【解説】水俣病訴訟 原告128人全員を水俣病と認め国などに賠償命じる判決 大阪地裁
水俣病の救済の対象とされなかった人たちが原因企業のチッソと国・熊本県に賠償を求めて起こした裁判に判決です。大阪地裁は27日、128人の原告全員についてメチル水銀による健康被害を認め国と県、チッソに賠償を命じる判決を言い渡しました。
裁判を起こしているのは、熊本県と鹿児島県から大阪など関西地方に移り住んだ原告128人です。
争点となっているのは、「水俣病の最終的な解決策」として国が2009年に成立させた水俣病特別措置法です。原告側は、救済対象を決める基準となった地域や年齢の線引きは不合理なうえに申請の期限を国が一方的に締め切ったのも不当だとして、原因企業のチッソと国・熊本県にひとり450万円の賠償を求めています。
これに対して被告の国などは「特措法には相当の根拠があり、原告たちは水俣病を発症するほどのメチル水銀の影響はなかった」と主張したほか、仮に原告の主張が認められたとしても刑事事件の時効にあたる「除斥期間」が経過しているとしました。
27日の判決で大阪地裁の達野ゆき裁判長は「特措法の対象地域外でも不知火海でとれた魚介類を継続的に多食したと認められる場合には水俣病になりうるメチル水銀を摂取したと推認するのが合理的」などとして原告128人はいずれも水俣病であると認めました。
また被告が主張した除斥期間については、「起算点は共通診断に基づいて水俣病と診断されたとき」として原告に対象者はいないと判断しました。そのうえで、122人の原告に対しては国と熊本県とチッソ、残る6人はチッソのみに1人あたり275万円の賠償を命じました。
判決に対し伊藤環境相は…
■伊藤信太郎環境相
「国の主張が認められなかったものと認識しています。原告の方々が長年にわたり様々な症状で苦しんでいることに対しては、胸の痛む思いです」
またチッソ総務部はKKTの取材に対し「判決文を精査中ですので今の時点でコメントは差し控えさせて頂きます」と話しています。
水俣病の救済の対象とされなかった人たちが原因企業のチッソと国・熊本県に賠償を求めて起こした裁判で、大阪地裁は27日、128人の原告全員についてメチル水銀による健康被害を認め国と県、チッソに賠償を命じる判決を言い渡しました。この判決の意味を東島大デスクが解説します。
■畑中香保里アナウンサー
「水俣病をめぐっては、27日の判決以外にも、熊本地裁、東京地裁で裁判が続いています。27日は、大阪地裁が原告全員のメチル水銀被害を認めました。この判決の意味は?」
■東島大デスク
「国は、水俣病特措法ををもって『水俣病の最終的、全面的解決』としてきました。ところが、この法律では全面的な解決にはならないと指摘されました」
■畑中香保里アナウンサー
「特措法にはどういう問題があるのでしょうか?」
■東島大デスク
「まず言えることは、今のままでは水俣病救済の枠組みからこぼれ落ちる人が続出するということです。さらに今回の判決は、遅発性と呼ばれる後から症状が現れる水俣病の存在も認めました。これはこれまで国が一貫して否定してきた点で、そうなると水俣病行政全体を見直す必要があります。極めて大きな判決といえます」