【移住促進】“鈴木姓”「最多」と「発祥の地」両自治体がコラボ…まちの魅力発信するオンラインセミナー(浜松市)
「鈴木さん」の割合が日本一多い浜松市が、「鈴木さん」発祥の地とされる和歌山県の自治体とコラボして移住促進を狙ったオンラインセミナーを開催しました。そのウラには、2つのまちの深いつながりがありました。
この秋開かれた“一風変わった”オンラインセミナー。
(和歌山県の担当者)
「お互いに“鈴木姓”にゆかりが深いまちとしてプライドをかけてまちの自慢対決をしていただこうと思います」
その名も「天下分け目の鈴木姓合戦」。実は「鈴木姓」にゆかりがある浜松市と和歌山県海南市がコラボして開催したもので、それぞれまちの魅力や移住促進策をアピールしました。この「鈴木姓合戦」は、移住者を増やそうと和歌山県の担当者から持ち掛けられたといいます。
(浜松移住コーディネーター 宮嶋 千恵美さん)
「鈴木…そうか。鈴木か!浜松といえば鈴木だね!みたいな感じで、それは乗っかるしかないよね、ということで齋藤さんに相談して」
(浜松市 移住グループ長 齋藤 明宏さん)
「ぜひ、一緒に取り組んだら、面白いことができそうだなということで…即了解しましたね」
「鈴木さん」は全国に176万人いるといわれていますが、中でも浜松市は、人口約78万5000人のうち、実に6.4%にあたる5万人が「鈴木さん」なのです。浜松市に本社がある自動車メーカー「スズキ」も、約1万7000人のうち5%ほどの社員が「鈴木さん」。さらに、「浜松オート」ではこんなユニークなレースも…。
(浜松オート レース実況)
「2番の鈴木か、外から4番の鈴木か。ここは外、4番の鈴木が二番手につけます…」
出場した7人全員が「鈴木さん」という、その名も「鈴木選抜」です。
(浜松オート レース実況)
「鈴木セブンによる競演は残り一周!7番鈴木が先頭、4番鈴木が二番手、三番手は2番の鈴木…」「ここは地元勢上位独占トップオブ鈴木!」
“実況泣かせ”の鈴木選抜。浜松に鈴木さんが多いことから、「話題づくり」のために開催されているそうです。
セミナーに参加した3人は「鈴木さん」…ではありませんが、「鈴木さん」の多さを肌で感じるようです。
(浜松移住コーディネーター 岩倉 万友美さん)
「(イベントで)学芸員が4人いて講師をやってくれたんですが、4人中3人が鈴木さんだったんですよ」『すごい』「名前で呼び合うのも、そこで和むというか『やっぱり鈴木さんなんだね』と場が和むので」
ちなみに市役所の職員も、約5400人のうち7%にあたる388人が「鈴木さん」です。
(浜松市 移住グループ長 齋藤 明宏さん)
「名前で呼んでいる人と苗字で呼んでいる人がいて、『なんでこの人名前で呼ばれているんだろう』というのがあって、『あっ、鈴木姓なんだ』ということに気づいて驚きましたね」
その「鈴木姓発祥の地」といわれているのが、浜松市から直線距離で約230キロ離れた和歌山県海南市。豊かな自然に囲まれ人口は約4万7000人。平安時代に、熊野の豪族・鈴木氏の一族が移り住んだ「鈴木屋敷」があり、「鈴木姓発祥の地」といわれています。その海南市が打ち出しているユニークな移住促進策が…。
(海南市都市整備課 岩田 巡矢さん)
「海南市では、“鈴木さん”が移住した場合に、世帯に対して100万円を支給しています」「特定の名字を対象にした移住支援金制度は、全国的にもめずらしいそうです」
これまでも海南市では鈴木さんに関するイベントを行ってきましたが、人口減少が進むまちを盛り上げようと、11月17日、実に11年ぶりとなる「鈴木サミット」を開催し、全国から「鈴木さん」が集結しました。
ところで、和歌山にルーツがある「鈴木さん」が、なぜ浜松市に日本一多いのでしょうか。そのヒントは神社にありました。
(西尾 拓哉 記者)
「こちら浜松市内なんですが、和歌山県の地名である『熊野』と名のついた神社がありますね」
こちらは浜松市中央区にある「高塚熊野神社」。なぜ浜松の神社に和歌山の地名がついているのかたずねると…。
(高塚熊野神社 戸塚 昌宏 宮司)
「950年前に、後三条天皇の御代に、紀州和歌山の熊野本宮大社から熊野の神様を、こちらにお迎えして、おまつりしたのがはじめと言われています」
鈴木氏の一族には、平安時代、源頼朝に追われて秋田に逃れた「鈴木重家」ら武将と、「熊野信仰」を広める伝道者がいて、この熊野信仰を広めていた「鈴木一族」が、浜名湖周辺に多く出入りしていたといいます。
(高塚熊野神社 戸塚 昌宏 宮司)
「この辺は入り江で、船が着いたり出たりしていたので、和歌山から船で着いたという行き来がたくさんあったのではないかという風にいわれています」
その「鈴木さん」たちが、浜松に移り住んだのではないかといわれているそうです。この神社には「鈴木さん」ゆかりの“木”も植えられています。
(高塚熊野神社 戸塚 昌宏 宮司)
「神武天皇が、紀伊半島の先から橿原の宮に山中を導くのに、その土地の豪族たちが“なぎの木の枝に鈴をつけて、その鈴を鳴らしながら”山中を導いていったということから、『鈴木』という言葉ができたといわれています」
また、和歌山から多くの鈴木さんが移り住んだといわれているのが、浜松市中央区の篠原地区。なんと、住民の3人に1人が「鈴木さん」です。篠原地区に住む「鈴木さん」らが2010年に設立したのが、その名も「浜松鈴木さん楽会」。歴史ある「鈴木姓」を誇りに思うことを“心得”に一時は80人ほどの会員がいたということです。
浜松市と和歌山県海南市が移住者を増やそうと開いたオンラインセミナー。浜松市の担当者はこれをきっかけに、「鈴木さんも、鈴木さん以外の人も浜松に興味を持ってほしい」と意気込みます。
(浜松市 移住グループ長 齋藤 明宏さん)
「今回は鈴木セミナーをやりましたが、そのほかの地域とも共通点を探して、いろいろなコラボセミナーをやって、浜松の移住をPRしていきたいと思います」
(浜松移住コーディネーター 宮嶋 千恵美さん)
「移住の方向けの重点的なセミナーをやってきたけれど」「移住という手もあるのか、と移住を考えていない方が思ってもらえるような企画も考えていきたいと思いました」
「鈴木さん」をきっかけに、人口減少が進む2つのまちがコラボした移住促進策。今後、このような新たな切り口での取り組みが注目されそうです。