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絶やすな!日本の食文化「全国煮干しサミット」開催へ “消費低迷”打開願い、地元漁業者が企画《長崎》

2024年4月26日 6:45
絶やすな!日本の食文化「全国煮干しサミット」開催へ “消費低迷”打開願い、地元漁業者が企画《長崎》

日本のダシ文化を支える「煮干し」。

水揚げの減少、消費の低迷など取り巻く環境は厳しくなっています。

“食文化を守りたい” 漁業者が立ち上がりました。

▼雲仙市の特産品「煮干し」を取り巻く現状

みそ汁や煮物などのダシとして活用される「煮干し」。

ミネラルやカルシウムが豊富なうえ、うまみ成分たっぷりで日本食に欠かせない食材です。

島原半島の西側に広がる“橘湾”では、100年以上前から煮干しの原料となる “カタクチイワシ漁”が行われています。

有明海など内海からの栄養豊富なプランクトンに恵まれ、外海の海流も入り魚が集まりやすい「橘湾」。

この海のそばで、全国で初めて「煮干しサミット」が開かれることになりました。

仕掛け人の一人が、橘湾で70年以上、煮干しを生産する「天洋丸」の社長、竹下 千代太さん 59歳。

「天洋丸」は まき網船でカタクチイワシ漁を行っています。水揚げ後は、ポンプで加工場まで運び、せいろに広げて海水で茹でます。その後、室内で1日半から2日、乾燥させると “煮干し”に。

(天洋丸 竹下千代太 社長)
「煮て干すことで保存性もいいし、うま味が出やすくなる。カルシウムは(豊富で)抜群においしい。イノシン酸のうま味もよく出るようになる」

「天洋丸」では、これまで煮干しを炊き込んだ地元の郷土料理「自転車飯」の素や、アーモンド、バナナチップスと合わせたおやつなど、煮干しの加工品開発にも力をいれてきました。

また、担い手不足解消のため、2017年からインドネシアの技能実習生を受け入れています。

(技能実習生 イアム・トボロニさん)
「仕事が楽しい。みんな優しくなった」

実習生の「食文化」からヒントを得て、オリジナル商品も完成。

トウガラシや塩を合わせた東南アジアの調味料「サンバル」をベースに、トウガラシペーストと素揚げした煮干しをほぐして炒めた、その名も“ニボサンバル”です。

(技能実習生)
「おいしい」

(天洋丸 竹下千代太 社長)
「煮干しはダシだけでなくいろんな用途がある。煮干し専門だから煮干しを使った商品開発は常にやっていかないといけないしやっていて楽しい」

▼「煮干し」に今、迫りくる “危機”

煮干しは、雲仙市の特産品。カタクチイワシのほか、マイワシやアジなど種類も豊富で、市内の多くの海産物店で販売されています。

美味しい煮干しを作るにはイワシの鮮度が重要で、港に水揚げされた新鮮なものをすぐに加工する県内の煮干しは、品質が高いといわれています。

しかし最近は、温暖化や担い手不足などによって、(カタクチイワシをはじめとした)県内の煮干しの生産量は、おととし3900トンあまりに。

(天洋丸 竹下千代太 社長)
「カタクチイワシの資源量が減っている」

生産量は年々減少。これに 反比例する形で取引価格は上昇しています。

天洋丸も所属する橘湾東部漁協では、価格が 前の年の約1.5倍になりました。

竹下さんは、消費低迷を心配しています。

▼全国初!「煮干し」について “語る・楽しむ・感じる”イベント

(天洋丸 竹下千代太 社長)
「長い目で見ると、煮干し加工の産業を残していかないと、将来、残っていかないのではないか。危機感を持ったときにはもう遅いので、今のうちにいろんな取り組みを始めないといけない」

こうしたことから 計画された “全国煮干しサミット”。

去年12月、地元漁協や雲仙市の職員などが実行委員会を立ち上げ、準備を進めてきました。

竹下さんは、実行委員長です。

(天洋丸 竹下千代太 社長)
「煮干しトークショーがあるので、ここの前くらいで挨拶」

サミットのテーマは、「煮干し」を“語る”、“楽しむ”、“感じる”の3つ。

煮干しのラーメンやグッズの販売、“雲仙煮干し大使”に任命された 歌手の鳥羽 一郎さんの歌謡ショー、煮干しの現状や未来について話し合うシンポジウムも行います。

煮干しをテーマにした大規模なイベントは、全国で初めてで、4月20日、21日に雲仙市で開催。

“煮干し尽くし”の2日間にするそうです。

(天洋丸 竹下千代太 社長)
「消費拡大に向けて、消費者にアピールするのもあるが、自分たちが煮干しの良さを“再認識”する機会でもある」

▼無形文化遺産 “和食”を支える「煮干し」次世代継承へ

実行委員会の熱い思いに、未来を担う若い世代も賛同しています。

(学生)
「薄くなっている」

「一番おいしかったのは、頭のあるカタクチイワシ」

長崎大学のサークル「魚料理研究会」は、サミットで3種類のダシを飲み比べるワークショップを開くため、当日の流れを確認していました。

(長崎大学魚料理研究会 祝 翔太会長)
「若い人にもどんどん飲んでもらいたいし、日本の文化ということもある。消したくない気持ちが結構あるので、若い世代にどんどん広めていきたい」

煮干しの魅力を発信し、食文化の継承へ。

漁業者の新たな挑戦です。

(天洋丸 竹下千代太 社長)
「横のつながりができれば、いろんな情報交換や抱えている課題、意見を出し合えば課題解決の糸口にもなるかもしれない。いろいろ可能性がどんどん広がるのではないか」