【武田真一さん出演】熊本市の地下水から有機フッ素化合物 KKTが独自に調査
月曜から金曜の午前に放送している「DayDay.」司会者、武田真一さん。熊本出身の武田さんが元同僚で後輩の東島大デスクと熊本のニュースを深掘りします。
今回の深掘りテーマは、熊本の地下水から有機フッ素化合物が検出された問題です。
■KKT東島大デスク
「今回も水がテーマ。熊本の地下水です」
■武田真一さん
「熊本は本当に地下水がきれいなおいしいところですもんね。どんな問題が起きているんでしょうか?」
■畑中香保里アナ
「きょうの深堀りテーマは『熊本の地下水から有機フッ素化合物が検出された問題』について考えていきたいと思います」
■東島デスク
「武田さんも以前この有機フッ素化合物の問題を番組で取り上げたことがありますよね?」
■武田真一さん
「2019年にNHKでこの問題を扱った番組に携わったことがあるんですけどその時に印象的だった言葉があるんですね。
それが『自然界では分解されることがない永遠の化学物質』と呼ばれているということなんですね。
ですから自然界や人体に与える影響が心配ですが、
それが熊本の誇るあの水からも検出されているということでどうなるのかなと心配しています」
■畑中アナ
「そしてきょうはもう一人リモートでご出演です。有機フッ素化合物の第一人者で、政府が設置した専門家会議のメンバーでもいらっしゃいます京都大学大学院・原田浩二准教授です。よろしくお願いします」
■東島デスク
「原田さんは熊本のケースについてはほかの都市に比べて原因がわからないことがかえって特徴であるという風に前回おっしゃっていましたね」
■京都大学大学院・原田浩二准教授
「はい、いままでPFAS(有機フッ素化合物)の汚染が見られているのは沖縄であるとか東京の多摩、愛知県や大阪などがあるんですが、
そういった所ではPFASの汚染源が基地とか空港とか工場があってということがだいたいすぐにわかってきたんですが、
その点に比べると熊本市のケースではまだはっきりとした発生源にたどりつけていないというところでちょっと変わっていますね」
■畑中アナ
「きょうはどうぞよろしくお願いいたします。まずは熊本の地下水をめぐるこれまでの経緯をまとめました」
【VTR】
最初の衝撃は今年4月でした。熊本市が定期的に監視する2か所の井戸から、国の暫定基準を超える有機フッ素化合物が検出されました。体内に入ると、がんなどいろいろな病気のリスクを高めるとされています。
熊本市は飲み水の100%を地下水でまかなっています。大西市長は、健康へのリスクはもちろん、農作物への影響もありうるとして、部署を横断する特別プロジェクトチームを設置したほか、不安を感じる井戸の持ち主には検査にも応じました。
その結果。
■オモケンパーク 面木健さん
「これが検査結果です」
繁華街に店舗を構えるこの店では、暫定基準こそ超えなかったものの、欧米の厳しい基準では安心とは言えないレベルの結果が出ました。これ以降、客への井戸水の提供を止めています。
■オモケンパーク 面木健さん
「なぜ熊本市の井戸水で、こういう有機フッ素化合物が検出されるのかっていうその原因が分からないという熊本市のコメントもあったのでなおさらですね。分からないなら、なおさら不安だなと思って」
その後の熊本市の調査で、基準を超えた井戸はあわせて30か所に増えました。市は基準を超えた場所の付近を重点的に調べましたが、汚染源の特定には至っていません。
■熊本市 永田努環境推進部長
「原因については今のところ、なかなかですね、わからないという状況です」
汚染源は何なのか?KKTは全国で汚染の調査にあたっている京都大学大学院の原田浩二准教授と共同で井戸水の調査を開始しました。
熊本市や周辺にお住まいの視聴者の皆さんからも、日常お使いの井戸水を提供して頂きました。
さらに私たちは、原田准教授の指導のもと、熊本市の住宅街を流れる井芹川と坪井川の水に注目。それぞれの川をさかのぼり、橋ごとに川の水の採取を続けました。
これらの水を京都大学で分析し、20種類の有機フッ素化合物を1グラムの10億分の1のレベルで追跡しました。その結果、現在までに一部の結果がまとまったのです。
【VTR終わり】
■畑中アナ
「武田さん、映像をご覧になって気になった点を教えてください」
■武田さん
「発生源がわかっていないということですから、これがどのくらい広がっているのかもなかなか把握できないんじゃないかという所がまず不安ですね。それからなによりも健康への影響。どの程度熊本市民・県民のみなさんが恐れればいいのかという点が気になります。どうなんでしょうか」
■東島デスク
「原田先生、健康への影響なんですが、有機フッ素化合物そのものがすぐに中毒症状を引き起こすということではないんですよね?」
■原田准教授
「現在検出されている水道水等の濃度からすれば、厚生労働省が定めている暫定目標値も下回ってはいます。ですので今、水から急性な影響。中毒症状とか何かの病気に必ずなるという状況ではないと考えています。ただ長期的なリスクを予防するということから考えますと、発生源を特定して対策をすすめる必要があると思います」
■東島デスク
「そして熊本市の地下水への広がりなんですけど、今VTRでご覧いただいたように、有機フッ素化合物の成分を細かく見ていくことで追跡できるということだと思うんですね。いただいたデータを地図に落としましたので、そちらをご覧いただきたいと思います。
