人が好き」「あの人が嫌い」で決まっていることはありますもんね。菅さんのことで考えると、逆に菅さんと関係が良いとされるのが茂木幹事長。そして、菅内閣のメンバーだった加藤勝信さん。こういう陣営は、菅さんが後見人の小泉氏を決選投票で支持することも「あり得るのでは」というわけです。

【菅原】
「派閥はなくなった」とは言っていますが、人間関係は残るわけだから、大物議員の影響も残るわけですよね。

【竹内】
よしあしは別として、麻生さんや菅さんも選挙の応援に行ったり、陳情の相談に乗ったりとか、面倒を見るというようなことはしてきています。これは特別なことじゃなくて、社会でだって、「お世話になった先輩に頼まれ事をしたら断りにくい」みたいなことはありますよね。

ただ、その先輩、永田町で言えば“大物議員”たちの考え方に同調して賛成しているのであればいいと思うんです。けれど、本当は全然違うことを考えているのに、義理・人情じゃないけど、「不本意だけど、先輩に言われたらこうしなくちゃいけない」みたいなのがあるとすれば、どうかと思います。「上の人に言われたから、こういう風にした」ではなく、「自分の考え」で選んで欲しいです。

【菅原】
一国を背負う総理を決めるわけです。自分を選んでくれた有権者を感じながら判断してほしいですよね。

【竹内】
本当にその通りです。この総裁選挙は、派閥の影響力が弱まっているからこそ、議員自身の考えで投票して欲しいと思います。

立憲代表選は野田氏が32% 前回からポイント伸ばす

【竹内】
一方、立憲民主党の代表選です。今回の世論調査で、立憲民主党の代表についても、誰がふさわしいかを聞いています。

1位は前回(8月)の調査と一緒で、野田元首相。32%の支持を集めていて、前回と(候補者の)選択肢が違うので、単純比較はできませんが7ポイント伸びています。2位は枝野前代表で14%、3位は吉田衆院議員で9%、4位が泉代表で8%でした。

【菅原】
調査の開き方やトレンドを見ても、野田氏が優勢なんでしょうか。

【竹内】
ただ、立憲民主党はリベラルな主張の議員が多いので、そうするとリベラルな主張をする枝野氏がまだまだ伸びてくるのではないかという見方もあります。

“推薦人”だけど“投票する先”は別?

【竹内】
立憲でいただけないなと思ったのは、たとえば吉田氏の推薦人になった玄葉元外相ですが、まだ投票になっていないのに“私は野田さんを支持する”と表明してしまった。また、泉氏の推薦人集めに取り組んだと明かした逢坂代表代行も、“支持するのは枝野氏”と明らかにしてしまいました。

推薦人は基本的に“この人が一番いいと思う”と推薦するのに…。「代表選挙に出すために推薦人にはなるけど、本当に良いと思っているのは別の人だ」と言っているように感じてしまうわけですよ。

【菅原】
“盛り上げたいから何人か出そうよ”というのもありますけど…。自分の推薦している先と、実際に票を投じる先が違うというのは、やめて欲しいと思っちゃいますね。

【竹内】
自民党の総裁選挙も、立憲民主党の代表選挙も、それぞれトップを選ぶ大事な選挙ですし、自民党の場合には、その先、総理大臣になる人を選ぶ選挙です。自分自身の考えを大事にして、国会議員・政治家の自分の判断というもので、選んでほしいと思います。

(日本テレビ政治部デスク 竹内真 解説委員 菅原薫)

■NNN・読売新聞世論調査
(9月13日から15日 全国有権者に電話調査)
 固定電話 408人 回答率55%
 携帯電話 632人 回答率38%
 合計1040人が回答

最終更新日:2024年9月18日 5:51