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下呂旅行の費用が高くなる!? 2025年10月から“宿泊税”導入、税収は年間1億9,000万円 使い道は「観光振興の財源」、導入決定に賛否の声 岐阜・下呂市

2025年1月10日 15:25
下呂旅行の費用が高くなる!? 2025年10月から“宿泊税”導入、税収は年間1億9,000万円 使い道は「観光振興の財源」、導入決定に賛否の声 岐阜・下呂市

岐阜が誇る名湯、下呂温泉。2025年10月から、この下呂への旅行代金が少~し高くなることになりました。新たな税金「宿泊税」がかかるためです。年間1億9,000万円の税収を見込んでいるという、下呂市の宿泊税。金額や課税対象、使い道など取材しました。

下呂市が「宿泊税」導入を決定

「日本三名泉」とも呼ばれている温泉地の一つ、下呂温泉。県の内外からカップルや家族連れなど多くの人が訪れる、岐阜県有数の観光地です。

その下呂市で2024年12月20日、下呂市議会にて可決されたのが、岐阜県で初となる「宿泊税」の導入。宿泊税とは、旅館やホテルなどに宿泊する客から徴収する税金です。

人口減少で、税の減収が見込まれている下呂市。同市では観光資源を守るため、観光協会や旅館組合からの要望を受け、同税の導入の検討を重ねてきました。

宿泊に対して、客が支払うことになる「宿泊税」。下呂市で70年以上の歴史を持ち、リニューアルされた部屋や豊富な種類の温泉がウリの旅館『小川屋』の経営企画室長・大原 純さんは、「ご宿泊して頂くお客さまにご理解いただくように、努力してまいる所存ですね。準備したうえで、お客さまに対応していきたいなと思います」と、宿泊税導入に向けた思いを明かしました。

下呂駅の拡充、バリアフリー化の費用に活用

2025年10月から導入される、下呂市の宿泊税。1泊5,000円未満の場合は100円、5,000円以上の場合は200円が宿泊代にプラスされます。年間1億9,000万円の税収を見込んでいるとのことですが、一体、何に使われるのでしょうか。

温泉街の玄関口である下呂駅に来てみると、駅舎が手狭で、利用が集中する時間は外に列ができていました。下呂市は“宿泊税の使い道”について、駅の待合室の拡充、バリアフリー化の費用に充てたいとしています。

その他、現在は日本語表記だけになっている観光案内板などを、インバウンドに向け多言語表記にするなど、観光振興の財源にしたい考えだということです。

ただ、観光客にとっては、1泊ごとに負担が増えることに。東海地方から訪れた観光客からは「200円でも嫌ですね」、「(200円なら)まぁいいけど、できればない方がいいかなという感じ。体の不自由な人が来やすいように、使っていただければ」という声が寄せられました。

一方、すでに宿泊税を導入している大阪府から訪れた観光客からは、「大阪ではすでにある税なんで、特に違和感ないです。チップ感覚で払ってるようなもの」という声も。

恩恵は3割!? “払う側”が抱える懸念

東京都や大阪府、京都市など全国10自治体が導入している「宿泊税」。宿泊税の使用状況を見ると、払う側がちょっと“モヤっ”とすることもあるようです。

20年以上前に、全国で初めて「宿泊税」を導入した東京都の例で見てみると、宿泊税の収入は年間約44億円(2023年度)。

宿泊税に詳しい、大東文化大学 塚本正文教授の論文によると、宿泊税を負担しているのは、外国人宿泊観光者が23.5%、国内在住の宿泊観光者が76.5%。宿泊税の使用例(※他の税収も併用)は、多言語看板の設置、宿泊施設の充実、観光拠点の整備、海外プロモーションなど、外国人観光客向けやインバウンドを意識したものが多いといいます。

また同論文によると、宿泊税の恩恵を受けている割合も、外国人宿泊観光者が44%、国内在住宿泊観光者が29%という結果に。宿泊税を負担している割合をふまえると、“国内からの宿泊者は7割負担しているのに、恩恵は3割”という状態となっています。

下呂市の宿泊施設からは、こんな声も上がっています。下呂市の中心地から約10㎞離れた『民宿 赤かぶ』。宿泊税導入について、同宿の尾藤政男さんは、「もう実質値上げですよね」と話します。

土日は観光客が泊まり、平日は土木工事の関係者が仕事で利用することが多いというこの宿。単価が低いため、客からすれば「宿泊税」は、実質的な負担が大きいと訴えます。

「外国人だけから取るならまだわかります。円安なんだし。そういうところから取ってください。私らみたいな安いところから取らないで」と、心境を明かした尾藤さん。

外国人観光客だけに、宿泊税をかけることはできるのでしょうか?

大東文化大学 塚本正文教授は、「それは難しい」と答えます。その理由について、塚本教授は、「憲法で“法の下の平等”がうたわれているので、そこに反するということと、もう一つは『租税条約』というのがあって、国籍によって課税上の異なる取り扱いをしないことを外国とも約束しているので、その観点から日本国内で(外国人観光客だけから)税金を取るのは難しいと思います」と説明しました。

金額や税率は各自治体によってさまざま

ひとことで「宿泊税」といっても、課税対象金額や税率は各自治体によってさまざま。下呂市では5,000円未満が100円、5,000円以上が200円と全員に“定額制”を採用していますが、他の方法で「宿泊税」を導入している自治体もあります。

東京都では、1万円未満は課税対象にならず、1万円以上からの定額制を採用。これは、宿泊税導入時(2002年)における都内の平均的な宿泊料金等が“1万円”だったことが関係しており、現在、宿泊費の高騰受けて見直しを検討しているといいます。

北海道倶知安町(くっちゃんちょう)は、全員に“定率制”を採用。一律2%で、宿泊料金によって宿泊税が変わる仕組みとなっています。

下呂市も当初は定率制を検討。しかし、「事業者の計算管理による負担が大きくなる」など意見を受けて、定額制を導入したといいます。

下呂市の宿泊税は2025年10月から導入予定です。

最終更新日:2025年1月10日 15:25
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