「共同親権」法改正で親子は本当に会えるようになるのか?両親の離婚を経験した“子ども当事者”が思いを語る、「片親に会えず、理解にひどく苦しんだ」
2024年5月17日の参議院本会議で、「改正民法」が与野党の賛成多数で可決・成立。両親が離婚した後、“共同親権”も選択できるようになりました。
子どもの利益のために監護・教育を行ったり、子の財産を管理したりする親の権限や義務のことを指す「親権」。共同親権では、遺産の相続を決める「財産管理権」や、進学先、引っ越し先や住む場所を決めることができる「身上監護権」をもつようになります。
「改正民法」によって、子どもの親権の在り方が77年ぶりに見直されることになったなか、2024年8月10日、名古屋市瑞穂区の『三洋堂書店新開橋店』にて、両親の離婚や別居を経験した“こども当事者”が参加する、『こども当事者の想いを聞く会』が行われました。
主催したのは、こども当事者の居場所をつくる活動に取り組む「親子の想いを届ける会」。同会の吉崎さんによると、より多くの人々に活動の存在を知ってもらうため、『こども当事者の想いを聞く会』を開催したといいます。
NPO団体主催「こども食堂」に参加した際、“こども当事者”の思いを知ったことを機に、「親子の想いを届ける会」を立ち上げた吉崎さん。「こども食堂」に参加する子どもたちはひとり親家庭が多く、ボランティアスタッフには女性が多かったことから、吉崎さんは“父親”のように子どもたちと接するようにしていたといいます。
しかし、「こども食堂」に訪れていた子どもから、「父親に会いたい」という思いを聞いたとき、その子どもは“父親の代わり”を求めているのではなく、“本当の父親に会いたい”ということに気付いた吉崎さん。その後、日本では両親が離婚すると「一緒に暮らさない親」と会う機会が制限されること、「一緒に暮らさない親」と会いたいのに十分に会えていない子ども達がいることを知り、「親子の想いを届ける会」を立ち上げました。
今月10日に行われた『こども当事者の想いを聞く会』では、離婚や別居を経験したこども当事者3名が当時の心境などを明かす場が設けられ、「なぜ親が離婚したら片親と会えなくなるのか、会ってはいけないのか。全く理解できずにひどく苦しんだ」、「同居親(母親)からは無言の圧力を感じて、父親に会いたくても自分から会いには行けなかった」など体験談が寄せられました。
こども当事者と参加者全員で、今後の取り組みに関するアイデアを話し合う時間では、「共同親権・共同養育への理解、離婚後の父母への対応などを学ぶ研修の実施など、学校へのアプローチを進めていくこと」、「子どもからは声を上げにくく、子どもの声が置き去りにされている。多くの人にこの活動を知ってもらい、埋もれている子どもの声を拾い上げていくこと」などの必要性が挙げられました。
“こども当事者”の想いを聞いた上で、「共同親権」法改正について考える場となった『こども当事者の想いを聞く会』。
参加者からは、「子ども心にも、親の離婚で片親に会えなくなってしまうことのおかしさ、それに対するやり場のない怒りや苦しみを抱えていることが分かった」、「大人や社会がもっと子どもの声を聞き、寄り添うことが大切」など感想が寄せられ、なかには「自分も離婚して3ヶ月に1度しか子どもに会えないが、子どもの立場ではどんな想いを抱えているのかを知ることができて参考になった」など、自身の状況と照らし合わせる参加者の姿もあった。
今後の展望について、「『こども当事者の想いを聞く会』が不必要になることが理想」と語った吉崎さん。また、各地域での『こども当事者の想いを聞く会』の定期開催を目標に掲げながら、「究極的には、両親の別居や離婚を経験したこども当事者すべてが、本人の想いと同程度に一緒に暮らさない親から療育を受けられるといいなと思います」と述べました。