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大牟田市の高校の「定時制」が75年の歴史に幕 不登校だった最後の卒業生「やってみることが生き方を変えると知った」福岡

2024年3月4日 18:40
大牟田市の高校の「定時制」が75年の歴史に幕 不登校だった最後の卒業生「やってみることが生き方を変えると知った」福岡
定時制高校で最後の卒業式

福岡県内の多くの高校で卒業式が行われた3月1日、大牟田市の高校の定時制が75年の歴史に幕を下ろしました。学校では不登校や家庭の事情など、さまざまな背景を抱える生徒を受け止めてきました。最後の卒業生の思いに迫ります。

■ありあけ新世高校・校長
「卒業生の諸君は定時制課程16期生最後の卒業生として、きょう、この日を迎えています。」

先週金曜日、大牟田市の県立ありあけ新世高校で定時制の閉課程式が行われました。生徒数の減少などもあり、前身の大牟田南高校を含め、75年の歴史にこの日、幕を下ろしました。

角 知拓(ともひろ)さん(19)は最後の卒業生11人のうちの1人です。角さんにとって、ここは初めてできた、かけがえのない居場所でした。

角さんが定時制に通うきっかけは、小学1年生から始まった不登校でした。

■卒業生・角 知宏さん(19)
「正義感が元から強くて、学校のみんなが騒がしいのを『静かにして』という側だったのですが、それに対して『おまえがうるさいやん』と。」

友達とのささいなすれ違いをきっかけに、中学生まで家に引きこもりがちの状態で過ごしました。そんな息子の姿に、家族はもどかしさが募ったといいます。

■母・ひろみさん
「不登校の時代は家の中で引きこもってゲームをしたり、 自暴自棄になっていた時期が多かった。ごく当たり前にできている学校生活というのができていない。うう…とそれだけでなる。」

今の自分を変えたい。そんな思いで選んだのが定時制でした。授業が夜間だけで、昼夜逆転した生活でも通いやすいと思ったのが理由です。

全日制に比べて1年長い4年間をともに過ごすことで、クラスメートとの絆は深まりました。

人とのコミュニケーションにも苦手意識がなくなり、日中はゴルフ場でのアルバイトも始めました。

自由な校則や個性を認めてくれる友人の存在もあり、4年間、学校を1日も休みませんでした。

■角さん
「周りの友達、家族、先生、バイト先の方にも助けていただいた。」

【やってみることが生き方を変えると知った】

9年間の引きこもりがちだった生活が、定時制に入ったことで大きく変わったのです。角さんは定時制の生徒会長を2年間務めるまでに成長し、卒業生代表として答辞を読み上げました。

さまざまな事情を抱えながらともに歩んだ定時制の4年間、最後に伝えたのはみずからが経験したある思いです。

■角さん
「私たちの心を覆っていた殻を破ることができ、自分を見つめ直し、忘れていた笑顔を取り戻すことができたのです。人は変われます。なりたい自分になるために、まずはやってみることだということを私はこの高校で学びました。そして、その結果が成功だろうと失敗だろうと必ず、得られる経験値が生き方を変えていくのだと知りました。」

定時制を卒業した角さんは、春から久留米大学経済学部に進学します。将来はふるさとの大牟田市を活性化させたいと夢を語っていました。