こちらがそのデータです。熊本県を拡大していきますといただいた井戸水の分析値が表示されます。
色分けしているんですけど今回分析した所で国の暫定基準値50ナノグラムを超えたところはありませんでした。
ですけどさきほどから出ているアメリカの飲み水基準4ナノグラムを超えている所を黄色・赤で示しています。
赤が2か所ありますが20ナノグラムを超えた場所になります」
■武田さん
「国の暫定基準値は1リットルあたり50ナノグラムということですよね。だけどアメリカの基準値は4ナノグラム。アメリカの基準は上回っている地点があるということで原田さん、基準の考え方はどう見たらいいんでしょうか?」
■原田准教授
「日本は1リットルあたり50ナノグラムという目標にしているんですが、これは動物実験。ネズミなどにPFASを投与して、その影響がこれ以下だったら影響が出ないだろうと設定したものです。
ただ最近ヒトでの健康調査というのが世界中で行われていまして、その結果を評価するとアメリカやヨーロッパの方では、より厳しい基準や目標にするべきなんじゃないかという話が出てきています。その中で4ナノグラムというのも出てきたと言えます」
■武田さん
「そうするとこの数値はちょっと微妙な数値ですよね」
■東島デスク
「はい、今回一番多かった20ナノグラムを超えた2か所は同じ21ナノグラムなんですけど、実際に分析していただいた成分を見ますと、まったく違うものなんですね。これは発生源が違うということでよろしいでしょうか?」
■原田准教授
「今回特に成分として多かったのは、PFASのうちPFOSとPFOAというものがあるんです。
この2地点ではPFOSとPFOAの割合が全く違うということです。そうすると、やはりそれは発生源自体が違うんではないかということになります。
そしてPFOSやPFOAというのは、それぞれ使用される用途が違うわけですね。かたや消火剤であるとか、めっきとか撥水剤につかわれるのですが、PFOAの方はフッ素樹脂とかコーティングといったものと関係するといわれています」
■東島デスク
「そして先生もう一つ川の調査も行いました。井芹川と坪井川なんですが、その結果もこの地図の方に重ね合わせますとこういう形になります。黒い列が川です。
より黒味が強い所が数値が高い所でして、特に井芹川というのは下流から28ナノグラム。
上熊本付近になりますとほとんど50近い、国の基準にほぼ近い数値が出ています。
これは川自体に上流に発生源があるとみてよろしいでしょうか?」
■原田准教授
「今回調べた範囲では上流に行くほど数値が高くなっているということから、かなり北部の方から排出されているのではないかと思います。
そしてその成分としては、たくさんあるPFASのうちPFOAと呼ばれるものですので、その関連の物質も複数見られているということから、なんらかの用途が突き止められるのではないかと思います」
■東島デスク
「つまりこれは井芹川の上流部またはきっかけとなった北区植木町付近に、なんらかの要因がありそうだということは言えますか?」
■原田准教授
「そうですね。井戸水の調査でもPFASのうちPFOAが高くて、それで目標値を超えているという状況も報告されていますので、その点では植木町・もしくは周辺から排出されている可能性は考えないといけないと思います」
■東島デスク
「そして数値の高い地点のすぐそばに赤い数値もあるんですが、やはり数値のデータが全然違う。
そうしますと熊本市の中央区・東区の特徴はどういうことが言えるのでしょうか?」
■原田准教授
「井芹川ではPFOAが見つかっているのに対し、中央区や東区の方で特に数値が高かったというところでは、PFOSが高いというのはやはり消火剤とかそういったものの関連があるのではないかと思います」
■東島デスク
「消火剤の中にそういう物質が含まれているということなんですね」
■原田准教授
「ご家庭で使うような消火剤ではなく、燃料などが燃えた時に使われるような消火剤にPFOSが使われてきたという経緯があります」
■東島デスク
「武田さんいかがですか?」
■武田さん
「こうやって細かくプロットしていくと、発生源というのは特定できそうなんだなというのが改めてわかりましたので、これは国や自治体、水道事業者に詳しくまず現状を把握してほしいと。発生源も特定してほしいと思いました。
加えてPFOAとかPFOSというのは今は禁止されていて使われていないはずなんですけど、どこかでかつて使われていたのかとか今も在庫がどこかに残っているのかということ。それが今どういう風に管理されているのかということも、継続してきちんと把握してモニタリングしてほしいなと思います。
そしてもう1つ私たちにとってなんですが、健康への被害。今は過度に恐れる必要はないということでしたが、決してパニックになることなく、現時点でわかっていることをちゃんと理解して正しく恐れることが必要かなと思います。
環境省のホームページにはこの夏に原田先生も関わってまとめられたQ&Aが載っていますので、そういったものも把握して正しい知識をもってみていかないといけないと思いました」
■畑中アナ
KKTでは引き続きこの地下水の問題を追っていきます。
武田さん、原田さんありがとうございました。
■武田さん・原田さん
ありがとうございました。