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出産してすぐに第1子を亡くした女性 第2子の誕生に喜びとともにある複雑な思い

2023年10月11日 18:55
出産してすぐに第1子を亡くした女性 第2子の誕生に喜びとともにある複雑な思い

10月9日から16日は、亡くなった赤ちゃんやその家族に思いを寄せる「ピンク&ブルーリボン」の啓発週間です。おととし、赤ちゃんを亡くした女性。第2子の誕生に喜びとともにある複雑な感情が。新たな毎日を取材しました。

8月21日の熊本市。出産を終え、この日退院した澤野典子さん(35)と夫の史憲さん(46)。

■澤野典子さん
「でっかく生まれました。わりと小さいけど」

生後1週間の翔空くん。3800グラムを超えて生まれた元気な男の子です。

■澤野典子さん
「泣きましたからね、この人。蒼空くんの時は、泣き声は聞こえなかったけど泣きました。大きな声で」

翔空くんにはお兄ちゃんがいます。第1子の蒼空くん。3年ほどの不妊治療を経て2021年、授かりました。しかし、妊娠5か月(16週)で染色体の異常が見つかり、元気に生まれないかもしれないと告げられます。

出産予定日まで1か月の34週が過ぎ、自宅で破水。澤野さんは、蒼空くんの手を必死に握りました。

■澤野典子さん
「だめかもしれないっていう大きな現実がある中で、がんばれ、ありがとう、大丈夫を、その3つをずっと呪文のように繰り返しながら、天井のライトを見ていることしか私にはできなかった」

生まれて1時間22分、蒼空くんは、旅立ちました。

消えることないわが子を亡くした経験

第2子の翔空くんを出産して、初めて一緒に家に帰ってきたこの日。澤野さんに笑顔はありませんでした。

■澤野典子さん
「2年前は、蒼空くんをただ抱えて。チャイルドシートに乗せるとかもなくて、お腹の傷も痛くて。抱っこしたまま車の後ろに横になって、落とさないように抱っこして帰ったなとか。今も大事だから…会いたいと思うし…」

無事に生まれた喜びの一方で、家族が初めて抱いた複雑な想い。

■夫・澤野史憲さん
「純粋に生まれてきてくれたことは、すごくうれしいんですよ。すごくうれしいんですけど、そっちばっかりになっていると蒼空くんのことを忘れてしまいそうな自分もいて。忘れることはないんですけど、でもうれしいっていうすごく2つの感情があって、どうコントロールしたらいいのかなって」

消えることがないわが子を亡くした経験。「でも、今の現実と向き合いながら生きていく」、家族4人で歩む新たな毎日です。

キャンドルの光のもとで紡ぐわが子へのメッセージ

■澤野典子さん
「ありがとうね~本当にふたりとも」

10月9日。亡くなった赤ちゃんや家族に思いを寄せるピンク&ブルーリボンの啓発週間が始まりました。

同じように赤ちゃんを亡くし、活動を共にするメンバーと集まった澤野さん。空をモチーフにしたキャンドルに火を灯します。この2年、お骨の横に飾り、火をつけられずにいました。

■澤野典子さん
「初めてつけました」
■4参加者
「きれい~」「いいね、うん~」

温かな光のもとで、わが子へのメッセージを手紙にしたためます。

■澤野典子さん
「え~~~なんて書こうかな」

「ありがとう。大好きだよ。」蒼空くんへ向けた精一杯のことばです。

そのほかのメンバーも、今の気持ちと向き合いながら言葉を紡ぎます。

■小森綾乃さん
「私の場合は流産もあったし、死産もあったし、子宮外妊娠もあったし。ありすぎて一人ひとりの子どもたちに伝えるのは難しい。まだまだ向き合えていない。まだ気持ちにふたしているんだなと感じました」

■丸山真紀さん
「どうしても謝罪の言葉を私は入れてしまうんですよね。たくさん抱っこしてあげられなくてごめんなさい。それは伝えたいなという気持ちはあります。いなくても家族なので、これからも家族ですありがとうと締めくくりたい」

ピンクとブルーの光 新たなつながりも

ことしもピンクとブルーの光に包まれた熊本市中心部にある商業施設、サクラマチクマモト。ライトアップの費用は今年もチャリティで集めました。

■見に来た人
「久しぶり~」
■澤野典子さん
「ありがとうございます~」

■見に来た人
「去年来られなかったので、今年はこんなイベントをされていると聞いて、見てみたいと思ってきました」
■見に来た人
「悲しんだり苦しんだりされている方を救うことはできないかもしれないけど、寄り添うことができる環境があると、いろんな女性の明日への希望になるんだなと、ライトアップの光を見ながら感じました」

蒼空くんとの別れをきっかけに広がった新たな「つながり」。

■澤野典子さん
「一番はどんな命も大切に、みんなが思うような熊本にしていくというのと、それは今生きている子もだし、亡くなった子も同じように大事というのを知ってほしいですね一番」

家族決してひとりじゃない。空から見守る子どもたちとともに…。それぞれの人生を歩みます。