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「静かに逝く人たち」…孤独死・孤立死の現場を取材 1人でなくなった高齢者は半年で約3万人 福島

2024年9月13日 12:43
「静かに逝く人たち」…孤独死・孤立死の現場を取材 1人でなくなった高齢者は半年で約3万人 福島
「静かに逝く人たち」より

誰にも看取られず、亡くなったことさえ周囲の人たちから気付かれず、静かにこの世を去っていく人たちがいます。複雑な事情を抱えながら、人生を生き抜いた人たちの“最後の砦”になろうと「孤立死」などの葬儀を営む夫婦がいます。2人は必ずこう言葉をかけます。「お疲れさまでした」。


時々、料理を一緒にするようになったという夫婦。

■石原さん夫婦
「いただきます」「ちゃんと座って」「はい!いただきまーす」

およそ30年前に結婚した、石原充さんときみ子さん。3人の子どもたちを育て上げました。子どもたちはそれぞれ家庭を持ち、今は東京で暮らしています。子育てが一段落した10年ほど前、夫婦は新しい会社を立ち上げました。2人だけで営む小さな葬儀店です。当時わずかな資金しかありませんでしたが、2人の背中を押したある出来事がありました。

■石原きみ子さん
「死体遺棄のニュースが流れた。奥さんが亡くなって旦那さんが葬儀をするお金がないので自分の家の庭先に奥さんの遺体を埋めた。本当は葬儀ってそんなにお金をかけなくても出来るもんじゃないのかなっていう風に思って」

元々、大きなホールのある大手の葬儀会社で働いていた2人。出来るだけお金をかけないようにと、葬儀で使う道具は、充さんが手作りしました。一般的な葬儀は、数百万円かかりますが、石原さん夫婦は、火葬だけの最低限の葬儀。自治体からの給付などを合わせるとなんと5万円ほどに。すると、予想もしなかったことが…。

■石原きみ子さん
「福祉の方、生活保護の人。こちらがお金をあまりかけないでやりたい方とか」

依頼が増えていったのが生活保護を受ける人など家族や親戚との繋がりがなくなった身寄りのない人たちの葬儀でした。その依頼は、市役所や警察などから。年間で100人を超えています。


引き取り手がなく、送り出すのは石原さん夫婦。そして、火葬場の職員の人たち。

■石原きみ子さん
「やっぱりいろんな生き方があったにしても最期はみんな同じですから。だから本当にお疲れさまっていうか大変だったねっていう気持ちは出てきますよね。どんな人に対してもね」

夫婦が必ず最期にかける言葉があります。

■石原充さん
「炉の前でお疲れさまって言ってあげないと故人様は浮かばれないよね」
■石原きみ子さん
「本当に一人で逝くっていうのはやっぱり悲しいことだよね。どんな事情があったにせよ。だから最期にはいるよって」


今年の半年間で、自宅で亡くなった1人暮らしの高齢者は全国で、2万8000人あまり。孤独死・孤立死を防ぐため、行政などが対応に乗り出しています。

■NPO法人「地域福祉ネットワークいわき」園部義博事務局長
「孤独死はレアケースではない。何らかの形で行政を中心として社会が仕組みを作らなくちゃいけないかなと思っています」

こちらでは行政から委託を受け、一人暮らしの高齢者宅を訪問し、亡くなった場合の葬儀の段取りやお墓の契約を生きている間に結ぶのをサポートしています。


石原さんのもとに一本の電話がかかってきました。

■石原充さん
「はい、いしはら葬斎です」

火葬をした男性の遺骨に関する電話でした。

■石原充さん
「引き取りはしません?」

男性の内縁の妻が遺骨を引き取らないという連絡でした。火葬の日時も伝え、ぎりぎりまで待っていましたが来ることはありませんでした。

■石原充さん
「関わりたくないが一番がっかりする言葉。関わってくれよ少しでもという感じで思う」「最期火葬場できれいな顔見てもらいたいなって思うんだけど、それが全然関わりたくないの一言、で済まされちゃうこの世の中が非常に怖い。恐ろしいです」

石原さん夫婦は、引き取り手がいない遺骨に対しても最後まで寄り添います。同じように引き取り手のいない他の遺骨と一緒に埋葬しています。石原さん夫婦は、家族の代わりとなって、供養します。

2024年8月14日、いわき市内に「じゃんがら念仏踊り」の太鼓と鉦の音が響いていました。江戸時代から続いてきたいわきの伝統行事。新盆の家庭を回り、その年に亡くなった人を供養します。亡くなった人のことを敬い、忘れないことが脈々と受け継がれてきました。そうした人の心は人と人とを結び、地域社会を陰で支える必要不可欠なものなのかもしれません。

■石原きみ子さん
「悼むことって人としてすごく大切なことなのかなっていう風には思うけどね。誰でも必ず早かれ遅かれ亡くなるっていう死っていうことはやってくる訳だから」


身近にいる一人暮らしの高齢者、離れて暮らす祖父母など、家族や地域住民とのきずなについてもう一度見つめ直すことが大切なのかもしれません。福島中央テレビでは9月15日(日)の深夜に孤独死・孤立死の現場や遺族などを取材した特別番組を放送します。

「静かに逝く人たち ~もう、伝えられない想い~」9月15日(日) 25時25分~※9月16日(月)午前1時25分~

最終更新日:2024年9月13日 12:58