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【被爆80年】若い世代の発想で “新スタイルの平和発信” 被爆者のバトン受け継ぎ目指すこと《長崎》

2025年1月9日 6:45
【被爆80年】若い世代の発想で “新スタイルの平和発信” 被爆者のバトン受け継ぎ目指すこと《長崎》

◆被爆80年プロジェクト『Pass The BATON』


被爆、そして戦後80年となる今年。
今も世界では戦争が起き、核兵器が使用される脅威が高まっています。

NIBでは被爆者の体験や願いを未来へとつなぐため、被爆80年プロジェクト『Pass The BATON』をスタート。

被爆地ナガサキの報道機関として、被爆者や若者の取材などを通してこの1年、様々な番組や企画をお伝えしていきます。

◆『Pass The BATON』 テーマソングは小國雅香さん

この取り組みにあわせ、被爆80年の “オリジナル曲” も制作。

NIB newsevery.のテーマ曲でおなじみのジャズピアニスト 小國雅香さんに作曲をお願いしました。

「音楽には、社会や世界をより良くする力がある」と話す小國さん。

これまでも平和への思いを込めた作品を出されていて、今回の曲のレコーディングは、去年6月に行いました。

〔※曲は動画でお聴きください〕

この曲の制作にあたり「改めて、核兵器廃絶や戦争のない世界の実現に向け平和への祈りをつなぐことの大切さを込め、特別な思いでこの曲を書き下ろした」ということです。

◆1回目の企画「平和教育の取り組み」

被爆80年プロジェクト「Pass The BATON」。

1回目は、平和教育の取り組みについてです。

継承に向け平和教育の模索が続くなか、バトンを託された若い世代が主体的に取り組む活動も。

“新たな形” で平和を発信します。


◆小学校では 意見を交換しあう「対話型授業」

長崎市の女の都小学校。

5年生と6年生が取り組んでいたのは…。

(児童)
「ロシアとウクライナが戦争しているからといって、日本が戦争に巻き込まれることはないと思う」

(児童)
「核を使う途中で撃つのを失敗したときに、もしかしたら日本に当たる可能性はないとは言えない」

平和について、意見を交換しあう対話型授業です。

この日のテーマは『長崎を最後の被爆地にできるか?』。

「できる」や「難しい」など、4つの選択肢の中から自分の考えを選びます。

(児童)
「私は(長崎を最後の被爆地に)たぶんできると思う。

長崎と広島の被爆者団体がノーベル平和賞を受賞したから」

世界情勢にも触れながら自らの意見を伝え、仲間と平和の考えを深めました。


◆被爆体験を “自分事” として考えられる人材の育成が課題

対話型授業は、長崎市教育委員会が2018年度からスタート。

(長崎市教育委員会 德永 達樹 生徒指導係長)
「他者の意見を尊重できる子どもたちが育つことが、一番平和に向けての学習なのでは。先生方も豊かな学びに変えようと工夫をいろいろ重ねてやっているのが、私たちも伝わってくる」

これまでに24の小中学校が ”実践協力校” となり、取り組んできました。
(2024年12月現在)

女の都小学校で授業のあと、開かれたのが…。

(長崎市教委員会)
「平和教育再編部会を開会する」

授業内容の反省や、今後に生かすため話し合われる「平和教育再編部会」。被爆の継承に携わる委員らで構成されています。

(ピースボランティア)
「若者の平和活動が増えているので、小学生も、より身近に平和について考えているのではないか」

一方で、被爆体験を “自分事” として考えられる人材の育成が課題との意見も。

(平和推進協会)
「長崎を最後の被爆地にできるかという問いに対して、できると答えた子どもたちが誰もいなかった。すごくさみしい。繰り返さないためにはどうしたらいいか、感じて考えてもらえたらいい」

(長崎市被爆継承課)
「小学生の中で、戦争や平和がネガティブなイメージになっているように感じた。

もっと身近なところから、できることを考えていくような取り組みも大切」


◆平和教育は命の教育「長崎で何があったのか伝えていく」

おととし、実践協力校になった長崎市の茂木中学校。

被爆2世の小宮 伸二教諭が担当しました。

対話型授業はテーマ選びが難しいといい、教諭が核兵器廃絶への信念をもっておく必要があると話します。

(小宮 伸二教諭)
「例えば、“原子爆弾の投下は是か非か” というテーマを与えてしまうと、(是の)根拠のある理由を言ったときに、子どもたち(の気持ち)が揺れる。
それでも(教諭が)原子爆弾はダメというところに行きつく目標がしっかり見えていないと、そういうテーマの場合は間違いなくやらないほうがいい」

原爆投下後、被爆者の救護所が設けられた茂木地区。

遺体は近くの海で荼毘に付され、まちには原爆慰霊碑が建立されています。

茂木中学校ではこれまで、地元でも課題となっている “国が定める被爆地域” の外で原爆にあった「被爆体験者」についても学んでいます。

また 地区内などの被爆遺構巡りを行ったりと、積極的に平和学習に取り組んできました。

(小宮 伸二教諭)
「平和教育は、命の教育だと思っている。自分の命も他人の命も大事に大切にするかけがえのないもの。長崎で何があったのかということは、きちんと伝えていきたい」

平和の種は、芽吹いています。

茂木中で去年立ち上がった「MIRAI」というプロジェクト。

(生徒)
「平和を発信することには変わりないので、大規模に他県や全国的に発信できたらいい」

1年生から3年生までの18人のメンバーで活動しています。

“原爆の惨状” と “今” や “未来” を描いた2メートルを超える壁画や、オリジナルデザインの平和Tシャツの制作のほか、平和ソングもつくりました。

作詞作曲は全て生徒が手がけ、中学校のホームページで発信しています。

(濵口 晃実さん)
「大規模な戦争をしてきて、そこから学んで今の生活を少しでも、より平和な方向に頑張っていくという思いを込めている」

この日 MIRAIのメンバーは、核兵器廃絶を目指して活動している “高校生平和大使”らのもとへ。

(中学生)
「Tシャツを売って出た利益を、高校生平和大使のみなさんへ。平和のために役立ててほしくて持ってきた」

イベントなどで販売したTシャツの売上金、約5万円を目録として手渡しました。

(高校生平和大使 大原 悠佳さん)
「もっと関心を持ってくれている若い人たちと一緒に手を取り合い、小さな力を大きな力にしながら一緒に活動したい」

MIRAIのメンバーも署名活動に参加し、自らが『平和の担い手』となる決意を新たにしました。

(MIRAI 橋浦 乃ノ佳さん)
「きょうがあること、あしたがあることを大切にしてほしい。平和な活動はこれからもどんどん続けていきたい」

(MIRAI 濵口 晃実さん)
「同世代の小中学生や若者に知ってもらって、自分たちでもできることがあるんだと感じてもらい、そこからアクションを起こすことにつながれば」

被爆から今年で80年。

~ 過去を受け止め、平和な未来につなげる ~

子どもたちにも、その心が根付いています。

最終更新日:2025年1月9日 12:42