剣道の最高位 “範士八段” の72歳「剣道歴65年」尽きぬ探求心で若き剣士に技と心を伝授《長崎》
去年、剣道の最高位「範士八段」となった男性。
探求心を持ち続け、若き剣士に技と心を伝えています。
響きわたる竹刀の音、気力みなぎる掛け声。
諌早市の「亀舟館」の稽古です。
(剣道最高位「範士八段」 灰谷 達明さん)
「エーイッ、エーイッ、全部自分のすべての声を、自分の体の奥底からすべてを出してしまう」
小学生から高校生まで。約20人が所属する諫早市の「亀舟館」。
師範は剣道歴65年。
去年5月に剣道の最高の位=「範士八段」となった灰谷 達明さん72歳です。
剣道の有段者は全国で約200万人。
このうち「八段」は779人と合格率1%未満です。さらに「範士」の称号は、段位とは別に指導者としての技術や品格など、厳しい審査を経て与えられ、170人ほどにとどまります。
県内で「範士八段」は、灰谷さんが3人目です。
五島市福江町の出身。小学4年の時に剣道を始めました。
(剣道最高位「範士八段」 灰谷 達明さん)
「チャンバラの強いキャラクターがヒーローだったので、普通に子供らしく、そういう強いものに憧れて(始めた)」
中学生の時、めきめきと頭角を現し、五島高校時代には県大会優勝を果たします。
(剣道最高位「範士八段」 灰谷 達明さん)
「練習を1回休んだら、3日やらないと元に戻らないという先生の教えだった。今でもほとんど休んだことはない。剣道だけは、そうやって地道に継続してきた」
大学卒業後は、長崎日大高校の教諭となり「剣道部」顧問として指導。
県剣道連盟で長く理事を務め、後進の育成にも尽力。去年、会長に就任しました。
(剣道最高位「範士八段」 灰谷 達明さん)
「観見二様ありというの(張り紙)は私が書いた。上の『観』というのは、大きく観察して俯瞰してみなさい。下の『見』というのは、虫の高さで細かい所まで、小さくしっかり見て、その2つが相まって『みる』ということが形成されている」
歴史や故事を交えて、剣道の理念を子ども達に伝えています。
そんな師範を子どもたちは・・・。
(小学3年 田中 伊織くん)
「(灰谷師範は)怒る時もあるけど、優しい先生。大好き」
中学1年から道場に通う、長崎日大高校3年の本田 愛斗さん。
灰谷さんと稽古を続け、先月行われた全国高校選抜剣道大会で、県の優秀選手に選ばれました。
(長崎日大高3年 本田 愛斗さん)
「自分が打ちたくても打てない。見えない気迫や圧がすごくて、簡単には当たらない」
(剣道最高位「範士八段」 灰谷 達明さん)
「子ども達がどう伸びていくのか。それを見据えるというのが楽しみ」
達人の教えは、着実に子ども達に受け継がれています。
72歳の範士八段。今なお、剣の道を極めるべく突き進みます。
(剣道最高位「範士八段」 灰谷 達明さん)
「追究すれども、探求すれども、尽くせぬ。そういうものがあるので、自分はそれに向かっていく。あと7年ぐらい僕も努力をして、遠いところから打っていけるようにやりたい」