【特集】「子どもたちと一緒に音楽を楽しみたい」音楽教師一筋48年 独自の指導方法で人気の指導者 校歌に込めた思い 鳥取県
人口減少に伴い、各地で小中学校の統合や閉校が相次いでいます。そうした動きの中で新たに作られるものもあれば、消えるものもあるのが各学校の「校歌」です。そんな校歌に寄り添う指導者を取材しました。
鳥取県北栄町の大栄中学校。ここで音楽の指導を行っているのは、非常勤講師の小谷敏彦さん(71)です。小谷さんは音楽教師一筋48年。その指導方法は少し変わっていてー。
■一風変わった授業が生徒に好評
紙に歌声を吹きかけて唇の震えを確認する「紙鳴らし」に、息を吹きかけカセットテープを倒して腹式呼吸の練習をする「カセット倒し」。生徒たちに音楽を楽しんでほしいという思いから独自の授業研究を続けてきました。
生徒
「フレンドリー 」
「親しみやすい」
「勝手に音楽の力が身についているなって感じがします」
Q.ほかの先生との違いは?
「面白さ抜群にいいです」
一風変わった授業が「面白い」と生徒たちから大人気の小谷さん。実は歌の指導以外にもある一面が。
小谷敏彦さん
「依頼を受けて。こういう詞があるんだけど曲付けてもらえないかって」
2023年4月に誕生した鳥取県倉吉市の成徳小学校の新しい校歌に、小谷さんの名前が。長年の音楽経験から小谷さんに声がかかり、成徳小学校の新しい校歌の作曲を担当しました。人口減少により各地で学校の統合が相次ぎ、新しい校歌も生まれています。小谷さんは、ここ10年ほどで4つの校歌を作曲しました。
小谷敏彦さん
「『校歌作りました』で終わりじゃないので、その先がどう表現されていくか、子どもたちがどう思ってくれるのかが楽しみです。一番希望したいのは、この校歌いいなとか、好きだなとか思ってもらえたらうれしいなと思いますけど」
■小谷さんに新しく任された事とは?
そんな小谷さんに新しく任されたことがあります。倉吉市の北谷小学校。今年で創立150周年を迎える歴史の長い小学校ですが、ほかの小学校と統合することが決まっています。
この日行われたのは「校歌の練習」。北谷小学校では、なくなってしまう校歌を後世に残そうとCDに収録するプロジェクトを開始しました。少しでもいい声を残すため、歌の指導を任されたのが小谷さんです。
小谷敏彦さん
「肩たたきみたいな感じ。さんはい。ちょっと見て。1・2・3・4肩たたきするつもりで」
肩たたきで歌の練習を始めた小谷さん。最初は戸惑い気味の子どもたちですがー。
小谷敏彦さん
「はい。眉毛上げて止めます。はい。眉毛上げてはい隣見てー」
次々と出てくる小谷さんのユーモアを交えた指導で児童たちにも笑顔が。
小谷敏彦さん
「OKです」
小谷さんの狙い通り、楽しく歌う練習で歌声はどんどん良い響きに変化していきました。
児童
「めっちゃ楽しかったです」
「ずっと続いてきた校歌がCDに残されるので、教えられた通りに大きい声で息をたくさん吸って歌いたいです」
■迎えた収録当日
小谷敏彦さん
「今日はきっといい歌を聞かせてくれるんじゃないかと楽しみにしてます」
本番では倉吉東高校オーケストラ部の演奏をバックに校歌を歌います。いつもと違う環境に緊張する子どもたち。小谷さんは積極的に話しかけ子どもたちの緊張を解きほぐします。
そして、いよいよ収録本番。約150年歌い継がれてきた北谷小学校の校歌。保護者や地域住民も歴史ある歌に聞き入ります。
児童
「いい声で歌えました」
「たくさんの人たちがいて合奏してくれる人もいたので緊張しました」
OB
「小さい頃から歌ってきたし、誇りに思ってたので、こういう風にみんなで歌ってもらうとすごくうれしい。だから今日はジーンと来ましたね。(CDができたら)毎日聞きたいくらいです」
「(学校が)なくなってしまうこと自体は悲しい思いはあるんですけども、記念に残ることをしていただいて感謝しています」
学校や地域の歴史を残すために行われた今回のプロジェクト。携わった小谷さんはこれからも音楽と向き合い続けます。
小谷敏彦さん
「なにより子どもたちの笑顔をたくさん見れてよかったと思います。当面まだ現場にいますから目の前にあることを通して、一緒に音楽を楽しめたらいいかなと思っています」
子どもたちと音楽を楽しむことを第一に。元気いっぱいの歌声が入ったCDは、北谷小学校の歴史を未来へ伝え続けます。