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【密着】買い物難民の救世主!地域の仲間の生活をより豊かにしたい…地元で人気の移動スーパーに迫る【every.しずおか特集】

2023年11月14日 14:17
【密着】買い物難民の救世主!地域の仲間の生活をより豊かにしたい…地元で人気の移動スーパーに迫る【every.しずおか特集】

伊東市で人気の移動スーパー「ゆたか号」
市内には坂が多く、最寄りのスーパーまで車で30分以上かかる場所もあり、買い物難民にとって救世主。
(お客さん)
「楽しみですよ、きょうは何を買えるのかなと」
しかし、人気の理由は商品を届けてくれるからだけではないようで…。伊東市のちょっと個性的な移動スーパーに密着。人々が待ちわびる、大人気の秘密とは?

地元で評判の移動スーパー

「ゆたか号」を運営するのは、土屋芳崇さん40歳。2022年10月、たった一人で、この移動スーパーを始めました。伊東市には車がなければ不便な地域も多く、なかなか買い物に行けない人たちに食料品を届けています。野菜や卵、お菓子など350種類もの商品が所狭しと並んでいます。買い物はまるで宝探しのよう。さらに、お客さんをワクワクさせるお楽しみがあります。

(土屋さん)
「これは豚肉とホウレン草、モヤシと卵で、ごま油と塩コショウとしょう油のシンプルな味付け」

実は、多くのお客さんのお目当ては、ハンバーグからどんぶりまで、日替わりで登場する本格的なお惣菜。値段も150円から350円と、かなり良心的です。

この日は「ゆたか号」の一番のファンだというお客さんのもとへ。
渡邉澄子さん82歳。スーパーから車でも15分かかる場所に一人で暮らしています。

(渡邉澄子さん)
「楽しみにしています、いつも。おいしいんですもの、焼肉丼がおいしい」

この日は待ちに待ったお惣菜を5個も購入。しかし、お楽しみはそれだけではありません。いつも土屋さんが玄関まで手をつないで送ってくれるのです。お惣菜だけでなく、土屋さんとのふれあいも、渡辺さんにとって大きな楽しみで、元気の源となっています。

お昼ご飯は買ったばかりの海鮮チラシ丼。

(渡邉澄子さん)
「2キロも太ったんです、土屋さんが来るようになってから。とっても人柄が良い方なんです、元気をいただけるような気がして」

土屋さんと「ゆたか号」は美味しいお惣菜と一緒に、笑顔も届けているようです。

土屋さんの一日が始まるのは、午前3時半

土屋さんの仕事は、ただ商品を運んで売るだけではありません。

午前3時半、土屋さんの1日が始まります。辺りもまだ暗い中、車で30分かけ向かったのは、伊東市の漁港。漁から戻ってくる船のもとへ行き、とれたての魚を市場に出される前に売ってもらっているのです。

(土屋さん)
「こうやって浜売りだと好きな魚を好きなだけ、自分の好きなように仕上げて持って帰れる」

続いて向かったのは、青果市場。こちらでも、自分の目で見て野菜を仕入れていきます。商品を運んで売るだけでなく、仕入れるところから全て自分でやっているのです。
しかし、それだけではありません。市場から戻った土屋さんが、休む間もなく始めたのが…なんとあの人気のお惣菜も、全て一人で手作りしていたのです。大手ファミリーレストランなどで店長を務めた経験があり、調理師の免許も持つ土屋さん。その日に仕入れたものを使って、手際よく調理を進めていきます。

(土屋さん)
「買い物に行けないお客さんが何に困っているかと言ったら、買い物に行けないだけじゃなくて、立ってることが辛いとか、台所に立つのがしんどいっていう声を聞いて。だったら自分で作ろうって思いました」

全ての作業を、たった一人で行っているため、常に時間との戦い。いつも厨房はてんてこまいです。休む間もなく調理を続けること5時間。ポテトサラダやアジの南蛮漬け、桜エビの焼きそばなど、なんと10種類150人前も一人で作り上げました。早朝の港で仕入れたワラサは、光り輝く海鮮チラシ丼に。そして午前10時半、商品を車に積み込み、お客さんの元へ向かいます。

きっかけは、幼いころの自身の経験

土屋さんが「ゆたか号」を始めたきっかけ、それは小学校6年生の頃に母親を病気で亡くし、父親も仕事で単身赴任となり、弟と2人だけで過ごした経験があったからだと言います。

(土屋さん)
「おなかは当然いっぱいになるんですけど、心はね、満たされなかったっていうのは、自分自身の体験としてあって。今の高齢者も、お金と時間はあるけども、自分の好きなものを食べられないとか、少しずつ作るのは大変だとかはあって、皆さんの生活と心を両方とも豊かにできたらいいなという思いで、この『ゆたか号』を始めましたね」

生活も心も豊かに、そんな思いから名前も「ゆたか号」に。

開業から半年、いまでは「ゆたか号」と土屋さんを待つお客さんがたくさんいます。この日は白い杖をついた女性がやってきました。

(お客さん)
「目が悪いので、説明してもらいながら買わせてもらっている。ありがたいんですよ、本当に助かっています。歩けなくなってから、下までスーパーまでも歩けないですから」

静かな町の何気ない日常が、笑顔の源

こちらにも「ゆたか号」と土屋さんが来るのを心待ちにしている女性が…なんと、いつも到着予定時刻の15分前から待っているといいます。

(土屋さん)「卵ね、あるある」 
(お客さん)「高くなったね、卵もね」

買い物時間はわずか10分ほど。しかし、この女性にとっては、1日の中でこの時間がとても楽しみで大切なイベントとなっているのです。

ほのぼのとしたふれあいばかりではありません。この日はまさかの大事件が発生⁉ いつも必ず来るというお客さんが、予定の時間になっても現れないのです。

(土屋さん)
「こういうのが一番心配になる…家にいない、玄関開いてるの…」

移動販売のことも忘れ、自宅をまで行き、必死で探し回ります。すると…

(土屋さん)
「寝てる… (笑)」「安否確認も仕事の一つなので」

(土屋さん)
「あの人に喜んでもらうためには、どうしたらいいんだろうって考えてるのも楽しいし、雑談するのも楽しいし、私以上に仕事を楽しんでやってる人って、この世にいないと思うぐらいの気持ちでやっています」

きょうも土屋さんの移動スーパー「ゆたか号」を多くの人たちが待ちわびています。

(お客さん)
「食べ物あるけど、顔を見たら買いたくなる。人柄、感じがいいでしょ?(笑)」

(静岡第一テレビ every.しずおか 2023年5月2日放送)

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