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【教員不足】学校だけに頼らない学びの場づくり 地域の人や学生が学校活動に参加

2023年10月6日 19:00
【教員不足】学校だけに頼らない学びの場づくり 地域の人や学生が学校活動に参加
放課後の小学校で活動する地域ボランティア

教員不足が課題となる中、学校活動に教職員以外が参加する試みが増えています。地域の人や学生など学校だけに頼らない学びの場づくりを取材しました。

熊本市の西原小学校。50年以上前から緑化活動に力を入れています。3階建ての校舎を覆うグリーンカーテンや、農園で野菜を育てる取り組みは全日本学校関係緑化コンクールで最上位にあたる特選に選ばれるなど、全国的にも評価されています。

この活動、児童や教師だけでやっているわけではありません。支えるのは、地域の人でつくるグリーンボランティア。月に2回、学校の花壇や農園を整備しています。2008年、当時の校長が校区で暮らす農業の名人を学校に招き、野菜の育て方について指導を始めたことをきっかけに発足しました。

■グリーンボランティア 重岡求さん
「大根と小松菜を植えます」

88歳の重岡求さんは、15年活動するベテランです。ほとんど毎日学校を訪れ、植物の世話をしています。

■グリーンボランティア 重岡求さん
「学校の子どもたちが『グリーンさんおはよう』、『こんにちは』、『失礼します』これが一番。こういう子どもたちと接点があっていいなと。15年間毎日うれしい。昔も今も変わらない」

たくさんの花や木、農園を学校の中だけで管理するのは、知識面でも人員面でも難しいのが現状です。総合的な学習の時間で野菜などを育てる時は、グリーンボランティアが一緒に活動をします。

地域の人が学校や保護者と一緒に子どもの教育に関わる取り組み。部活動の地域移行をはじめ、教師の働き方改革が急速に進められている中で、教師の負担軽減も期待されます。

■菊岡耕介教諭
「グリーンボランティアが花や緑の管理や世話をしてくれることで、自分たちもその時間、子どもたちと向き合う時間に注力できるのでとても助かっている」

地域ボランティアが放課後の見守りや読み聞かせ

熊本市の一新小学校。放課後の図書室に次々と子どもたちの姿が。一緒にいるのは、教師ではなく地域のボランティア。「一新応援団」として、学校活動に参加しています。

コロナ禍前は放課後の一時見守りや本の読み聞かせなどの活動を行っていて、2学期に入り徐々に活動を再開しています。

■宿題の答え合わせするボランティア
「恥ずかしい様子がドキッとする?驚いている様子が顔を赤くする?えへへへへ」

宿題を教えてもらったり…

■読み聞かせするボランティア
「みんながいっぺんに出てきたらどうしよう」

読み聞かせをしてもらったり。

図書室での見守りは、授業が早く終わる1、2年生が対象。高学年の下校時間まで一緒に過ごします。

■一新応援団 橋本弥生さん
「子どもが一新小学校の卒業生なので、その頃から先生や学校にはすごくお世話になって子どもたちを育てていただいたので、私にできることがあればとお手伝いすることになった」

教師を志す大学生がアシスタントに

普段の授業にも新たなサポートが。

「先生に何聞こうなに聞いてみようか」

尾ノ上小学校の教室では、2人体制で授業が進められていました。担任教師と一緒に子どもたちと接するのは、大学3年生の田中日和さん。熊本市教育委員会は今年度、大学生と大学院生を対象に、有償のアシスタント制度を導入しました。時給は1600円。教師が不足している熊本市内10の小中学校に25人が配置されています。

■1年生担任 内田遥教諭
「きょうはチャイムが鳴るまで書く時間にしたいと思うので、もしもどうやって書いたらいいか分からなければ、内田先生かひより先生に聞いて下さい」

この日入ったのは1年生のクラス。夏休みの思い出発表に向けて考えをまとめる時間です。

■田中日和さん
「うわじょうず~!海に行ったの?楽しかった?この話すところに海って書こうか」

小学校の教師を志望し、教育実習も控える田中さん。有償であること以上の価値をアシスタント制度に感じています。

■田中日和さん
「大学での学びがすぐに現場でいかせる。現場の学びがすぐ大学でいかせるのは、深い学びになる。子どもたちが『あ!できた』とか「こういうことを伝えたかったんだ」という表情が見えたりとか。大学に帰った時にこんな授業をしたいな、こんな先生になりたいなと想像がふくらむ時に楽しいなって思います」

現場を知ってもらい、教師への志望度を高めてもらおうとはじまった取り組み。学校側も、メリットを感じています。

■1年生担任 内田遥教諭
「ひとりでは見きれていない部分もあるなと思うので、「よくできているよ」「そのままでいいよ」と言ってもらうだけで、子どもたちが自信を持って取り組んでいるなと思う」

■尾ノ上小学校 田中恒次校長
「個別に子どもたちの興味・関心・理解度に応じて指導ができるフリーな先生がもう1人いるのは、教育にもプラスになっていくのは間違いない」

現場で経験を積みたい学生とマンパワー不足の学校。熊本市教育委員会は、「今」のニーズも捉えながら将来的な教師の確保につなげたい考えです。

■熊本市教育委員会教職員課 上村清敬課長
「このアシスタント事業は特効薬ではないと思っているので、種をまいて中長期的に志願者が増えればと思う」

教師や家族に限らず、誰もが「子どもの成長」に携わる学校を目指して。現場の挑戦が続いています。