障害者グループホーム「恵」 愛知の5か所で最も重い行政処分「指定取り消し」
2億円を超える食材費の過大徴収など数々の不正が確認されている障害者向けグループホーム「恵」。愛知県と名古屋市は26日、5か所のグループホームの「指定取り消し」を発表しました。
26日午後2時、愛知県が開いた緊急会見。
愛知県 大村秀章 知事:
「グループホームふわふわ幸田につきましては、最も重い行政処分となる「取消」としました。ほかの12事業所について「一部効力停止」とし、3か月~12か月間、新規利用者の受け入れ停止」
名古屋市 河村たかし 市長:
「大変残念だわね。こういうことでごまかすに至ったということは いかんことだと思いますよ」
愛知県を中心に全国で障害者向けのグループホームを運営する「恵」に対する行政処分。
県内の27か所のうち、5か所は自治体からの報酬が受けられず、事実上、運営ができなくなる「指定取り消し」に。22か所は新たな利用者の受け入れを認めない「一部効力停止」となりました。
愛知県 大村 知事:
「利用者や家族をはじめ多くの関係者の信頼を裏切るものであり、大きな憤りを感じます。処分を受けた事業者においては重く受け止めてもらいたいと思います」
実際にはいない職員を配置したように装うなど自治体に不正に報酬を請求していて、その金額は、県内で約4億5000万円に上ることが分かりました。
また、おととしの4月。岡崎市が定期的に行う立ち入り検査で、実費で徴収するよう定められた利用者の食材費を水増し請求していたことが発覚。「経済的虐待」と認定されています。
施設で一体何が行われていたのか。
県内にある「恵」の施設でおよそ2年間働いていたという元職員2人に話を聞くと。
「恵」 元職員(去年9月取材):
「意思疎通が取れない利用者がとても多かったので、この人たちにこういうご飯を与えても分からないだろうと。それをいいふうに本部とか、上の人間はやっていた。(管理者から)朝ご飯は100円、夜ご飯は300円におさめろという感じで。栄養バランスのないような、ほとんど揚げ物ばかりで安く済ませて」
実際に提供されていたという夕食。
これにご飯とみそ汁が付き、おかずには量が多く見えるように盛り付けでごまかすこともあったといいます。
県などによると、食材費を過大に徴収していた額は県内26の施設で総額約2億1800万円。
お金にまつわる問題はこれだけではありませんでした。
元職員によると、自治体から給付される額が多い重度の障害者を積極的に受け入れるよう指示があったといいます。
「恵」元職員(去年12月取材):
「(給付額がより少ない)区分2とか3とかの方がいると、一、二度言われたことあるのは、区分2なんか早く追い出せよと。いまとなっては、もうけのためと見えなくはないので…」
利用者を選別し、”もうけ”優先の経営をしていたともとれる「恵」。
こうした運営の仕方について専門家は。
愛知淑徳大学福祉貢献学部 瀧 誠 教授:
「十分な支援ができず不十分な状態で利用者が困る状態になっていたと思うので、利用者自身が不安定になったりして、リスクも高かっただろうなと予想できます」
今後はどうなるのか。「恵」の元職員に話を聞くと。
「恵」元職員:
「一番ダメージを受けるのは利用者だったり、現場で働いていた職員たちだと思うので、処分に安心っていう感情はない」
行政処分を受けた施設で働く職員から5月に会社の対応への不安な声を聞いたといいます。
「恵」元職員:
「この場所は守られるんだろうか。利用者は大丈夫なのか。自分たち(職員)は大丈夫なんだろうか。なんの説明もないし、この先が分からない不安を皆さん持っているという話は聞きました」
障害者支援に関わる東海地方の3団体にも、利用者の家族などから「わが家の生活は、息子のホーム利用により救われています。ホームがなくなったら、と思うと不安」など、161件の相談が寄せられているということです。
利用者の今後について県は、転居を調整する相談員を配置。
また、県内すべてのグループホームの空き状況を調査し、市町村などに情報を提供。空いているグループホームに積極的な受け入れを依頼していくとしています。
「恵」は中京テレビの取材に対し、「本日の処分を受け止め、真摯に対応していく。今後の対応については検討段階」としています。